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『関数ドミノ』 イキウメ

2022年6月4日(土)13時開演
@シアターイースト
¥5,800

大好きなイキウメ。
この演目は2014年と、寺十演出版も観てるのに、なんと両方とも記事にしてない~! アタシのばか~~
2014年版はイキウメ本公演で、三演目だったそう。めちゃくちゃ面白くて、終わった瞬間ため息が出た。ワクワクドキドキして、帰宅してから「ドミノ幻想」って本当にある考え方なのか調べちゃった。(特にそういうものは見つからず、前川さんの創作だと思う)
あまりに面白かったし、瀬戸くん、千葉雅子さんが出るというので寺十さんのも観ちゃったんだよね。本家には敵うまいとおもってたんだけど、勝るとも劣らずなくらいおもしろかった。失礼しましたってココロの中で頭を下げたっけ。まず美術がアッと驚くインパクトだったのよねえ。

<あらすじ>
金輪総合病院前。見渡しの悪い交差点。
車の運転手は路上に歩行者を発見するが、既に停止できる距離ではない。
しかし車は歩行者の数センチ手前で、まるで透明な壁に衝突するように大破した。
歩行者は無傷。
幸い運転手は軽傷だったが、助手席の同乗者は重傷。
そこで目撃者の一人が、これはある特別な人間「ドミノ」が起こした奇跡であると主張する。
彼の発言は荒唐無稽なものだったが、次第にその考えを裏付けるような出来事が起こり始める・・・。
「ドミノ幻想」
世界はある特定の人間を中心にして回っているとする考え。
その人間の願ったことは必ず叶う。
願った瞬間にドミノが倒れ、結果に向かって進んでいく。
周囲はそれに合わせて調整される。
また、ドミノは思いの強さに比例し、スピードを上げる。
最も速いものは「ドミノ一個」と呼ばれ、願った瞬間に結果が現れる。
それは俗に「奇跡」と呼ばれる。
ドミノの力は期間限定である。
ランダムに移っていき、誰に備わっているのか判定することは難しい。
当然本人にも自覚は無い・・・。
イキウメと前川知大によるマジックリアリズムの真骨頂、「関数ドミノ」最新版。
イキウメ公式サイトより)

※自分用備忘録です。フツーにネタバレしてますし、観てない人には判らない書き方かもしれません。

「細かい設定や演出など変更点もあるけど、お話としてはほぼ同じ」
上記のようなことをどなたかが感想に書いていて、たしかにそうかもしれないけど印象はかなり違った。少なくとも私にとっては。
芝居の最初と最後に、真壁役の安井さんが舞台の一番前(客席側ね)のセンターに立ち、観客(世の中の人?)に向かって語りかけるんだけど、それが何だか余計な気がして。
3014年版では幕切れが容赦ない感じで、真壁の絶望でスパッと終わってた。それがトリハダものでぞわっと怖くて良かった記憶。今回のは「どうでしたか」的な語りがある分、マイルドに。そんなにマイルドにする必要あったのかな、なんて私は思ったんですがね。まあ、好みの話ですが。

とはいえ、話自体は面白いことには変わりないので、ちゃんと楽しめました。ストーリーもけっこうちゃんと覚えていたので(私にしては珍しく!)、結末がわかっていたにもかかわらずめっちゃ面白かった。脚本の力かな~。
前川さんのつくる物語はSFとカテゴライズされるけど、一般的なSFっぽさとはちょっと違うイメージ。宇宙船もタイムマシンもロボットも出てこない。日常の片隅、いつもの道をちょっと反対に曲がった先の話みたいな。

今回は「ドミノ」という超幸運な人間がいるらしいよ、という話。その人は願いの「全てが叶う」スーパーマンなんだそうだ。
この説を、信じるか否か?
友達が病気になってしまった、治るといいな。ドミノがそう思ったからHIVに感染した友達は陰性になったと見るか、友達本人が本気で治ると信じたからなのか。
信じる力とは?

ドミノはいる!と熱く強く主張した真壁。周りを巻き込んで「検証」し、自分の主張が正しかったことが証明されたのに、一向に嬉しそうじゃない。
ドミノが幸運を得るたびに、その分の不運は自分に降りかかっている。何をしてもうまくいかないのは、全てドミノのせいだと考える超ネガティブな人間。
だけど彼の考えが全て肯定され、仮説は全て証明され、ドミノがいると結論されたのは、真壁自身がドミノだからでは? 自分が不運なのも、ドミノに次々と幸運が舞い込むのも、真壁自身がそう信じたからでは──?
最後にその仮説を提示され、「そうだ、なんてことだ、ドミノだったのに」と嘆き、「死にたい」と言ったところで真壁が消える。
やはり彼がドミノで、彼の望み通り自分自身を消してしまったのだろうか。

2022年版は真壁が最後に登場し「こうして僕は一度死にました」「皆さんは間違わない様に」と言うのだが、一度とは? とか結局ドミノと違ったんか? とより曖昧な感じに。歯切れが悪く思えて、この部分に関しては私は2014年版のほうが好きだな。
あとは珍しく音楽が使われれていて、それも無い方が好きだなと思った。
これまでのイキウメはほとんど音楽はなく、最低限のSEが効果的に使われていたと思うんだけど。今回、結構ノイジーなBGMが使われてちょっとびっくりした。

キャストに関してはどの方もうまいので、もう何も言うことはないと言うか。
これを書いてるのは観劇からまるっとふた月もたった8月なんだけど、読売演劇大賞とやらで、安井さんが上半期の男優賞ベスト5に選ばれたそうな。やれめでたい!
安井さん含め、イキウメンズはもちろん盤石。浜ちゃんの人外感はますます冴えて、ドミノって人を超越した存在なのかもという説得力w
温水さんが違和感なく馴染んでたし、看護師役の太田女史の超ポジティブな痛々しさもすごかった。

帰り道、チラシ束に次回公演『天の敵』を見つけて歓喜。
これまためちゃくちゃ面白かったやつ!! 再演楽しみ~~!
願わくは無事に幕が開きますように。千秋楽まで無事に完走できますように!

真壁 薫(目撃者、コンサルタント)… 安井順平
左門森魚(目撃者、予備校講師)… 浜田信也
大野つかさ(目撃者、精神科医)… 小野ゆり子
澤村美樹(目撃者、看護師)… 太田緑ロランス
土呂弘光(目撃者、飲食業)… 盛 隆二
平岡 泉(目撃者、会社員)… 川嶋由莉
左門陽一(事故の当事者で歩行者。森魚の弟)… 大窪人衛
新田直樹(事故の当事者で運転者)… 森下 創
横道赤彦(保険調査員)… 温水洋一


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深月
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