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海洋IoTに1年間取り組んで感じたこと

初めまして、株式会社MizLinx エンジニアの宮ノ原です。
今回の記事では、MizLinxが1年間海洋IoTの分野に取り組んできた中で見えてきた、海洋IoTの難しさを大まかにお伝えしたいと思います。

IoTと言えば、近年ではスマート家電・スマートホームやスマートロックといったホーム・オフィス向けの需要の伸びが凄まじいですね。
一方で、スマート農業やプラント制御など、産業の現場への応用も進んでいる印象があります。

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(出典: 総務省|令和3年版 情報通信白書)


さて、これらの主流なIoT分野と、海洋のIoT分野の違いはなんでしょうか?

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答えは「電源」と「通信」です。

上で紹介したIoTの分野はいずれも地上にデバイスを設置するタイプですから、外部からの十分な電源供給を受けることができます。また、電源が電池である場合でも、電池交換による長期運用が可能です。

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さらに、現在では山間部を除いてほとんどキャリアの通信網が整備されていますし、デバイスによってはWiFiの利用も可能ですから、通信環境についてもさほど気にする必要が無いでしょう。

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一方で、海洋IoTが対象とする現場は基本的に沿岸部~沖合の海上です。当然コンセントはありませんから外部電源は利用できませんし、電池を利用しようにも、海上での交換作業は大変ですから、交換作業が前提の1次電池は使いづらいのが実情です。

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すると当然、IoTデバイスに独立かつ長期的に持続する電源を搭載する必要が出てきます。
候補として最初に上がるのは、太陽光発電と鉛蓄電池などの2次電池を併用した電源系です。

しかし、太陽光発電は発電量が天候と季節に大きく左右されてしまいます。
よって、最低限の実用性を確保するために、発電条件が良くない場合でもシステムが停止しないこと、すなわち省電力性と電池の容量設計が重要になります。
(海洋IoTの分野にいると、外部電源に頼ることのできるホーム・オフィス向けIoTや産業向けIoTを羨ましく思う瞬間がありますね..笑)

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先に述べた通り、海洋IoTシステムは省電力性が重要なのですが、IoTの大前提である通信機能は相当な電力を消費してしまう、という大きな悩みの種が存在します。
地上に近い沿岸部ではLTE通信が利用できますが、省電力なLTE-M方式であっても2W程度(ラズパイと同程度)は消費しますから、なるべく効率的な通信方法を実装する必要があります。
さらに、LTEの電波強度が十分でない場合、LTE通信にかかる消費電力も増大し、貴重な電力を大きく消費してしまいます。


地上から離れた沖合に至っては、当然LTE通信は利用できませんから、衛星通信設備を搭載する必要があります。しかしこれらの消費電力はLTE通信設備と比べて大きく、沿岸部よりもさらに細かい工夫が必要になります。

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MizLinxでは以上の難点を抱える海洋IoT分野を突き進むために、今年中のデバイスの大幅なアップデートを計画しています。

現在は、デバイスの省電力性をより向上させるため、SONY社のSpresenseについて検討・テストを重ねています。

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(出典: developer.sony.com)

SpresenseはArduinoを大きく上回る処理能力を持ちつつも、ラズパイよりも圧倒的に省電力という点がかなり魅力的なデバイスです。
またMizLinxでは水中カメラシステムの開発も行っていますから、オーディオやカメラなどマルチメディア系の入出力も備えているのは嬉しいポイントです。

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(出典: )

さらに、Spresense用のソフトウェア開発に用いるSpresense SDKの公式サンプルコードが充実しているのも、開発の高速化に役立っています。
HTTP/HTTPS通信の実装やAWS IoT用MQTTクライアントの実装など、すでに用意されているサンプルをベースに開発を進められるのは、少人数の開発チームにとって大きな利点ですね。

さて、今回はこの辺りで筆を置きたいと思います。
初めてのnote執筆で読みづらい箇所も多々あったかと思いますが、今回の記事が皆様のお役に立てば幸いです。


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