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泣いて叫びたかった

謝って欲しい!

自分でも驚く強い口調で夫に放ったその言葉は、
私の中の小さな子ども、インナーチャイルドの声だったのだと気づいたのはその数日後。

泣いて叫びたい気持ちが、心の奥の方で蠢いて、昔のことを自分の中で反芻して思い出していた。



怖かったよね
と泣いている小さな私に今の私が寄り添う。

すると、私の奥深くに潜んでいた感情が噴き出した。
嗚咽するほど泣いた。



その時に
謝って欲しい!
という気持ちも出てきて気づいた。



二十歳の時、記念にプレゼントが欲しいと言って、父からネックレスをもらい、その時に手紙ももらったのだった。
父からの最初で最後の手紙。
内容は全部は覚えていない。
なぜかと言うと、
その手紙は、財布の中に入れて持ち歩いていたのだけど、手紙をもらってすぐ、財布をなくしてしまったのだった。
状況から、本屋さんに立ち寄った時にかばんから盗まれたか、その付近で財布を落としてすぐにとられたか、だと思う。
交番に届けたけど出ては来なかった。

手紙の一文だけ覚えている。
兄と私には、お父さんとお母さんのせいで寂しい思いをさせて申し訳ないと思っている
と書かれていた。


「寂しい思いをさせて申し訳ない」
と書かれていても、その時は父が本当にそんなことを思ってるとは思えなかったし、
父がいないことを子供の頃から寂しいと思ったことはなかった。



謝って欲しいのはそこじゃない!


怖い思いをさせてごめん
傷つけてごめん
重いものを背負わせてごめん
不安にさせてごめん
縛りつけてごめん
我慢させてごめん


子供の私に謝ることたくさんあったはず。
父も母も。



そんな思いが自分の中から出てきたことに驚いた。


父が亡くなったことを知った時から、
30年の間父と連絡を取ろうとしなかったことを後悔したり
父を恋しく思って泣いていたのに
毎日、父の笑った顔が思い出されて、話しかけていたのに。


30年前、大人になった私も手が震えるほど父に対しての抵抗があったのだと改めて思い出し、
子供の頃からのことも大人になってからのことも
泣きながら父を責めた。



偉かったね
わたし。
がんばってきたよね。



父を恨んだことは今までなかった。
今も恨んでいるわけではない。



私の心の奥底で泣き叫びたかった小さな私は、
この日、すっと軽くなっていった。


何十年も抱えてきたものだから、これですべて癒され消えたわけではないだろうけど。

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