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『我ら宇宙の塵』 EPOCH MAN

2023年8月4日(金)
19時開演
@新宿シアタートップス
¥5,500

ふわっとゆるく追いかけている小沢道成くん。
役者さんとして良いなってとこが大前提なんだけど、最近は「EPOCH MAN」てプロジェクトを立ち上げて、お芝居をまるまるご自分で作っててかなりハイパーなお方なのだ。
脚本、演出、出演、美術もやってるって凄すぎる。前作は岸田國士賞にノミネートされたんだよね。

って、そこからの新作公演。もちろん期待してたけど、基本みっちーのやりたいことをやってくれればいいなというスタンスでいたアタシですが、まあまあまあ。やはりというか、とても素敵な作品だった!

少年は父の行方を探しに家を出た。
その少年を探しに、母も家を出た。
長い長い旅の途中、
出会った街の人に聞いてみた。
どこに行けばいいのか、と。

───遺された者達が辿る、
宇宙と、この地球の物語。

チラシより

舞台の壁を全面LEDディスプレイにするという、小劇場では未だかつてないテクノロジー!
けど主人公の少年はパペット(人形)という超アナログ!
といった鳴物入りの作品だったけど、お話自体はスタンダードで、良い意味でありふれたものだった。少年と母親と、街の人、人間のココロを描いた物語。

事故で父を亡くした星太郎に「お父さんは星になった」と母は言った。それから彼は空を見上げてばかりいてほとんど喋らなくなってしまう。息子の傷心をおもいつつ「普通であってほしい」と願う母。
ある日星太郎が姿を消し、母は彼を探しに出かける。事故現場、病院、火葬場と回るうちに、看護師の早乙女と火葬場職員の鷲見が捜索に加わり、まるで昔話の桃太郎の様相を呈する。
必死な母、謎にテンパる早乙女、どこかとぼけた鷲見の珍道中。みな大切な存在を喪った痛みを抱えていて切ない話なのに、時々差し込まれる笑いが気持ちを和らげる。

最後に星太郎がよく行っていたというプラネタリウムへ。受付には鬼ヶ島の鬼みたいなおばあちゃん。鬼、いえ平屋さんの「中にいるよ」の言葉に一同ホッとする。
星太郎くんとみんなでプラネタリウムを見るラストシーンがとても素敵。LEDに映される星々に息を呑む。満天の星たちを繋げて、めいめい好きな星座を描いてみたり。
鷲見くんの一言に星太郎くんが突然大きく反応する。全員でパペットを操るシーンは疾走感があってすごくワクワクした。

バリバリの宇宙好きだったお父さん。その薫陶を受けた宇宙好きな少年、星太郎。お父さんは星になったと聞いて何を思ったのだろう。彼はしゃべらくなったけど、頭の中でたくさん、たくさん考えていたのだ。そして気づきを得て腑に落ちたのだろう。「お母さんが“お父さんは星になった”と言ったのも間違いじゃないと思う」と。

小沢くんは星太郎自身だったり、パペットが星太郎で彼を足に乗せて操ったり、お父さんになって星太郎と向かい合ったり。シームレスに役が変わっていくのに気づいた時に、演劇の面白みを感じる。
パペットの星太郎くんの造形が絶妙で、角度や動きで表情が違って見える。興味深い。公演が終わった後、どこかに仕舞われるのかな、小沢くんのお家に行くとしたら夜中とか不意に目が合ったらドッキリしちゃいそう。

池谷のぶえさんの素晴らしさは言わずもがな。息子を心配する母として描かれていたけれど、宇宙好きな夫が大好きだったんだなあと感じられてあたたかい気持ちになった。
異議田さん、渡邊さん、ぎたろーさん演じる、抱えている悲しみが笑いに変換されていく様が愛おしいキャラクターたち。人生というか、人間だなって思う。全員がかわいくて愛おしい。
こうやって思い出しながら文章を考えるだけで、しみじみと良かったなあとおもう。


宇佐美 陽子(うさみ ようこ)・・・・・・池谷のぶえ
鷲見 昇彦(すみ のりひこ)・・・・・・・渡邊りょう
早乙女 真珠(さおとめ まみ)・・・・・・異儀田夏葉
平屋 織江(ひらや おりえ)・・・・・・・ぎたろー
星太郎 (しょうたろう)・・・・・・・・小沢通成


『我ら宇宙の塵』公式サイト

ステージナタリー記事(舞台写真多数)

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