【シロクマ文芸部】終わらない立ち話・エッセイ
夕焼けはオレンジ色の光で教室全体を包み込む。
その日、放課後に予定の無かった女子数名は担任の先生のお手伝いするために教室で作業をしていた。どんな作業だったのかはまるで覚えていないが、ミニバスケットも金管バンドもやっていない私達は、時々頼まれると先生のお手伝いをしていたのだった。
「今日はありがとう。遅くならないように帰りなさい」
「はい!先生さようなら」
「さようなら。また明日ね」
秋の夕日が差し込む6年生の教室で、私達はすぐに帰るまでもなくおしゃべりを始めた。その内容は、本当にたわいの無い物だったはずだ。当時の田舎の小学生の話す事だからたかが知れていると思う。
しばらくして、私達は帰る事にした。廊下を歩いていると、放送委員の下校の放送が始まった。下校の放送というのは「みなさん、早く下校しましょう。云々・・・」というあれだ。それと同時に曲が流れる。下校の曲は、私が覚えている限り、いつも同じ物だった気がする。
夕日が背中を押してくる
この曲が流れると、早く帰らないと!と廊下を歩く足が早まる。靴を履き替え、校門までみんなで向かう。
「それじゃバイバーイ!」
「また明日ね」
校門からは二手に別れ、それぞれの道を歩いて帰る。私は友人Sと一緒に帰る。学校前の横断歩道を渡り、少し歩いて田んぼ道を通り住宅街に入る。そこから5~60mほど歩いた角で友人Sと別れる。
・・・はずなのだが、私達はそこからが長かった。
その角で、私達は井戸端会議に興じる主婦よろしく立ち話を始めるのだった。そこでも何を話すでもない、どうでもいい事ばかりだ。TVの話やアイドルの話、学校の事や取り留めのない事ばかりだったように思う。
私達が話しているそばをクラスの男子が自転車で通り過ぎていった。それからも私達は話し続けていた。しばらくして、またその男子が通り掛かった。男子は私達の方を一瞥すると、呆れて言葉を投げかけた。
「お前達、まだそこにおると?早く帰ればー?」
それでも私達はぐずぐずと話し続けていた。けれど、秋は日が暮れるのが早い。さっきまできれいな夕焼け空だったのに、日が傾き始めてきたようだ。これはまずいと立ち話も強制終了となった。
「遅くなったね。それじゃ明日ね!」
「うん。また明日!バイバーイ」
私達はそこから二手に分かれて、日の傾き始めた中を家まで小走りで帰った。家ではお母さんが晩ごはんを作りながら待っている。お母さんに今日は何を話そうか考えながら、早く帰ろうと私は足を進めた。
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シロクマ文芸部に参加します💛
今週のお題は「夕焼けは」です。
今回は小学生の時の放課後のワンシーンでエッセイを書きました。
どうやら私は、子供の時から相当おしゃべり好きだった模様ですww
下校の時に流れていた曲の歌詞を何となく覚えていたので、検索してみたら出てきました!
有名な曲だったんですね。
改めてじっくり歌詞を読み、曲を聴いたら、なぜかすごく沁みました。
ちょっと泣きそうです。人目がなければ泣いていたかもです。
今よりもまだ純粋で擦れていない、子供時代を思い出したのかな。
ちなみに友人Sとはこの後、中学・高校と同じ学校に行く事になります。
中学の時の塾も同じ所に行っていたので、2人で暗い夜道を自転車で帰っていました。
その時、小さなお店で何かを買い食いするのがちょっとした楽しみでした。
中学では同じクラスにはなりませんでしたが、高校では3年生の時に同じクラスになりました。
その時は、同じグループではありませんでしたが、私は根無し草のような所もあったので、たまにはおしゃべりしたりして過ごしていました。
友人S、今どうしているのかな。元気に暮らしていたらいいな。
今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