『無駄な抵抗』 前川知大×世田谷パブリックシアター
2023年11月23日(木・祝)18時開演
¥8,500(S席)
イキウメ公演のような気がしてたけど、世田パブ主催公演だった。でもまあほとんどイキウメだったし、観に来ているひともイキウメだと思っている人が多かったみたい。(某所で感想検索したら「イキウメを観た」と書いている人多数)作演出が前川さんだし、イキウメン全員出演だしね。
だけど観終わったら、いつものイキウメとは少し違ってSFじゃなかった。S(少し)F(不思議)でもなく、「結局アレって何だったのかな」っていうのもあまり無くて、起きた物事をそのまま描いてストレートに終了した、という感じ。めずらしい。
無事に大千穐楽まで完走されたということで、ネタバレ気にせず行きます☆
唯一不思議と言えるのは、この駅に電車が停まらなくなったことかな。(2ヶ月前に観た『燕のいる駅』も同じ設定だったのでオヤと思ったが、内容はまったく関係なかった)
「何もしないをしている」と言う大道芸人も不思議か。
ギリシャ悲劇『オイディプス王』を下敷きにしたお話だということだけど、換骨奪胎というか、あまり原型を留めずまったく別のストーリーになっていた。駅前広場がコロッセオを彷彿とする美術だったのが残り香のよう。
根幹は運命と自由意志。父殺し、近親相姦、捨て子など。
芽衣は中学時代に「あなたは人を殺す」と桜に言われ、その言葉に縛り付けられて生きてきた。当の桜はまったく覚えていなかったのに。その言葉が予言とならぬように。
人を殺さぬよう、当時不仲であった父を殺さぬよう。叔父から受けた性的虐待の末妊娠しても、堕胎は殺人だという理由で子を産んだ。医者になるにも、死に関わることの少ない歯科医を選んだ・・・。
確かに予言より呪いと言った方がいいのではと思える。しかしそれらの選択したのは芽衣自身なのよな・・・。
電車が止まらなくなった町の人は、不便を感じても何のアクションも起こさない。その中で、カフェの店長は署名活動をしたり、果てはポイントをいじって事故を起こしてしまう。施設で育った女は線路に置き石をしたり。
抵抗は無駄なのか。
無駄でも抵抗しなければならないこともある。
何もしなかったら、何もなかったことになってしまうのではないか。
今の世の中、無駄と思われても抵抗は必要なんじゃないか。(抵抗の仕方を間違えてる人もいるが・・・)
無茶苦茶な悪政に唯々諾々はあかんやろって。
芽依の調査をしている探偵は、依頼主である芽衣の叔父についての隠された事実を知ってしまう。そして芽衣が入れあげているホストとの関係も。
カウンセリングという名目だが、芽衣は桜に全てを語ってどうしたかったのだろう。衝撃的な芽衣の事実を知った桜はどんな気持ちだったろう。ふたりの対峙のシーンは圧巻だった。
最後に芽衣は、叔父であり実の父でもある男を訴えると決心する。まだホストが自分の子だと知らないが、裁判になればわかってしまうだろう。それを思うとやるせないが、すこしでも芽衣が開放されるといいな・・・
演じ手はみなさんとても素敵。
やはり特に良かったのは芽衣役の池谷のぶえさん。相当に過酷だったろうな。池谷さんはリアルでも父親のことを宿敵と仰っていたので、思うところも多かったのでは。(アタシも父親と言えばかなり最低なアレコレがあるので「あなたもなのね!」と肩をさすってあげたい)
対する桜役の松雪さん。これまでふわっとした印象しかなくて、『世界は笑う』での役が好かん女だったので(役が、ですよ!)、今回まるっきり雰囲気が違って驚いた。役者さんて面白い。
イキウメンはもちろんみないいのは分かってるんだけど、安井さんの「いっふぅんむ」が2回も聞けておいしかった。
最近、人気急上昇の浜ちゃんは大道芸人。狂言回しのような、そうでないような。不思議な存在。佇まいがうつくしい。
アフタートークがあったり、パンフレットの販売があったり、イキウメの公演では普段見かけないので新鮮。もちろんパンフを購入。というかイキウメの公演でもパンフ作ってくれたらいいのにな。
アフタートークは本当は前川さん白井さんの登壇回がよかったなー。でもイキウメンのセリフじゃないトークは滅多に聞けない見られないので、どのお方のも貴重ではある。
ギリシャ悲劇にはまったく明るくないけれど、この夏に浅野さん目当てで『オイディプス王』を観ていたのは良かったな。(その時の記事はコチラ)
つい先日その舞台のテレビ放映があったのに、うっかり忘れて気づいた時にはもうカーテンコールだった・・・まあしょうがないとその時は思ったものの、浅野さん今井さんらのミニトークがあったらしいと小耳に挟んで切歯扼腕。再放送あるといいな。