【毎週ショートショートnote】あの日の後悔
母の法事の後の会食が終わり、亜里沙は配車アプリで呼んだタクシーを待っていた。亜里沙はスマホを眺めながら母の事を考えていた。
タクシーがすぅっと近付くと助手席のドアが開いた。
「後部座席が使えないので、助手席に乗って頂いてもいいですか?」
運転手は穏やかな雰囲気の初老の男でにこやかに亜里沙に話しかけてきた。
「お客さん、法事の帰りですか?何か心残りがありそうですね」
「母の法事で。1つ、後悔している事があるんです」
「上手く言えませんが、相手を思う事で赦されるんだと思いますよ。でも、せっかくだから心残りを晴らしてみましょうか」
運転手は指をパチンと鳴らした。
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そこかしこで蝉の鳴く暑い夏の朝、私は自転車を漕いでいる。友達と中学校に向かう途中みたいだ。
あの交差点の角にお母さんがパートで働くお弁当屋さんがある。お店の前にお母さんがいた。もしかして、あの日に戻ったの?
お母さんは私が通るのを待っていたのか、私を見つけると手を振った。
あの日、私はお母さんに手を振り返す事もなく知らんふりをして自転車を飛ばした。お母さんはきっと無視されて悲しかったと思う。思春期で恥ずかしかったとは言え、あの日の事はずっと後悔してきた。
お母さんはまだ手を振っている。友達がいるから少し照れくさいけど、でも今度こそ。
「行ってきます!」
私は声を掛けて、大きく手を振り返した。お母さんはにっこりと笑ってくれた。
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「亜里沙、着いたよ。起きて」
姉の由香里が助手席で寝ていた亜里沙の肩をゆすって起こす。
「あれ、なんで?私、タクシー呼んだんだけど」
「何言ってんの?タクシー捕まらないから私が送ってあげたんだよ」
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毎週ショートショートnoteに参加します💛
今週のお題は「助手席の異世界転生」です。
私はラノベを読まないので、異世界転生のお作法が分からないのですが、こんな感じで大丈夫ですか?
しかも410字では全然収まらずに260字程オーバーしています。不要な部分は削ったりしたんですけど、自分の中ではこれで限界でした(>_<)
このお話の中学の話の部分は私の後悔している事です。
中1か中2の夏の話です。
母にしてみれば、中学生がいっぱい通っているから娘が通る姿を見たかったのでしょう。それは親なら当たり前の事です。
私は遠目に母がいると分かりました。手を振ってくれた事は嬉しかったのに、友達も一緒だったからか恥ずかしくて違う方向を向いて自転車を飛ばしました。
この事は長い長い時間が過ぎても忘れる事はありませんでした。ちくんと胸が痛い思い出の1つです。
この事を記事で書きたいなと思っていたので、今回、毎週ショートショートのお題に便乗して書いてみました。
中学の時はダサい制服にヘルメットを被り、これまた雑納というダサい通学鞄を自転車の前カゴに入れてチャリ通していました。私の場合は学校まで比較的短距離(1㎞)だったので部活をやっている期間だけ特別許可のチャリ通でした。
お母さん、赦してくれてるのかな。
傷つけちゃったかな。
思春期だったり反抗期だからって大目に見てくれているかな。
あの時、ほんとは嬉しかったのに、無視してごめんね。
今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪
150週連続投稿なんだそうです😊
なんか私すごい(笑)