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『ワタシタチはモノガタリ』 PARCO PRODUCE 2024

2024年9月11日(水)18:30
@PARCO劇場
¥11000(平日料金)

江口のりこに松尾諭、いい! 内容も面白そう! ということで、千葉雄大FCに入ってるから観劇するのは決定事項なんだけど、その作品が面白そうなのでラッキー♪ と思っていたのだが。
脚本の方はiakuという演劇ユニットの主宰で、チラチラ面白いという評判を見聞きすることがあったのね。けどちょっと前に配信で見た『夜明けの寄り鯨』(→その時の感想)という舞台がかなりモヤる内容だったんで、期待しないでおこうという気持ちに。

↓あらすじと言いながら、かなり詳細に書かれてるな・・・
という訳で、これからご観劇の方はご注意。公式サイトに載ってる文章だけども。

<あらすじ>
肘森富子(江口のりこ)と徳人(松尾諭)は中学校時代の同級生で当時は文芸部に所属。中学3年の夏、徳人が大阪から東京に引っ越してしまい、それから15年間、二人は文通を続ける。二人の間には恋に似た感情があった。しかしその気持ちは互いに伝えられることはなく手紙の行間に淡い恋心が滲んだ。二人が手紙の中で唯一交わしたのは、「30歳になってどっちも独身だったら結婚しよう」という約束とも言えない、冗談混じりのささやかな愛情表現。その言葉が書かれた手紙を見返すたび富子は心がときめいた。しかし、徳人は30歳を迎える年に職場の女性と結婚を決める。その結婚式で15年ぶりに再会を果たした二人。富子は徳人への想いを隠しながら祝福し、「あなたに書いた手紙を全部私にください」とお願いした。

長きに渡る往復書簡を<富子>を<ミコ(松岡茉優)>に、<徳人>を<リヒト(千葉雄大)>という名に変えて、かなりの脚色を加え、富子はSNSに投稿した。手紙の中の2人と現実の2人は、ビジュアル(文章からイメージされるルックス)も、綴られた出来事や思い出にも大きな乖離があったのだが、瑞々しく純粋な恋心がにじむ手紙群は、瞬く間に評判となり、いよいよ出版、映画化の話が動き出す。それを知り憤怒する徳人。徳人は恥をかかされることを恐れ反対する。富子はこの映画化を機に、物書きとして生きていきたいと必死に徳人を説得。仕方なく二人で、納得できる映画の脚本を書くことになる。

物語の中に生きるミコ(松岡茉優)は、その改ざんの改ざんに反発して、作者である富子と徳人に文句を言ってきた。私はもっと劇的でありたい。リヒト(千葉雄大)との恋愛は徹底的に美しくあってほしい。一方、リヒトは自分を生んでくれた富子をリスペクトしている。今回の脚本創作に際し、はじめて対面することになった自分の〝元〟である徳人に対して、大きな不満を抱いた。富子と徳人が見出す着地点は?ミコやリヒトの思考はいったい誰のモノ?

現実と虚構が入り混じる、ファンタジックなラブ・コメディ。

公式サイトより

結論から言えば、けっこう面白かったし楽しめた。うん。

15年も文通していたなんてかわいらしいふたりだ。そしてあらすじを読んだ限りではふたりともほんのりとした想いを持っていたように見えたけど、実際に舞台を観たら完全に富子はめちゃラブで意外だった。そして徳人の方はほとんど気がないように思えた。15年のうち最初の何年かは淡い想いくらいあったかもしれないけど、ほとんど友達感覚だったんだろうな、と。15年分の手紙を取っておくくらいには大事な友達として。
まあ富子も15年会わない間に思い出が美化されて、本物の徳人に恋をしていたと言えるかどうか・・・。

富子のケータイ小説(『これは愛である』というタイトルがなんともベタで、でもありそうで笑える)の大ファンだという女優・川見丁子が恋人である映画監督を連れて富子と徳人に会うシーン。監督がふたりに「ご結婚されてるんですか」と尋ねたら「ネタバレーーー!!」と叫んで怒るという場面、めちゃくちゃ笑った。

