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『兎、波を走る』 野田地図

2023年6月27日(火)19時開演
@東京芸術劇場プレイハウス
¥12,800(S席)

『フェイクスピア』ぶりの野田作品。
野田地図は気になった演目だけ時々観ていたが、けっこうご無沙汰してるうちに随分とチケットが取りにくくなった気がする・・・。今回も先行予約を3つほど申込んで、やっと1枚ゲットした。お財布的に複数回観る余裕はないので、外れたら次の抽選と繰り返して2枚買わないように気をつける。手数料を含めるとすごい金額よねえ。
当日劇場へ行く途中にチケットを発券したら、2階席最後列のいっこ前、サイドブロック。これでS席とは??? ならA席はどこなんだい?! あー、双眼鏡持ってくればよかったー

あらすじ
寂れた遊園地を売却する前に、好きだったアリスの芝居を上演したいオーナー。依頼を受けた脚本家は訳のわからない台詞を書きだす。その劇中で兎が逃げ出し、それをアリスの母が追いかける。兎はピーターパンになり、GIになり、不条理の世界を駆け回る。アリスも母も兎を、お互いを探して混沌の世界をゆく。

☆いつもの如くネタバレとか気にせず書いていくんで、気になる方は自衛よろしく!

耳も頭も悪いので、毎回理解が追いつかないアタシ。今回はネタバレありの感想も気にせず読んでから臨んだ。
結果、どっちがよかったのかは判らないけど、ちゃんと作品自体は楽しめたので良かったかな~と。『フェイクスピア』もあの痛ましい事故の話だと気づくのが(リアタイ勢のくせに)ちょっと遅かったから、もしネタバレ読んでなかったら今回も拉致問題の話だと気づくまでけっこうかかったかもしれない。私の場合は読んでて正解だった。でもだからと言って戯曲の理解度が深まったわけではないとおもう・・・

劇中では色々なモチーフが使われていたんだけど、それらがどういう意味を持つのかは飲み込めてない。そーいや『桜の園』とか、ちゃんとした話を知らないわ。『ピーターパン』だって本を読んだこともないし、舞台や映画も観たことない。ネバーランドとかキャラクターの名前はあまりにも有名だから知ってはいるけど。アリスだけは一応読んだことがある。
アナグラムや言葉あそびもてんこ盛りで、面白いんだけどそれらがこの話とどう絡んでいるのか判ってないんだ・・・。
チエホフの曾孫のチエホウフ(知恵豊富)、ブレヒトの孫でブレルヒト(ブレる人)、とか。兎→USAGI→USA-GI、とか。もう、そうするしかない→妄想するしかないとか。ほお~おもしろい! とは思うけど。
考えるとキリがない。というかテンポが速いんで、考えていると展開に追いつけない。そう、こないだのイキウメで覚えた「ネガティブ・ケイパビリティ」で乗り越えよう。理解できないまま、作品を楽しんでしまおう。(それでいいのか?)

楽しむとは言ってもヘヴィな題材なので笑ってばかりはいられず。そして今回は高橋一生演じる脱兎が、自分は安明進(アンミョンジン)だとすらりと言ってのける。アレはコレのことだよね?ってサワサワすることもなくなった。こんなにも明確にしてしまうのか、と少し驚いた。
拉致問題については詳しくなくて、昔はずいぶん騒いでたけど最近はあまり取り沙汰されないなあとは思っていた。皆忘れてしまったかのよう。あっちの国が言い出さないのはわかるけど、こっちの国も何もアクションしてないよね。お互いシレッと忘れたフリしてやり過ごそうという魂胆なの?

それ以外にもニュース映像ぽいのがところどころ差し挟まれるのは、成田闘争やよど号だったかな。
忘れてはならないけれど、時間が経つにつれてそういった事件事故は増えていき、だんだんと古いものから抽斗の奥の方に追いやられる。覚えておかなくてはならないものが増え過ぎる。減ることはないんだもの。
野田さんが書いた手書きの文章にある「いたたまれない不条理」ってこういうことかな・・・。(手書きの文章は野田地図公式サイトの「フライヤー」で見られます)

役者さんは皆とても良かった。
一生くんについては言うことなしってか、すごいの知ってるし。でも今回はことさらにすごいって思わなかったので、そこがまたすごいなって。作品のなかにしっかり「いる」というか。
松さんもすごいのしってるし、今回もめっちゃすごかった。娘を失った母の嘆きが強過ぎて。『オイル』の時のあの叫びに鳥肌が立ったことを思い出す。
多部ちゃんを舞台で見るのは三度目かな、毎回あの声に持っていかれる。好きな声。
大倉くんはいつでもどこでも大倉孝二のままでさくひんが成立してるのがすごい。すごいしか言ってないなアタシw
大鶴佐助くんも三度目かな。『プレイヤー』(2017)の時は気に留めずにいたけれど、劇団ヒトハダの旗揚げ公演でいいなと思っていたので、今回はちょっと楽しみにしていたのだ。めっちゃ張り切ってた・・・。声も佳き。
秋山さん山﨑さんは磐石だし野田さんは相変わらず。

舞台全面に合わせ鏡を設えたり、カメラのシャッター式に開閉する壁から役者が出入りしたり、いろんな工夫された仕掛けがおもしろかった。銀色のフラフープを潜り抜けてアリスが穴に落ちるシーンを表現したり、フラフープをずらしながら並べて螺旋階段を表したり、演劇的な見立ても楽しい。
脱兎が空を飛んでピーターパンになっちゃうというシーン、旗のように掲げた紙に脱兎の姿を映像で映し出すんだけど、アタシが観た時は紙が真っ二つに破れていてちゃんと映ってなかったのよね。あれはやっぱアクシデントかな? 本当は破れてないんだよね?

今回二階席後方だったから舞台の床面がよく見えて、中央が丸い月面のようになっていたんだけど、あれは最前列近い人には見えなかったんじゃないかな。逆にアタシには八百屋舞台になってることがわからなかった。途中からあれ、ちょっと傾斜がついてるのかな?って思ったら、やはり。終演後に舞台セットの模型が展示されていたので確認した。いま気づいたけど、一階客席内に行って現物見ればよかったんでは? 己の間抜けさよ・・・

もう一回くらい観たいけどお財布的にも無理だな~。当日券に数時間並ぶほどのパワーも無いので、数ヶ月後のテレビ放映に期待しよう。WOWOWさんならきっとやってくれるはず。

舞台美術模型


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深月
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