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『湊横濱荒狗挽歌~新粧、三人吉三。』KAAT神奈川芸術劇場プロデュース

2021年9月11日(土)12時半開演
KAAT 大スタジオ
¥6,800

三人吉三と言えば、有名な歌舞伎の演目・・・てことくらいしか知らない浅学なアタシだけど、とにかく脚本の野木萌葱とキャストの村岡希美、両女史を目当てにチケットを獲った。木戸銭の安さに驚きつつ。

悪事を重ねて生きる三人のアウトローを描いた世話物の名作、河竹黙阿弥・作の『三人吉三巴白浪』。本作ではその主人公の和尚吉三、お坊吉三、お嬢吉三が現代の湊町に舞台を移して暴れまわります。導かれるように出会い、次第に運命に翻弄されてゆく登場人物たちの痛快で、ちょっと哀しい物語。(公演チラシより)

舞台は鯨楼(くじらろう)という古くて寂れたホテル。レトロで素敵。下手に出入り口、小さなカフェ、上手にラウンジ。真ん中に階段があり、二階には部屋が二つ。
開演の数分ほど前に席に着くとすでに役者さんが板についていて、カフェのテーブルには黒服の老紳士とメイド服の女性が、階段にはスカジャンのいかつい男が座っていた。客入れSEの代わり?に、すでに芝居は始まっている様子。しまった。ロビーでぼんやりしてないで、すぐ客席内に入っておくべきだった。

時間になると客電が落ち、そのまま本編がはじまった。
スカジャンが何やらワーワー騒いで、猟銃を持ち出してくる。メイドがそれを取り上げ、サクッと二、三発ぶっ放して弾着が壁で爆ける。うお、かっちぇー! という間にスカジャンが銃を奪い返してメイドを撃ってしまう。
のっけから人死にだ〜と思ったが、黒服が声をかけるとメイドはパッと飛び起き「いらっしゃいませ!」。どうやら彼女は機械人形か何からしい。

導入はそんな感じだけど、そのあとはさっそくアウトローのオッサンたちが集結。ヤクザの組長ふたりに刑事、その三人が横濱で幅を利かせているのだ。反社会勢力と警察がつるんでるってのはまあ、定番中の定番よね。パラ定では『ブロウクン・コンソート』がそういう話だったな〜〜。
そのオッサン三人が濃ゆいんだ。濃ゆいオッサン三人とそれぞれの子ども、それぞれの舎弟。その中をひらひらと行き来する女。彼らを傍観する「ヒトガタ」のメイドと人形師である鯨楼の支配人。
15年前に消えた5億円の行方を追って、すったもんだの末に何人かが鯨楼の床に転がり、子どもらは親たちの柵(しがらみ)から解き放たれる。

↑ザックリ過ぎるが、まあこういう話。和製ノアールとかピカレスクとかいうジャンル?はそもそも特に好んで見たり読んだりはしないんだけど、面白ければなんでもOK。今回は野木さん脚本だから観たんだけど、やはり当たりであった。よかった〜。
最初に書いたけど、元ネタの歌舞伎も未見で予習もしなかったアタシ。筋も知らないまま臨んだんだけど、どうやらストーリーはまったく別物らしい。原作が好きでそれを期待した向きにはどうやら不評だったみたいなので、今回は予習しなくて正解だったみたい。莫迦は強いw
三人吉三の「三人」ってのは若人三人のことで、この舞台も彼らが一応メインキャラだったみたいだけど、観終わった感覚としては完全にオヤジ側メインの物語だった。なんせ濃ゆい! オッサンたちの存在が! 野木さんのコッテリしたオッサンを愛でるオタクゴコロ、存分に味わえた。
演出のシライ氏はお初でしたが(役者あがりとあって調べてみたけど舞台は未見。ドラマのチョイ役で見ているかもだけど記憶にはない)野木さんっぽさのちゃんとある作品になってたとおもう。

チラシや買ったパンフレットをチェックしたけど当日パンフやキャスト表はなかったので、公演サイトやニュースサイトを見ながら自分で作ってみた。
あらゆる舞台制作の方にお願いしたいんだけど、当日配布のキャスト表は! 絶対に! 作ってください! パンフレット買わない人でも「あの役の人が気になる」って思ってくれたら、そのキャストの次のお客さんになってくれるかもしれないじゃないですか! ネットで調べようとしても、役名とかフンワリしか覚えてないと分からなかったりするし。

柄沢純(からさわじゅん)・・・刑事(和尚吉三)/玉城裕規
柄沢正次(からさわまさつぐ)・・・悪徳刑事・純の父/渡辺哲
新井淳史(あらいあつし)・・・正次の部下/筑波竜一

弁才瞳(べんざいひとみ)・・・薬売買の元締(お嬢吉三)/岡本玲
弁才三郎(べんざいさぶろう)・・・大組織の組長・瞳の父/山本亨
奈良郷統介(ならごうとうすけ)・・・三郎の舎弟/若杉宏二

矢部野晶(やべのあきら)・・・薬の売人(お坊吉三)/森優作
矢部野光男(やべのみつお)・・・弱小組織の組長/ラサール石井
竹野克哉(たけのかつや)・・・光男の舎弟/伊藤公一

行山由香子(いくやまゆかこ)・・・晶の母/村岡希美

人形師(にんぎょうし)・・・鯨楼の支配人/大久保鷹
人形(ひとがた)・・・鯨楼のメイド/那須凜

今回、お目当ての村岡さんは最高。オッサン三人を手玉に取る、峰不二子というかファムファタルというか。美しくしたたかで艶っぽくて「イイ女」!
そして村岡さん以外はラサールさん、山本さんしか存じ上げなかったんだけど、どの方も大変に佳きでした。オッサンの中では山本亨さんがチャーミングでかわいかったな・・・。
そして知らないとか言っておきながら、玉城くんは刀剣乱舞で観てたわー、小烏丸の子かあ!!確かに、ヌルッとして妖しい感じだと思ったわーー(言い方) おかたつ目当てで刀ステは生2回とライビュも観たんだよなあ。現代劇で見たの初めてなので気づかなくても許してww

フルーツポンチのシーンはサービスかな。純くんはイチゴが好きw 晶はイラついてがっつくし、瞳はやれやれと呆れ顔。かわいかった。

ラストで若人たちが鯨楼から出ていくのは、先行きの不安も拭えないけど、爽快感もあって好い。既視感があるなとおもったけどあれかな。『太陽2608』のラストシーン。これ観た時は『明日に向かって撃て』のラストシーンぽいとおもったんだけど、そこまで悲壮じゃないから前者の方で。
うむ。こういう開放に向かって駆け抜けるラストシーンっていうのはひとつのパターンなのかな。けっこう好きかも。

あとちょっとですが、配信もありますのでどうぞ〜
19日まで。


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