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断食中に想う

昨夜から、今日の夜まで
飲み食いは禁止。
シャワーを浴びたり、手を洗うのも禁止。
トイレの後は、
指の第二関節まで洗う事が許される。

2000年前のエルサレムで
2つの神殿がこの日に破壊された。
その後も、
スペインからユダヤ人が追放されたり
第一次世界大戦が勃発したり
多くの悲しい出来事が
この日に起こっている。

今日までの9日間は
肉やワインも禁止だった。
神殿をローマ人が占拠され
生贄を捧げるにも
ワインの清めも出来なくなったから。

肉が食べられなくても
元シェフの夫が魚料理を作ってくれ(タイトル写真)
それなりに、美味しい毎日を
過ごせたけれどね。

ユダヤ教では、
過ぎ越しの祭り、というのもある。
モーゼがユダヤ人を率いて
エジプトを脱出した事を
8日間祝う。

楽しい祭りであるが、
食べ物の制約が多い。
この期間、
調理して膨らむ物を食べてはいけない。

膨らむ、とはエゴの象徴だ、という。

膨らむものを食べなければ
謙虚な人になれるのかは疑問だが、
何でも食べて良い、という環境から
自分を、時々解放させることで
身を持って学ぶ事も多い。


この期間に
実際に食べていけないものは
フカフカのパン。
穀物や豆類も
調理すると膨らむので禁止。
小麦粉製品も
膨らむ可能性があるので禁止。
だから、パスタも麺類も禁止。

小麦粉製品は
マツァ、
というクラッカーを食べる事だけは、許される。
厳しい監視の下、18分以内で作られているから
膨張を防げている、らしい。

たかが、
小麦粉と水で作られたクラッカーなのに
手焼きのものは、一箱何十ドルもする。


日本人の私にとって、一番辛いのは
ご飯とお醤油が、
8日間食べられない事。

パン、ご飯、麺類などが食べられないと
常に空腹に悩まされる。
だから、バナナや芋類を食べて
腹を満たす。

そうして、想い出すのは
零戦のパイロットだった亡き父の事。
物心ついた頃から、
父はバナナが大嫌いだった。
太平洋戦争中、グアムやサイパンで
空腹をしのぐため、イヤと言うほど
バナナを食べた経験を
酔うとよく話してくれた。

それ以来、私にとって
過ぎ越しの祭りは、
17歳の食べ盛りのパイロットであった父の
空腹の苦しみを感じる期間、
となった。

断食中の今、
手を洗うことさえ、ままならない
被災地の方々の辛さを、想っている。

不便や空腹を経験しておく事も
防災対策の一つだと思う。

原爆投下の日や
終戦記念日に
ご飯を絶って、乾パンを食べてみる、
そして、少しでも
当時の苦しみに、近づいてみる、
そんな経験も
大切だと思う。






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