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人形供養
娘が家を出ることが決まった時、小さな頃から持っていたぬいぐるみやお人形を整理しようということになった。
捨てるのは気が進まない。
ネットで探して人形供養をしてくれる神社にお願いすることにした。
ひとつひとつ供養するもの、残すものを選んでいた時、小さな子鬼のぬいぐるみが出てきた。
娘が産まれてまだ入院中、兄夫婦が虎のパンツを履いた小さな子鬼のぬいぐるみを持って病院へ来てくれた。
父は末期の癌で、娘が無事産まれるのを確認してから、同じ病院の違う病棟に入院した。
母は父のところにつきっきりだった。
主人は仕事が忙しく、4人部屋だった病室は、どのベッドもおじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、兄弟姉妹などが訪て賑やかな中、私は産まれたばかりの娘と2人だけだった。
娘は逆子で臍の緒が首に巻き付き、危ない状態で産まれた。
そのせいだったのか、2716gと少し小さかったせいだったのか、なかなか上手くおっぱいを飲めなかった。
授乳のたびに飲ませるのが下手だとか、この子がダメなのかなとか、グサグサ胸に突き刺さるような言葉を看護師さんにかけられ、泣きながらおっぱいをあげていた。
小さ過ぎてオムツも上手くできなくて、情けなくて、今思い出しても泣けてくる。
そんな時、兄夫婦が来てくれた。
嬉しかった。兄嫁(最初の嫁)がオムツのコツも教えてくれた。
それからはぬいぐるみを娘のベッドにずっと置いて退院まで頑張った。
娘が大きくなってどこかにしまってあったのか、私もそのぬいぐるみの存在を忘れていた。
沢山あるぬいぐるみやお人形を箱に詰めながら、その黄色い小さな子鬼をどうするか悩んだ。
でも、娘は独り立ちをしようとしている。
このぬいぐるみには思い入れがあるけれど、ありがとうと伝えてお別れすることにした。
どのお人形もぬいぐるみも可愛そうに思えて、迷ったけれど、いつかは片付けなくてはいけないし、段ボール箱の蓋を何度も閉めたり、開けたりして、やっと送付した覚えがある。
そして、今日。
ずっと処分できずにいた雛人形を供養してもらうことにした。
娘が小さい頃は毎年キチンと飾っていたが、それ程大きくないのにかなりのスペースを取ることや、 年々7段の台座の組み立てが億劫になってしまい、お内裏様とお雛様だけ飾ったり横着してしまっていた。
娘が体調を崩した頃、そうだ去年忙しくて、お雛様飾ってあげなかった。
それがいけなかったのかもと思って、その年からは毎年キチンと飾るようにしていた。
娘が家を出てから2年間は飾っていたが、
結婚したのを機に飾らなくなった。
娘の妊娠を知ってから、箱に入れっぱなしのお雛様が気になっていた。
また嫌なことが起きませんように。
すぐにそんな風に思ってしまう。
私の悪い癖だ。
「今まで娘を見守っていただき、ありがとうございました。」
心を込めてお別れをしようと思う。