デザインチームの心理的安全性の担保について考える。
こんにちは。
「デザイン×チーム」がテーマのnote 3記事目は、ここ数年で本当によく聴くようになった「心理的安全性」について、デザイナーとしての目線から探究していきます。
心理的安全性については今やさまざまな場所で語られているのでここでは詳しく解説しません。
詳しく知りたい方には下記のGoogle先生の記事がおすすめです。
実際のデータに基づきGoogleが考える「効果的なチーム」について書かれた記事で、心理的安全性の重要性についても触れられています。
さて、そんな大事な「心理的安全性」ですが、
個人的にはデザイナーが集まったチームでの心理的安全性の担保には一部独特なポイントがあると感じています。
ですが、デザイナーがその職種の特性を元に心理的安全性について発信している記事を見かけたことがなかったので、自分で書いてみようと思います。
デザイナーさんが自分のメンタルを平穏に保つことに役立ったり、デザイナーをマネジメントする方のお役に立てれば嬉しいです。
私は最大で9名のデザイナーチームのリーダーを務めていましたが、その際には、チームが下記の状態にあるよう留意していました。
●目標の理解がある:
○チームのミッション・ビジョンをチーム全体が理解している
○チームメンバーそれぞれのミッション・ビジョンをお互いが理解している
●相互理解がある:
○お互いの「違い」について認識している
○お互いの「違い」を活かし合うことができる
●発言機会が均等である:
○先輩・後輩関係なく平等に発言できる文化がある
○臆することなく自分の意見を言える文化がある
●アサイン機会が均等である:
○プロジェクトへのアサイン機会が平等に与えられる
○アサイン状況に納得感がある
●問いの創出ができる:
○メンバーがお互いに課題を見つけることができる
○メンバーがお互いに課題の解決に向けて動くことができる
これらについて詳しくご紹介していこうと思います。
【01】目標の理解がある
あす公開予定のデザイナーの成長戦略についてのnoteでまた詳しく触れようと思いますが、近年、デザイナーのスキルセットが非常に多様化しています。
そのため、例えば一概に「Webデザイナー」と言ったとしても、印象的なビジュアルデザインなどの表層部分に強みを持つデザイナーさんもいれば、情報設計などの骨格に強みを持つデザイナーさん、さらに上流の構造・要件・戦略に携わっていきたいデザイナーさんなど、1人1人が持つスキルや在りたいデザイナーの姿は異なります。
ビジュアルデザインも更に細分化でき、イラストが得意な方もいれば、フォトディレクションが得意な方も、自分でプロのフォトグラファー並みの撮影を行える方もいらっしゃるでしょう。
そのため、メンバー1人1人の…
●デザイナーとして在りたい姿(未来)
●いま現在 習得したいスキル(現在)
●いままでに身につけてきたスキル(過去)
などについてお互いに理解がある状態がとても望ましいです。
それを達成するための具体的なアクションとして、私たちのチームでは
●ローンチ報告
●ドヤ会
などを行って、お互いがどんなデザイナーか知る機会をなるべく多く持つようにしていました。
「ローンチ報告」では、担当プロジェクトがリリースになった際に、デザイナーとしてこだわったポイントや苦労したポイントなど、プロジェクトを通しての気付きや学びをシェアしていきます。
時にはボツになったデザインを供養する「ローンチしたかった報告」をすることでも、学びがあるとともに傷ついたデザイナーの心をソッと癒やしてくれると思います… 🙏
次に「ドヤ会」というのは、テーマを決めてメンバー持ち回りでLTをする会です。
老いも若きも、自分の持つナレッジを存分にドヤってもらおうという趣旨のネーミングですが、いい感じに参加するハードルの下がる名前じゃないでしょうかw
ふだんあまり自己主張をしないメンバーやキャリアの浅いメンバーも分け隔てなく発表してもらうことで意外な発見が多くあり、発表者はスキルの棚卸しやプレゼンの練習にも繋がります。
発表に対するみんなのリアクションを見ることで若手メンバーも自信に繋がるのではないかと思いますし、年長者メンバーも後輩からでも積極的に学ぼうとする姿勢がよく見えるのでとても良い会だと思っています。
