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『What If If Only ─もしも もしせめて』 『A Number ─数』 Bunkamura Production 2024

2024年9月24日(火)14時
@世田谷パブリックシアター
¥11,000

イギリスの劇作家、キャリル・チャーチルの2作品を連続上演する公演。
──なんだけど、チケットを取るときも、取った後も、しばらくは二本立てだと気づかずにいたアタシ。間抜けすぎる。『A Number』は2022年に益岡・戸次バージョンを観て大いに興味をそそられ、今回も観たくてチケットを取ったのだ。堤さんと瀬戸くんなんて面白そうすぎるってね。

※ネタバレしてます


『What If If Only ─もしも もしせめて』

某氏 大東俊介
未来・現在 浅野和之

あらすじ
愛する人を失い、某氏は苦しみの中にいる。
もしせめてあのとき、ああしていたら。
もしせめてあのとき、ああしていなかったら。
願わくば、愛する人とまた話がしたい。
ただただ、愛する人に会いたい。
果てしなく続く自分への問いかけと叶わぬ願いを抱えるなか、
某氏の前に、起きなかった“未来”が現れる。
そして、起きえたかもしれない、たくさんの“未来たち”も。
混乱する某氏に声をかけるのは、“現在”だ。
良いことも悪いことも、何が起きても起きなくても、
未来へ向かっていまを生きていくしかない。
やがて来るべき幼き未来が姿を現すだろう。

公式サイトより

25分ほどのごく短い短編。
舞台には大小のキューブが釣ってあり、中央にある大きなキューブの蓋が開いてダイニングキッチンのセットが現れる。
某氏は亡くなったパートナーに逢いたいと切望するあまり、不思議な幻覚(?)を見る。
勝手口を開けて外を眺めて想いに耽り、落胆しドアを閉めるとその後ろに真っ赤なワンピースにロング白髪の浅野和之が! いつの間に?! 某氏が驚くけど、会場中が「ヒェッ?!」となっていた。

とにかく話が抽象的すぎて、「???」と思っているうちに25分が過ぎてしまった。
いつの間にか浅野さんは黒いハットにスーツになってるし、魂?か霊魂?か何か
わからない光が部屋中にさざめきながらスパークルするし、性別不明の子供が戸棚から出てくるし、謎すぎる。
いく通りもの未来だとか、現在とか過去についてとか、文章にならない言葉の端切れが煌めいては消える。何なんだろうこれ・・・と思っているうちにパッと終わってしまった。

私の頭が悪いせいか、何も汲み取れずボーゼンとしてしまった。あとでパンフレットや公式サイトのレポートを読んで補完する。
浅野さんの役がドレス姿の方が「未来」で、スーツは「現在」とか、子供は「起きたことにしてほしい、幼き未来」だとか。そんな設定、みんな分かったの??
某氏のパートナーは自死だったというのは多分はっきりとは描かれてなかったとおもう。でもだから「あの時こうすれば」「何かもっとできたのでは」と後悔や自責の念が強いんだな、とかは理解。最後にかすかな希望を感じさせる、という文章があったけども、アタシはまったく感じなかったよ・・・。分かった上で見たら納得できるんだろうか。


20分の休憩。この間にセットを変えたりの準備をするんだろうな。


『A Number ─数』

ソルター 堤真一
バーナード(B1・B2)、マイケル・ブラック 瀬戸康史

あらすじ
バーナードは、ある日ショッキングな事実を知る。
どうやら自分には“コピー”、つまりクローンがいるらしい。
しかもそれは少なくない“数”が存在するようだ。
自分は数多くいるクローンの一つなのか、あるいは自分こそがオリジナルなのか。
父親ソルターは懸命に説明をしようとする、
「自分は何も知らない、病院が勝手にバーナードの細胞を盗んで違法な“コピー”をつくったに違いない」と。
事情を知らないわけがないとバーナードがさらに問い詰めると、
ついにソルターは重い口を開くが、そこで語られた“事実”は果たして“真実”なのか。
そしてまた別の日、ソルターの前にもう一人の“息子”バーナードが現れて──。

公式サイトより

舞台上のキューブはそのまま。中央の大きいキューブが開くと、今度はリビングっぽいソファとテーブルのセット。
B2が「自分のクローンがたくさんいる」ことに動揺して、ソルターに詰め寄っているシーン。ああ2年前見たのと同じだ、と思った。
当時いろんな人の感想や、関連した文章もいくつか読んだ。この脚本はト書きがないんだそう。なので演出でかなり変わるのだとか。けれど今回と2年前で、すごく違うという感じはしなかった。逆にやっぱり同じ作品だ、という印象の方が強かった。翻訳も演出も別の人なのに不思議。
別の舞台なんだから比べてもしょうがないのに、何で比べちゃうんだろうね。

確かに戯曲として興味深いし、好きなタイプの話だから面白く観たけれど、何となく平板に感じてしまった。何というか、坦々としているというか。盛り上がりがないというか。
堤さんも瀬戸くんもうまいんだけど。こういう演出ってことなのかな。
瀬戸くんは3人の演じ分けも卒なくこなしていていると思う。まあ若干若く見えすぎるというか。36歳だからB2(35歳)とほぼ同年齢なのに若く見える。B1(40歳)にはちょっと見えないよね。

堤さんも当然うまいんだけど。まあ坦々とでいいのかなあソルターは。めっちゃ腹立つけど。バーナードの苦悩は全部お前のせいだぞ。堤さん本人が「こいつバカじゃないの?!」って言うくらいだし(パンフレットより)w そんなソルターが、その場の適当な誤魔化しで言動をころころ変えたりする、そんなセリフでちょいちょい笑いが起きていて、そこ笑うところか?と居心地が悪かったな。

2年前の舞台について、自分がどう書いたっけ~と調べたら記事にしてなかった。アホや~。めちゃくちゃ心に響いて、かなり長いこと反芻していたのに、そういう作品に限ってブログにあげてないんだもんなぁ。がっくり。
それで奮起して、昨年は観たもの全部ちゃんと何らか書き残したのだった。

2年前の時は上演時間が70分で、その5分という時間の差のせいかもう少し濃密な感じがした。ファーストインパクトだからかもしれないけど・・・
気のせいかもだけど、犬の話や虐待の話が少し削られてたような? だからヘビーな空気が薄まっているのかも。

ソルターが憎々しくて異常すぎてこの人怖っって震え、いやでもマイケル・ブラックの明るさが一番怖いのでは?とも思ったんだった。今回ももちろんそれは同じ。でも堤ソルターは異常さが若干マイルドな気がする。
ラストのマイケル・ブラックが言った「幸せですよ、すみませんけど」の一言と笑顔が怖くて、でも感想を探ると本当にポジティブに捉えている人もいて、いろいろだなあと思う。

今回は最後に、さまざまな衣装の瀬戸くんが映像で映される。20人のクローンたちを表しているんであろうが、これはいらんのではと思った。蛇足というか陳腐に感じてしまい・・・個人的な感想ですが。

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深月
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