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『星の王子さま』と幻の恩師

こんばんは、もこみです。

タイトルだけだと「なんのこっちゃ?」と思われるでしょうが、今日は思い出の本についてのお話です。

手放すことができない本

つい先日、川口竜也さんのこんな記事を読みました。

確かにどうしても手放すことができない本ってありますよね。
私にもそういった本は何冊かありますが、その内の一冊が、この『星の王子さま』です。

『星の王子さま』

『星の王子さま』サン=テグジュペリ著

『星の王子さま』と言えば、言わずと知れたサン=テグジュペリの名作。
そのタイトルを知らない人はいないと思いますが、あらすじをざっくり説明すると…

砂漠に不時着した飛行士の「僕」は、小さな星からやって来た王子さまと出会います。
壊れた飛行機を修理している間、「僕」は王子さまがこれまで旅してきたざまざまな星の話を聞きます。
そして、飛行機の修理が終わった時、2人に思いもかけない別れが訪れます。

『星の王子さま』にまつわる思い出

私の本棚の中でも、ひときわ古くて目を引くこの本。
それもそのはず、昭和42年に発行されたもの。
昭和42年というと1967年、今から55年前です!
実はこの本、私が購入したものではなく、大学時代の教授の蔵書でした。

大学時代、私は文学部だったのですが、私が通っていた大学は、ゼミに入る3年生までは学科を変更することが可能。
元々言語学にも西洋史にも興味をもっていた私は、受験の際に国文学科と社会学科とで悩んでいました。
でもまぁ、ゼミが始まる3年生までに決めればいいや!と思い、ひとまず国文学科で受験しました。

そんな私が1年生の時に出会ったとある教授。
フランス史が専門とのことでしたが、一般教養で西洋史の講義をされていました。
試験などでは厳しい面もありましたが、講義の内容は興味深く、「この教授のゼミに絶対入りたい!」と思い、2年生から社会学科に転科しました。
そして、無事その教授のゼミに入ることが決まった2年生が終わった春休み、それは起きました。
教授の家が火事になり、一家全員が亡くなってしまったのです。

失火により家は全焼。
当時一緒のゼミに入る予定だった友達と、火事の数日後、ご自宅を訪れました。
電車を乗り継いで、最寄駅に到着。
ご自宅は高台にあったので、駅から徒歩で坂道を上っていく内に、最初は風に乗ってふわっと感じる程度だったのですが、近付くにつれ強くなっていく焦げくさい臭い。
比較的新しい、新興住宅地といった町の一角に突如あらわれた焼け落ち、ほぼ骨組みだけになってしまった一軒の家。
強烈な臭いが漂う中、友達と2人、無言で立ち尽くしたことを覚えています。

その後、大学の研究室にある蔵書は処分するとのことで、当時のゼミ生も、欲しいものがあれば持ち帰っていいと言われました。
その時に私がいただいてきた本の一冊が、この『星の王子さま』です。
西洋史の専門書が並ぶ中、場違いにも思えたこの本。
先生がお好きだったのかな、と思うと、処分されるのも忍びなくて、いただいてきました。

結局私たちは別の西洋史の教授のゼミに入り、無事卒業しました。
その教授も良い先生だったのですが、やはり亡くなった先生の指導を受けたかったという思いはいまだにどこかにあります。

大学卒業から現在まで、何度か引っ越しをしましたが、やはりこの『星の王子さま』を処分することはできず、今も私の本棚に並んでいます。
ミステリーと西洋歴史小説ばかりが並ぶ私の本棚の中で異色の一冊。
まるで先生の研究室の中で一冊だけ浮いていたように。
もしかしたら先生もこの本に何か思い入れがあったのかも知れません。
今となっては知りようもありませんが、そう思うと、私が生きている限り、この本は私の本棚に並んでいるんだろうな、と思います。

長くなりましたが、私の手放すことができない本の話でした。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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