先輩が後輩に、素直に「教えて!」って言えるチームって、とっても強いよね。
ドヤ会を発案してくれたメンバーに感謝。
ちょっとだけ過去の自分のドヤ会の資料をチラ見せ。
自分はよく家族の観察からデザインについて考えたりしていました。
↑こちらに関しては資料をnoteに書き起こしたものもあります。
↑積極的にエンジニアの主人をネタにします。
続きまして、メンバー1人1人の理解があるのと同様に、チーム全体のミッション・ビジョンもチームのメンバー全員が理解し、自分が果たすべき役割を認識している状態が望ましいです。
こちらに関しては、定期的に(特に会社の査定→目標設定のタイミングで)チームリーダーの自分からメンバー1人1人に、チームが目指したい姿やメンバーに期待する役割を伝えるようにしていました。
そもそもの目標設定にOKRを採り入れる、といった手法でもチームとしての目標が個人にまで伝わりやすく、果たすべき役割を認識しやすいかもしれません。
実際にOKRを導入しているUXデザインカンパニーさんの記事も↓
いくらメンバー1人1人の目標があってお互いがそれを理解していても、チームの目標への理解がなければチームとして成長しません。
また、チームの目指す姿がボヤけていると、ある日 突然「あれ…?わたしなんのためにこの会社で働いているんだっけ…?👼 」という危機が訪れやすくなるんじゃないかと思っています。
こちらに関して、組織イノベーションのメディア「CULTIBASE」さんのラジオでも、下記のように語られています。
組織にエンゲージメントを感じられなくなっちゃってるとかモチベーション下がっちゃってるみたいな人って、実はその仕事に対するやりがいはなくないし面白い仕事してるんだけれどもそこで一緒に働く意味を見いだせなくなっているんじゃないか
(中略)
そこは合理的機能的なところだけでは言い表せない人の繋がりみたいなところをどうやって会社の中にうまく作っていくかみたいな意味でチームという箱を有効に使えるといいよね
(ラジオの終盤、16:00頃からです)
これ、首がもげそうになるくらい共感する方も多いのでは…?
「なぜやるか」を明確にしておくためにも、所属するチームのミッション・ビジョンの理解は有用だと感じます。
【02】相互理解がある
個人的には、相互理解とはお互いの「違い」を理解することだと考えています。
デザイナーは、とてもこだわりが強い方が多いです。
それ自体は良いことです。デザインに真摯に向き合ってきたことの表れだと思います。
でも、自分のデザインだけでなく他の人のデザインも優れていること。
仕事のやり方は自分のやり方だけが正義ではなく、他の人のやり方も優れていること。
そのように「違い」を認識して、認めることが出来るようになったとき、人はさらにもう一歩成長するのではないかなと思います。
リスペクト力とでも呼びましょうか。
なので、チームメンバー同士がお互いの違いを理解し、さらに違いを活かし合うことができることは、心理的安全性の担保の意味合いでも成長を促す意味合いでも、とても重要だと考えています。
すこし違った切り口から探究してみましょう。
みなさんは好奇心旺盛ですか?お子さんがいらっしゃる方は、お子さんに好奇心旺盛な子どもに育って欲しいと思いますか?
おそらく「好奇心旺盛になりたくない!なってほしくない!」という方はほとんどいらっしゃらないのではないかなと思います。
ではさて、「好奇心」って漢字でどう書きますか?
「奇を好む心」ですね。
つまるところ、噛み砕いて言うと好奇心とは「自分と違うものに興味を持つ心」ではないでしょうか。
こちらは私が考えたわけではなく、
子どもの教育についての文脈でこちらを仰っていた方がいて、それを聞いた私はそれはそれは「!!!!!!!!!!!」となりました。
小さな子どもの頃は、はじめて見る動物に目を丸くしたり、アリの行列がどこまで行くのか追いかけたり、自分とは違う、まだ見たことない知らないものに興味を持ち、追いかけているうちにさまざまなことを楽しく学びとっていたと思います。
…大人になる過程のどこで落としてきちゃったんだろー?
