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Global Business Trend vol.1 | D2Cビジネスの終わり

最近、この動画に魅了され、コアラマットレスを購入した。日本では今、D2Cブランドがたくさん注目を浴びており、記事がかかれたり著書が売り出されたりして、ブームがようやく(?)始まった。しかし、D2C発祥の地アメリカでは、早くもD2Cは終わりに近づいているという話がある。(cover image credit: medium article)

アメリカのD2C代表ブランドは、主に、以下。
Warby Parker:自宅にメガネフレームが5つ送られ、試着できる。フレームを選んで購入、または返送できる。D2Cブランドの先駆者と呼ばれる。
Away:スーツケースブランド。おしゃれで丈夫なスーツケースが安く購入できる。旅行関連記事などコンテンツとブランドを絡めたところが、伸びポイント。
Casper:マットレスブランド。コアラマットレスと同じようなビジネスモデル。若者向けのSNSを駆使した施策と、電車広告のOOHなど伝統的な広告媒体手法を掛け合わせたブランディングが秀逸。
Outdoor Voices:10-20代女性に人気なアクティブウェアブランド。ファウンダーのTyler Haneyも24でこのビジネスを立ち上げ、インスタグラマーのように自らブランドをPRして話題に。
Brandless:SoftBank Vision Fundが投資。アメリカ版無印?のような存在を目指していた。「ブランドのないアマゾン」として、e-commerceに力を入れ、自社の生活必需製品を売っていたが、2020年2月10日に経営破綻。
Everlane: 「圧倒的に透明性の高いブランディング戦略」をが売りのアパレルブランド。どこで何が作られていて、どのようなプロセスで服が自分の手元に届いているか明確に説明している。2月に日本語サイトが設立された。

こんなに多くの成功ブランドがある中ではなぜ、D2Cの終わりが叫ばれるようになってしまったのか。

1.過酷な労働環境や、ずさんな財政管理
Away:
昨年一躍話題になったのが、「verge」というサイトに載ったAway元従業員の告白。この記事を筆頭に、ドミノ倒しのようにD2Cブランドの過酷な労働環境が表面化した・・・
Away CEOのSteph Koreyはかなり従業員に厳しかったらしく、slack上で:
- 夜22時ごろに、slackがオンラインになっているマネージャーが何人もいるのが見えているから至急返事をしろ、と促す。
-「キャリアアップの機会が欲しい」とリクエストした従業員チームに対して、「キャリアに一番大切な責任感を磨くトレーニングを始める」と称し、「カスタマーエクスペリエンスの向上が数字的に5日間連続で見えるまで、有給やリモートワークを一切禁止」する
- 会社の理念を”customer obsessed, empowered and in it together”(顧客のことを執着するくらい一番に考え、エンパワメントを大事にし、チームワークを大切にする)とし、休みをとることはこの理念に反していると従業員に伝える
- ミスは全社員参加のslackチャンネルで指摘

Awayの安価で丈夫の上おしゃれなスーツケースは、休みを返上してまで働いている従業員のおかげで保たれていたのか・・・。個人的にAwayのスーツケースを愛用しているので、とてもショックだった。

FounderのStephはこの記事を受けAwayを退き、今は別のCEOが入っている。Co-founderだったJenniferはどちらかと言うとinfluencerのような役割を担っていたらしい。

Outdoor Voices:
10代- 20代の女子に絶大な人気を誇るアウトドア・アクティブウェアのブランドだったが、新卒の子達を安い賃金で雇っていたことが発覚
また、instagramなどのSNSで高いプレセンスを上げており、#doingthings というタグラインが好調だったが、ビジュアルにお金をかけすぎて、撮影予算は一回$50,000 - &100,000(500〜1000万円)まで高騰。店舗で配る水のボトルに年$20,000(200万円)ほど出費。
リアル店舗もどんどん開け、ファンドマネーを使い切り、レベニュー以上の出費で赤字に。
2018年には$21million(21億)の赤字になり、そのうちの$3million(3億)はデッドストックの使われていない生地への出費だったことが明らかになり、財政管理のずさんさが明らかになった。
CEOのTyler Haneyは2020年2月にCEOを辞任

Everlane:
Everlaneでも、不当な解雇が元従業員の告白により明らかに。

2. DTC市場の飽和状態:強いブランドアイデンティティを保つ難しさ
Brandless:
2020年2月に破綻したBrandlessの失敗で明らかになったのは、プロダクトがどんなに良くても、未来を見据えたブランドストーリーを考えないと、消費者は飽きてついて来ないということ。Brandlessは、商品が良ければ消費者は自然と購入すると考え、各商品に名前を付けたりするのをやめて、無駄なコストを省くことが目的だったが、商品を売るのにいかにマーケ戦略やコピーが大切かが明らかになった。

