ちょっとしたこと
化粧を初めてしたのは短大生の時かもしれない。
今の子どもたちにしてみれば
すごく遅いかもしれないけど
私たちの時代だとそうでもないかな。
自分の顔と向き合う化粧。
欠点ばかりが見つかっちゃって
そこをどうにか緩和させるのが化粧だと
そんな始まりの化粧生活。
薄い眉毛を濃く太く。
小さい瞳を大きく。
顔色の悪い頬に赤みを。
頬全体に広がるそばかすを薄く。
元々面の顔は厚く
念入りに手入れをしなくても
ニキビにも縁はなく荒れない。
若い頃は外資系の化粧品メーカーのものを
色々試さずずっと使っていた。
結婚して出産育児の最中は
もはや何を使っていたのか
どんな化粧をしていたのか
忘れてしまうくらい自分には無頓着だった。
さて、50代半ば。
自分の顔なんて嫌ってくらい見てきたけど
20代の頃の悩みは可愛いもんで
それとは別の加齢による悩みが浮上してくる。
小さかった瞳は想像以上に垂れ下がり
頬全体にあったそばかすは
今ではシミと相俟って何が何だか分からない。
若く見られたいという願望はずっとなく
人様が見た時にギョッとしないように
濃くなく、薄くもない化粧を
一定のルーティンで施してきた。
仲の良い同年代の
メイクに詳しい友人たちの話を聞き
YouTubeで50代のメイクなどを見たりして
時代により変化するメイクに
やっとこさっとこ追い付こうと
今頃になってやってみたり。
以前使っていた外資系の化粧品メーカーを買うには
電車に乗って行かなくちゃなので
最近では専ら近所のドラッグストアの
化粧品コーナーの女の子たちにお任せするようになった。
先日、基礎化粧品を購入しに行くと
日曜日にしては人出の少ない店内で
販売員の子たちも暇だったのか
私の「チークがそろそろ・・・」
というつぶやきに
「ちょっとメイクしていきませんか?」
と声を掛けてきた。きてくださった笑。
その日はちょっと外出した後で
一応いつものメイクはしていったから
ああ、セーフだ、とホッと胸をなでおろした。
私が仕入れてきたメイクの知識は
一切おくびにも出さず
販売員の子の説明に対して
へぇ~。なるほど。
そっか~。
そうなのね。
と真面目にレクチャーを受ける。
ほんのちょっとしたテクニックは
理にかなっており
そうすることで今風に
そして軽やかにしっとり
顔を造形していく。
「ちょっとしたこと」
が大切だと気が付き
思わず「これって料理と似ているね。」
と言うと
その子は「え?」とキョトンとした顔をした。
そりゃそうだ。
そこで私の職業を伝えると
「ああ~、そうなんですね!」
と納得した様子。
基礎化粧品のやり方や
メイクの仕方。
ちょっとしたことで差が付くらしい。
調理も同じで
水で洗い水気を取らないレタスには
ドレッシングは絡まないように
肉を焼く時は強火で一気に焼かないと
どんどん固くなってしまうように
麻婆豆腐の豆腐は茹でて水分を出さないと
出来上がりが水っぽくなってしまうように。
そういったことを化粧部員のお仕事の中で
お客様にメイクをしながら伝えることで
お客様は理解してきれいになり
気分よく帰ってくれる。
いい仕事だな。
私も調理の中の「ちょっとしたこと」を
一緒に調理することで
おうちで家族のために料理をする方たちに
教えてあげられたらいいな、と思った。
「ちょっとしたこと料理教室」
やりたいな。