いや、大人になってもそれをたくさん持っている人もいらっしゃいますね。
そう考えると、「違い」を理解することって、とても可能性が広がることのように私は感じます。
ちょっとポエムっぽくなりましたが、このように相互理解が土台にあると、自分と異なる意見が出た場合でも否定的に受け取りにくくなり、次に挙げる「発言機会の均等」にも繋がると思います。
チームでの具体的なアクションとしては、特定のイベントというよりは1on1やデザインフィードバックなど日常的な対話を通して「否定から入らない」「相手の意志を最大限尊重する」コミュニケーションを意識して行っていました。
【03】発言機会が均等である
相互理解が進むと自分がチームに受け入れられていると感じやすくなり、「意見が言いにくい」「こんなことを言ったら変だと思われるんじゃないか」といった「発言」に対するネガティブなイメージが軽減されていき、結果として発言機会が活性化されます。
さらに、年次やポジションなどにとらわれず、メンバー全員が臆することなく発言できる状態が出来上がれば理想的です。
デザイナーのような専門職の場合、特に職能別チームの場合、若手層の発言が控えめになるチームも決して珍しくないのでは?と思います。
ですが、リーダーや先輩ばかりが発言するチームですと、チーム内での認識や関係性が固定化しやすくなり、イノベーションが生まれにくくなると思いますし、若手の方の発言機会が少ない場合、その方の言語化力やコミュニケーション力の成長機会が奪われてしまう、といったリスクがあると思っています。
また、他にも発言機会が均等であることによってリスクを大幅に軽減できることがあります。
「デザインフィードバックでボッッッコボコに傷つく」リスクの軽減です!!!!
私の「デザイン×チーム」のnoteの1記事目でもデザインフィードバックについて書きました。
ここではフィードバックを受ける人とする人が対等に発言する方法、つまり発言機会が平等な状態でフィードバックを行うことを推奨しています。
また、一方通行で行われるフィードバックにおいて発生し得るリスクについても記載しています。
フィードバックによって一時的に悔しい思いをしたりすることは必要なことだと思いますが、発言機会が一方的であることによって、フィードバックを受ける人が
●自分の考えを不本意に曲げざるを得なくなってしまう
●必要以上に自己評価を下げてしまう
●本来デザインへの「批評」のために行われるべきフィードバックが、自分への「批判」のように感じられてしまい、フィードバックを受けるのが怖くなってしまう
といったリスクが大きくなると思うのです。
そしてこれらは、フィードバックを受けた人が「自分はこう思う」と発言できる環境であるだけで、かなり軽減できるものだと思います。
うちの3歳の息子がやっている「しまじろう」のお母さんも、しまじろうがお友だちにオモチャを持っていかれてしまったときに言ってましたよ。
しまじろう、いやな ときは いやと いっても いいのよ。
さて、とはいえ一朝一夕でチームが発言機会が均等な状況にはなりません。
さいしょのうちは、チームミーティングなどではファシリテーターの方がメンバーのようすに目を配り適切に話題をふるなどして、発言機会が均等になるようコントロールすると良いでしょう。
また、土台として雑談が多いチームである、というのも有効に働くと思います。お互いどんな人間か知っているほうが発言しやすくなりますし、単純に話題も増えますよね。
既に取り組んでいるチームも多いかと思いますが、アクションとしてはslackに分報チャンネルを立てる、なども有効かと思います。
【04】アサイン機会が均等である
冒頭にて「デザイナーチームでの心理的安全性の担保には一部独特なものがある」と書いたのは、特にこの項目を指しています。
デザイナーだけでなくエンジニアさんだったりもそうかもしれませんが、デザイナーをマネジメントするうえで恐らくいちばん重要なのが「アサイン機会の均等」じゃないか、と個人的には考えています。
アサイン機会の均等とは、メンバー1人1人が自分の目標やスキルセットに即したプロジェクトにアサインされる機会に恵まれている状態を指します。
めちゃくちゃ噛み砕くと「みんなやりたいことやれてる」状態のことです。