ウンピョウのシーンは全てがギャグですごく可笑しかった。事務所の社長も彼の作品じゃなく顔を商品価値と思っていてかわいそうではある。

ストーリー以外では、映像や照明などがすごく良かったなあ。
特に好きなのは、たくさんの文字が雨のように降りしきり、地面に落ちて砕け散るのが紗幕に映し出されるという効果。幻想的できれいだった。
ラストシーンも良かったな。床に撒かれた紙はちゃんと手紙になっていて、劇中で読み上げられた内容(だと思う)が書かれていた。ひらひらと降った紙吹雪は青と白の花びら(造花だけど)で、床に落ちたものを拾った人が「小道具なので手を触れないでください」と劇場の職員さんに止められていて、アタシも手を引っ込めたw

印象的なのは大きなL字型の額縁っぽいセット。なんで四角じゃなくてこの形なんだろうと思ってたけど、鍵カッコの形では?と聞いてそっかなるほどーー!となった次第。

けどやっぱりモヤポイントはあって、『これは愛である』のリヒトの手紙の部分は徳人からの手紙をそのまま使ったというところ。これはあらすじに書いていないんだよね。
私的な手紙を公に晒すのも酷いし、それを悪いとも思ってない富子。しかも周囲に言われて出版の許可を得ようとするが、徳人は激怒(当然だ)。なのに富子は「小説家として成功しそうなのになぜ祝わないのか」と逆ギレ。ちょっとぉ、富子という人間のモラルはどうなっとんじゃ。。権利関係に無頓着なのヤバすぎる。

『これは愛である』は連載?中で、結末をどうするかはまだ考え中の富子。川見丁子はハッピーエンドにしてくれと注文するし、20万人のフォロワーが待ち望む結末にしなくてはと気負うが、徳人は周囲に迎合するべきでないと、編集者として結末を一緒に考えることを提案する。徳人は富子の文才を信じているのだ。(富子の文章の良さを語るシーンがあるけど、読み上げられた手紙でそこまでの文才を感じるか?とちょっと疑問に思った。まあ「設定として」素晴らしい文章ってことになっているんだな~思っておく)それにしても徳人はいい人だな。でもちょっと頭が硬いというか杓子定規なところもあるか。そんな徳人に懐の大きい妻がいるのはバランスが良いのかも。

役者さんはみな達者で良かった。江口さんの富子は、なんというか江口さんだなあって感じw モラルとかにモヤっても、キャラクターとしてなんとなく憎めないのよねえ。いい友達がいてよかったよ。友達役の橋爪さんもすてきだったし。
松尾さんももちろん言うことなし、江口さんと関西弁でのやりとりがいいリズムで楽しい。
松岡茉優ちゃんのリコも可愛いけど、ずけずけものを言う丁子さんのキャラが良かったなー。
千葉くんもリヒトは可愛いんだけど、やっぱ謎キャラのウンピョウが面白すぎでしょ。(内緒の話、一番最初にリヒトが登場する時に後ろ姿だったんだけど、松尾さんかと思ったんだよね。背中や肩ががっちりしてたから・・・本当ごめんwww)

他の方々も皆さん良かったんだけど、今回は尾方さんがなんか好きなキャラでいいなあと思った。今回5役もあった(!)うち、文芸部顧問の先生と編集者が特に好き。ああいう文系のおじさんが好みなのかも知れん。

結局、物語の結末は明示されずに終わるけど、あのふたりがちゃんと前向きに考えて作ったラストなら良いものができるんじゃないかなと。そういう希望をもった終わりだったと思う。
人は皆、現実だけでなく自分の思い描いた物語の中に生きているのだ、という。だから『ワタシタチ“は”モノガタリ』なんだね。


肘森富子・・・江口のりこ
ヒジリミコ/川見丁子・・・松岡茉優
フジトリヒト/ウンピョウ・・・千葉雄大
間野ショージ・・・入野自由
徳人の妻/他・・・富山えり子
文芸部顧問/編集者/他・・・尾方宣久
富子の友人/徳人の娘・・・橋爪未萠里
藤本徳人・・・松尾諭


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深月
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