トランプが大統領になった日
※ここに書いてある内容は、あくまで個人的見解であり、私自身がどう感じたかに基づくものです。
大統領選、開票日
11月5日、アメリカ大統領選の開票日。もう2か月が経つが、その数日間の感覚が未だに脳から抜けない。あの時の景色が、鮮明によみがえる。
「噓でしょ。トランプが勝つなんて思ってもみなかった。」
翌朝起きて結果を見たとき、口から出た最初の言葉だった。
11月6日、トランプが圧倒的な勝利をおさめた朝。
私はいつも通り、1限目の授業に向かった。クラスに入ると、言葉では表せないほどに、どんよりと曇った雰囲気だった。「あの話題には、絶対に触れてはいけない!」と釘を刺してくるようだった。こんなクラスメイトの表情を見たことがあるだろうか。皆して顔をうつむいているようだった。
一人は早朝から大号泣した後だと言わんばかりの腫れぼったい目をしており、もう一人はあの件について一切考えたくないと言わんばかりに目が点になっていた。
恐る恐る、席に着いた。誰もそのことについて触れようとはしなかった。
いつも議論やディスカッションが盛んに起こるクラスとは思えないほどに、しーんと静まり返っていた。
—悲しみに満ち溢れていた。
新大統領の影響
開票日11月5日のその週も、翌週も、翌々週も、私の心は晴れることがなかった。どうしようもなく不安だった。
アメリカという国にいる留学生として、アジア人女性として、戸惑いが隠せなかった。というより、ずっと支え合ってきたアーラムというコミュニティにいる大切な人たちが傷ついていく姿をこれ以上見ることが出来なかった。
トランプ当選に伴い様々な情報が行き交う中で、留学生が多く、LGBTQIA+の当事者もアライも多い、私たちのコミュニティは不安と深い悲しみの渦に包まれていた。
怖くてたまらなくて教授のところに駆け込んで、抱き合った日。友達と集まって、不安を吐き出し合った日。大学がカウンセリング・精神科・緊急連絡先の情報を一斉メールで送信した日。
—そんな日々が続いた。
私、どうしよう
話が少し変わるが、当初の予定として、私は大学三年の後期は「休学しよう」と考えていた。大学での勉強から一旦離れて、日本で思いっきり踊りたい!と考えていた。でも大統領選を機に、大きくプランが変更した。
休学すると、留学用の(F1)ビザが停止する
休学するということは、大学にある籍を一度停止するということであり、再び復活させるためには、留学生として手続きをしなければならない。
大統領が新しく変わるタイミングで、ビザを停止して休学するのはリスクかもしれない、と大学のスタッフが教えてくれた。(※人の意見であり、事実とは限りません。)
もしビザが取れなくなって、アメリカに戻って来れない場合、大学の仲間と卒業できないかも、というケースもあるかもしれない。そうなったら、私は一生後悔するだろうなと思った。忘れられない景色と大切なコミュニティがある
大統領選を巡る先学期の日々、やっぱり忘れられない。その日々を胸に、休学して日本で暮らし続けることが想像できなかった。私にとって大切なアーラムのコミュニティにいる人たちと、ちゃんと向き合いたかった。(向き合わなければならないと思った、の方が近いかもしれない。)
どうして傷ついたのだろう、アメリカという国で何が起こっているのだろう、そして私に何か出来ることはあるだろうか。
そうして、休学するという選択肢は遠のいて行った気がする。最後は、そこにいる人の温かさで選ぶ
休学しないとなると、私の中での選択は「大学に戻る」か「留学する」かの二択となった。
正直、大学に戻って勉強を続ける気力がない+慣れてきたのもあって新しい環境に行ってみたい。これらがその時の気持ちだった。
残った選択肢は、「留学する」だった。
留学のプログラムとして選んだのは、Border Studies(国境学)。このプログラムでは、アメリカとメキシコの国境について学ぶ。移民の受け入れに厳しいアメリカの立場と、メキシコやそれよりも南にある国々から生きるために必死の思いでアメリカに入ろうとする人々。アリゾナ州にあるツーソンという国境がすぐそこにある街で、国境に関する授業を受けたり、国境での問題に働きかけている会社でインターンしたり、現地の人の家でホームステイさせてもらったり、たまにメキシコ側に渡って散策してみたり。これらを通して、そこいる人々について少しずつ理解を深めていく予定だ。
特に、トランプが大統領になってから政策の一つとして、不法移民の送還や国境の壁の建設再開を掲げている。それが起こる中で、国境付近にいる人々がどのような影響を受けるのか、どのように反応し、生きていくのかをしっかりと見て、向き合っていきたい。
国境付近の現状について知るには、この動画がオススメです↓
最後の最後まで、この選択でいいのか迷った。でも、この留学先にいる人と話したときに「温かさ」を感じた。私が持つ不安に対して真摯に受け止めてくれたり、大量にある質問に対して丁寧に答えてくれたり。ここに行っても、大丈夫かもしれない。そう、思わせてくれた。
そして、今
もうすぐ、日本を飛び立つ。
着いたら、1月20日。トランプが新大統領として就任する日。
やっぱり、怖いなぁ。何がどうなるか分からないという漠然とした不安。
とりあえず、私の手の中にあるものを見落とさないように、大切に愛でながら、今から向かう新しい地でも、生きていきます。