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最終戦は東京ドームで
いよいよ今シーズンの最終戦だ。俺は昨日、二軍から一軍に呼ばれた。この最終戦で俺は現役を引退するので、これは監督から俺へのはなむけなんだろうと思っている。
今シーズンは混戦で、ジャイアンツが1位とはいえ2位とのゲーム差は0.5しかない。今日の1位と2位の直接対決で優勝が決まる。そんな大事な試合に呼んでもらえた事を意気に感じて、絶対に何がなんでも打ってやるとそう誓った。
試合は投手戦となり、ジリジリとした展開が続く。俺は代打としていつ出番が来てもいいように緊張感を持って試合を見守っていた。
4回裏にジャイアンツのヒットが続きようやく待望の1点が入る。喜びに沸くベンチの中でも俺は一人集中を続ける。その後もお互い点が入らないまま6回の表、2人目のピッチャーの失投を上手く合わせた相手チームにホームランを打たれてしまう。
これで同点となるも、お互い点を取りきる事ができずに延長戦に入った。
10回表は難なく3人で抑える事ができた。さあ、10回裏だ。ここで決める事ができるのだろうか。ドーム内の観客も両チームの選手も緊張の高まる中、10回裏が始まる。
ここで先頭がフォアボールで出塁すると、次のバッターはバントを試みた。バントは上手くいき、1塁ランナーが2塁に到達した所で相手の守備のミスが出て、1塁に投げたボールが逸れてしまった。その間に2塁ランナーは3塁に行き、バントをしたバッターも2塁に到達した。そこで、俺は監督に背中を押された。
「次のバッターはお前だ。最後の打席で思いきり目立ってこい!お前、お祭り男だろ!?」
「6番、背番号23古内に代わりまして背番号5松岡、松岡」
場内で俺の名前がコールされるとドームの観客の大声援が聞こえる。登場曲を背にバッターボックスに入る。そこで鳴る応援歌とチャンステーマに俺は身震いした。俺は今まで何回もこの場所に立ってきたが、こんなに興奮する出番は初めてだ。俺は、ピッチャーを見据えてバットを構えた。
1球目、ボール。2球目、ファール。3球目空振り。1ボール2ストライクだ。この打席、俺は絶対に打つ。ピッチャーの手を離れたボールを俺は思いきり降り抜いた……。
打球はぐんぐん伸び、あわやホームランかという当たりだ。3塁ランナーが悠々とホームインした瞬間、ドームの中が大歓声で湧いた。俺は、最後に優勝を決める大仕事をやってのけた。プロ野球界にこんな幸せな男がいるだろうか。涙を流す俺にチームメイトみんなが駆け寄ってきてくれた。
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山根あきらさんの青ブラ文学部に参加します💛
お題は「東京ドーム」です。
このお題で何を書こうかなぁと考えましたが、素直に野球の話にしました。
東京ドームはジャイアンツの本拠地なので、ジャイアンツの選手の引退試合という設定にしました。
文中の選手の名前は架空のものです。
この最終戦で優勝が決まるという設定は、2014年のパリーグを下敷きにしています。
あの年は、1位ソフトバンク、2位オリックスでゲーム差なしみたいな状況でした。
しかも、ソフトバンクには一度もマジックは点灯しなかったんです。
残り2試合、この試合でほぼどちらかに決まるというスリリングな試合でした。延長戦に入り、10回裏にマッチ(松田宣浩さん)が劇的なサヨナラヒットを打って優勝が決まったんでした。
もちろん、マッチの引退試合という訳ではありません。
マッチは普段打たない時があっても、ここぞという時には不思議と打ってくれるイメージのある人でした。
それが、あのサヨナラヒットだったんです。
それにしても、あの日はTVで見ていて胃が痛くなる思いでした。
もうすぐCSも始まります。
今年は日本一が見たいです!
今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪
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