【読書記録】異人館画廊
久しぶりに時間ができたので、本を読みました。
選んだのは、買ったものの長らく開くことのなかったこちらの本。
異人館画廊シリーズの第7作、『異人館画廊 星灯る夜をきみに捧ぐ』。
元々小説、その中でもほぼミステリーしか読まない私ですが、このシリーズは少し趣きの違う美術ミステリーと言われるジャンル。
この第7作で第一部完結とのことなので、シリーズ全体を振り返って感想など書いてみたいと思います。
異人館画廊シリーズとは
あらすじ
シリーズのあらすじはというと…
主人公はイギリスで西洋美術史を学んだ少女 千景。幼い頃からイギリスで暮らし、18歳にして博士号を取得した秀才です。
そんな彼女が祖父の死をきっかけに帰国したところから物語は始まります。
祖母が経営する画廊に集まり、美術品の調査や情報集めをするサークル「Cube」のメンバーたちと一緒に、絵画にまつわる謎を解いていくというもの。
図像学と図像術
このシリーズで重要な鍵となるのが、図像学と図像術です。
図像学とは、描かれた図像の持つ意味を判定する学問
とのことですが、全然分かりませんね。
古い西洋美術には、キリスト教やギリシア神話をモチーフにしたものが多くあります。そこに描かれている物や人物の行動には、当時の人々には当然理解できる約束事があります。
ですが、現代の私達には、その意味が理解できません。
そういった約束事を研究し、描いた画家の伝えたかったことを紐解くのが図像学、ということのようです。
一方、図像術とは、絵に描かれた図像が、見た人の深層心理に働きかけて恐怖や不安を増幅させ、最悪の場合死に至らしめることもある。
そういった図像術が使われた絵は“見てはいけない絵” “呪われた絵”として、人目に触れないよう秘匿されてきた、というのです。
ちなみに、図像学は実在する学問ですが、図像術は、作者である谷さんの創作だそうなのでご安心を😊
失った記憶
そして、もう一つ鍵となるのが、千景の過去。
彼女は8歳の時に誘拐事件にあい、それ以前の記憶を失ってしまいます。その事件を機に両親は離婚、千景は祖父母に引き取られることになります。
彼女が忘れてしまった過去、誘拐事件の現場で何が起きたのかが明らかになっていくのもこのシリーズの面白さです。
第7作『異人館画廊 星灯る夜をきみに捧ぐ』
あらすじ
『異人館画廊 星灯る夜をきみに捧ぐ』のあらすじは、
所感
実は前作で、千景の記憶が戻り、誘拐事件の真相はほぼ明らかになっています。
なので、この7作目は記憶を取り戻した千景が、過去の自分と向き合い、どう前に進んでいくのか、エピローグのような位置付けになっているように思います。
このシリーズ、一応美術ミステリーということで、毎回絵画をめぐる謎と千景の過去を解き明かすというミステリー要素が用意されています。
でも、このシリーズには、もう一つ千景の成長の物語という側面もあります。
誘拐事件によって心に傷を負い、自分の殻に閉じこもって生きてきた千景が、Cubeのメンバーたちと関わり、徐々に心を開き、少しずつ変わっていく。シリーズ当初とは別人のようにしなやかな強さを身につけた千景に驚かされます。
これで第一部完結とのこと。千景が選んだ新たな道の行く末、そして幼馴染 透磨との関係がどう進展するのか楽しみです。