ザ・ベンチャー③
決してネタが無いわけではありませんが(汗)、調子に乗って「ザ・ベンチャー」シリーズの③を書きました。
在宅ワークが続く中、パソコン台にCCIの媒体資料があればなと、ふと思い出したので「メディアレップ」の話をしたいと思います…
前回の「ザ・ベンチャー②」で広告代理店の「役割」の変化に触れましたが、同じくこの業界の中で「役割」を変化させてきた企業体として「メディアレップ」も同じだと考えています。
私独自の視点ではありますが、メディアレップの「役割」を当時から振り返ってみました。
メディアレップがネット業界を創った(とも言える)
私が入社した2002年当時、ネット広告業界において最も謎な会社が、サイバー・コミュニケーションズ(CCI)とデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)でした。社名のインパクトしかり、何よりも「メディアレップ」と言う立ち位置がなかなか理解出来なかったのです。少し古いかもしれませんが、当時(今もありますが)のメディアレップの役割はこちら。
メディア・レップ media representative
広告会社の一形態で、メディアのタイムやスペースの販売を専門に行う広告会社。日本では、大手の広告会社がメディア・レップの役割も果たして来た。→メディア・バイイング会社
これは大袈裟かもしれませんが、
当時メディアレップ(特にCCI)がなかったら、ネット広告代理店のオプトは無かったかもしれない。と真面目に思っています。
それは、メディアレップのサポートがあったからオプトが広告主へ広告枠が適切に販売出来たからと言うのも勿論ですが、もっと根本的な部分として、ネット広告代理店のキャッシュフローの改善にあります。
今では想像できませんが、当時のオプトは、ベンチャーの弱小代理店であり特に大手メディアとは直接取引(代理店契約の締結)をさせてもらえませんでした。「与信」が通らなかった事が主な理由です。仮に取引が出来ても、前受金を要求されるか支払いサイトが異様に短いかのどちらかだったと記憶しています。
それを解決してくれたのが、「メディアレップ」だったわけです。
それにより、ベンチャー企業のオプト(当時は未上場)は、本来は取引できず、取り扱えないメディアを取り扱え、キャッシュフローを気にせずビジネスが出来た(気にしていたと思うけど…)。これは、経営としては非常に大きな意味があった訳です。
一方でメディアレップであるCCIは親会社であった電通とソフトバンク(今は100%カルタホールディングス)と言う圧倒的な「資本力」を武器にメディアの貸し倒れリスクを負ってでも、Yahoo!JAPANをはじめとした大手メディアの「仕入力」を高める事で成長しました。
少し極端且つ実際は異なりますが、メディアから見るとメディアレップはファクタリングのような金融サービスの位置づけだったとも言えるのではないかと思います。
そして、このビジネススキームがベースになり、オプトや他のベンチャーのネット広告代理店は急成長し、ネット広告業界自体が大きく拡大していったわけです。これは肌感覚ですが、当時は電通も博報堂も本気でネット広告を販売していなかったので、ネット広告代理店の顧客への販売貢献と言うか、貪欲で旺盛な営業力(笑)は凄かったと感じています。
だからこそ、それを可能にした「メディアレップの役割」は初期のネット広告業界の発展にとって非常に大きな意味があったと思っています。
ネット広告業界の人材輩出企業へ
ネット広告代理店各社が上場を果たし、短期的なキャッシュの不安も薄れ与信も改善されてきた中で、もう一つの「メディアレップの役割」の変化を感じたのは、一言で言えば「人材」の輩出です。これは2010年頃のオプト、更にはCCIの話が中心になってしまいますが、恐らく業界全体的にも似たような状況だったと想像しています。
当時は特にネット広告市場は急成長(≒ニーズ増加)している反面、専門人材が不足している状態でした。今(2018年時点)でも約2万人しかいないと言われているデジタルマーケティング人材ですが、当時はもっと少なかった訳です。
そんな中で、ネット広告・デジタルマーケティング人材を採用・育成し、人材派遣に近いモデルで電通、博報堂と言った親会社は勿論、オプトなど関係する広告会社やメディア企業へ常駐(出向)と言う形で、どんどん人材を輩出していた認識があります。
その結果、メディアのデジタル化、アドテク活用の促進やネット広告代理店で言えば、「ザ・ベンチャー②」でも話した「運用型広告」の推進の原動力になったと思います。実際、当時のオプトには10名近くのCCIの方に常駐頂き、本当にお世話になりました。
その時に改めて感心したのは、メディア知識や営業力は勿論ですが、広告枠の入稿業務のクオリティの高さでした。歴史的にも、Yahoo!JAPANの取り扱いを独占的に行い、入稿オペレーション業務を任されていただけあって、そのノウハウと安定感の高さ、特に広告主・クリエイティブの審査体制においては非常に助けられた記憶が多くあります。(時折、色々ぶつかりましたが…)。
と思って、CCIのサイト見るとやはり、審査体制の強さを感じます。
審査体制について
当社グループは、広告主および広告内容について、独自の配信基準・掲載基準を定めています。広告の取り扱いに当っては、当該広告主からの広告の取り扱いの際に、当該広告主が、その配信基準または掲載基準に反するような広告を行う者ではないことを確認し、さらに、広告内容自体についても配信・掲載前に、定めた基準に基づく審査を厳格に行っています。
また、媒体社についても同様の内容の配信、掲載に関する基準を定め、購入に当っては、当該媒体が同基準に抵触するか否かを審査のうえ、購入することとしています。
ネット広告取引の健全化の役割
最後に、最近の動向から感じる「役割」はネット広告業界の健全化に向けたサポートです。CCI、DACともに形は違いますが親会社に吸収される形で上場廃止となり、電通、博報堂グループ色が更に強まっています。だからこそ、それと同時にネット広告のアドベリフィケーションの問題をはじめ個人情報やデータの取り扱いなど、所謂業界全体の「健全化」に力を入れている印象を受けています。
この問題は業界だけで無く広告主も含め一体となって、一枚岩で取り組まないと解決しない問題だと私も思っており、以前「ネット広告費がテレビ広告費を上回って感じた事」でも触れた「FAT(Fairness:公平性、Accountability:説明責任、Transparency:透明性)」の考え方をより実行フェーズにしていく必要があります。
温故知新
特に出身者でもないのに、メディアレップを妙に持ち上げてしまいましたが…(お金は貰っていません)。今思うとネット広告業界のライフルサイクルに合わせて「役割」を上手く変えてきたんだと捉えています。導入期はファイナンス面で、成長期は人材面で、成熟期はサービス&情報(健全性)として業界を支え発展に貢献してきた。こうやって変化に対応出来る事は強みであり、これからのハートラスの成長戦略にも学ぶ事が非常に多いと気づかされました。過去の経験を改めて、構造的・体系的に捉える事で学ぶことはまだまだあると感じる今日この頃です。