とはいえ仕事なので、やりたいことだけしてればいいなんてことはゼッタイなくて、やるべきことだってたくさんありますよね。
そう。もっと言えば、アサイン機会の均等とは「メンバー1人1人が自分が果たすべき役割を果たした上で、成長機会に恵まれたアサインが行われている」状態を指しています。
一部のメンバーにアサイン機会が集中したり、意図が分からない(説明のない)アサインが連続したり、一部のメンバーが自分のやりたいことだけやってたり。。。
アサイン機会の均衡が崩れると、チームは非常に脆弱になっていくと考えています。
もちろん人気のデザイナーに仕事が集中するのはごく自然なことですが、
人気のデザイナーだってやるべき仕事をきちんとやっている状態で、他のデザイナーも自分がやりたい仕事の獲得のために努力でき、努力すればやりたい仕事にアクセスできる状態。
メンバー1人1人がアサイン状況に納得している状態。
これがデザイナーのチームにはぜったい不可欠だと思っています。大事なことなので2回言いますね。
ゼッタイ!!!!!!!!不可欠だと思っています。
とはいえアサイン機会が均等な状況を作るのって難易度が高いことでもあります。
ここまでに書いた「目標の理解」「相互理解」「発言機会の均等」のすべてが揃わないときっとたどり着けません。
すべての成長のはじまりはアサインから。
デザイナー個人を成長させるのはあくまでもプロジェクトを通したアウトプットの経験だと私は考えているので、良いアサイン機会を創出できればよりチームの成長を促せるし、そうでなければ成長の妨げになるだけでなく不平不満が生まれチームの均衡が崩れる事態になりかねない。。。
デザイナーチームをマネジメントする上で独特かつ最重要な項目だと思います。
How to としては、私たちのチームではアサインは基本的にチームリーダーの自分の方でスプレッドシートに集約し、緊急時以外は週次の定例で情報リリースを行うなど、アサインを透明性の高い状態で行うようにしていました。
「良いデザインをつくりたい」っていう気持ちはみんな同じなのに、アサインで人を羨んだり妬んだり疑ったり、逆に羨まれたり妬まれたり疑われたりするの、嫌ですよね。心理的安全性どころの話じゃないです。
もちろんプロデューサーやディレクターからデザイナーの指名があったりした場合は基本的に指名が通るよう配慮しますが、指名理由はアサイン時に周知するなどしていました。
【05】問いの創出ができる
さて、最重要な項目がもう出ちゃいましたが、残されたさいごの項目が「問いの創出」だと考えています。
また改めてデザイナーの成長戦略を考える記事で詳しく書きますが、私は現代のデザイナーに特に必要なのは「自分で成長サイクルを回すことができる力」だと考えています。
そして、それに必要なのが、チームやそのメンバー1人1人の状況をより良いものにしていくために問いを立て、その解決について議論し、実行していくことができる力です。
「もっと良くするには、どうしたらいい?」という疑問を常に持ち続けられる、というイメージですね。
なんだかデザインの本質と似ています。
問いの創出ができるチームでは変化と成長が促され、チームを停滞から脱却させ、その結果、心理的安全性が高まるのではないか?と考えてます。
長くなるので、こちらの詳細についてはまた次のnoteで書いていきます(ホントたびたびひっぱるよねー)。
【06】まとめ:心理的安全性の高いチームでアウトプットを最大化しよう
さて、ここまで書いてきた私が考える心理的安全性の高いチームを成立させるための要素は
●目標の理解
●相互理解
●発言機会の均等
●アサイン機会の均等
●問いの創出
でした。
「アサイン機会の均等」についてはデザイナーの職種での独自性の強い項目かもしれませんが、個人的には最も重要な項目だと考えています。
冒頭の図にも表した通り、デザイナーの所属チームおよびその心理的安全性は、デザイナーのすべての活動の土台になる、とても大切なものだと思うんです。
ぜひみなさんのチームでの心理的安全性の担保のための取り組みについても聴かせてくださいね。
それではまた。
👉 つぎの「デザイン×チーム」のnoteはこちら。
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