Casper:
IPOを目前に、自分のマットレスを自社で作っていないことが発覚。
こちらはBrandlessのケースとは逆で、ブランドがクールで人気ならば、商品自体は他と同じでもよりクールでトレンディーな商品を消費者が好む、という仮説がワークしなかった事例になる。重要なのは世界観だけではない。ブランドも商品も、両方大事ということが改めて明確になった。

3. サプライチェーンのスケール化が難しい
従来のブランドで見る、複雑な物流のミドル部分を省いているのがDTCのビジネスモデルだが、省いてしまうことでスケール化していくのがどんどん難しくなる。拡大しようとすればするほど、物理的な障壁が生まれる。
また、Casperのようにミドル部分を省きたいので、スケール化の対策として、他社のマットレスを作る工場に自分たちのマットレス制作も依頼すると、プロダクトの差別化ができなくなる。

4. VCファンディングのプレッシャー
ベンチャーキャピタルからお金をもらうと、当たり前だがプロフィット優先になるため、とにかく利益を出すことをブランドが目的とし、本来のブランドアイデンティティなどが薄まっていってしまう。DTCに最も必要な強いブランドアイデンティティが隠れてしまうと、利益も出せないという悪循環に陥る。

5.インフルエンサーマーケティングの終わり?
Casperの成功は、強いインフルエンサーマーケティングが背景にある。届いたマットレスを開ける”unboxing video”などが話題になり、Kylie Jenner(先日、「史上最年少の資産10億ドル超え富豪」に選ばれた)などの有名人を起用してマットレスを初めて買う若い世代にアプローチ
しかし、インフルエンサーマーケティング市場も、現在は下がり傾向にある

では、D2Cとして成功する秘訣は?私なりに考えてみた。

1.ブランドの理念(Brand Purpose)をしっかり持つ
現在、私が個人的に成功していると思うD2Cブランドは、オーガニックタンポンなど女性の生理用品を作っているLola、「女性の仕事着」をテーマに作っているM.M. La Fleur(ちなみにファウンダーは日本とハーフの、Sara Miyazawa Lafluer)。両者とも、「女性のエンパワメント」を第一に掲げ、明確なブランドビジョンを持っているのが、消費者からも明確に理解できる。

2. 経営者は経営に専念する
インスタグラマー上がりのような経営者は、ブランド認知を獲得する初期にはとても効果的。しかし、AwayやOutdoor Voicesの失敗例を見ると、拡大して組織をマネジメントするようになった段階では、表向きの施策やPRに注意が行き過ぎて、混乱を招いたり、従業員やお金の管理ができなく会社をダメにしてしまっている。AwayのStefとJennifer、Outdoor VoicesのTyler Haneyは、自分たちの名前をたくさん露出し、インフルエンサーのような役割も果たしていた。一方LolaやM.M. Lafluerは、経営者が顧客にメッセージを発信し、メディアなどにパーソナリティは露出しているものの、「彼らの会社」というイメージを世の中に出していない。

3. Price point and frequency (プライスポイントと、購入頻度)
マットレスやヨガウェア、スーツケースは、毎日購入するものではない。Lolaのような生理用品、EverlaneやM.M. Lafleurのような服は、毎日使用する生活必需品である。使用頻度が高い商品で、クオリティを担保し価格設定を高めにできる方が、D2Cビジネスで取り扱い安いのではないかと思う。

4.なるべくVCからお金をもらわない?(笑)
このポッドキャスト(NPR- How I Built This: MM.Lafluer Sara Lafluer)で、MM LafluerのCEOが、VCマネーをもらわず、家族や友達に支援してもらったことが、結果的にビジネスに良かったと話している。彼女曰く、VCが入らなかったことで、自分のブランドを保ち、利益を上げることだけに集中するようなビジネスデシジョンをしなくて良かったと語っている。

5.資金をショートさせないパトロンを持つ
VCでも銀行でもないところからお金をもらえるようにする。例えば、セラノスで有名になったエリザベス・ホームズは通算700億円の調達に成功。彼女の場合、ビジネスに実態がなかったのは最大の問題だったが、VCや銀行以上にエンジェルからかなり資金調達を成功させていたところがある。お金の余裕は気持ちの余裕は、どのビジネスでも同じ。

6. 最終的には大手に買われることを目標とする
Dollar Shave Clubは、髭剃りの刃やシェービングクリームを、購入者の好みに合わせて、毎月のサブスクで送られてくるというビジネスモデル。(女性用は、似たような物でBillieFlamingoがある)
このDollar Shave Clubは早い段階でUnileverに買収された。
生理用品ブランドのLolaも、Walmartという大手スーパー(日本では西友を運営)で売り始められるという噂があり、D2Cブランドも業界大手とタッグを組むのが、結局は最善策だと思い始めているかもしれない。

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