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読書記録|『解像度を上げる』 馬田隆明 著

こんにちは。UI/UXデザイナーを目指して勉強中のmiyuです。
今回は、勉強の合間に読んだ本の読書記録を書いてみようと思います。
ご紹介する本はこちらです👇

解像度を上げる(馬田隆明 著)

本書について

スタートアップ支援を軸に活動を行ってきた著者が、ある対象への認識の精度が高いことを「解像度が高い」状態であるとして、社会に存在する課題とその解決策の「解像度」の上げ方について、様々な面からアプローチを提案する本です。
「課題」と「解決策」に対してそれぞれ「深さ」「広さ」「構造化」「時間」という4つの観点で行動法が整理されており、分かりやすい構造になっています。

なぜ読もうと思ったのか

日常生活の中で漠然と「自分の話ってなんかふわっとしていて、物事を思った通りに人にちゃんと説明できないことが多いなあ」「言いたいことはあるのにまとまらないなあ」という課題感を日々持っていました。そのような中でAmazonのおすすめ欄か何かでこの本を見つけ、クリアな思考を持てるヒントがありそうかも?という思いで手に取ったのがきっかけでした。
正直読む前は、特にスタートアップビジネスのケースを念頭に置いた課題解決の指南を行う本である、という認識はあまりなく、どういうことに気をつければ自分の思考を整理できるのだろうか?という点が気になって読み始めたので、これは若干求めているものと違うかも?と最初は思いました。(本自体に全く非はなく、単純に私のリサーチ不足によるものです)
しかし、読んでいくうちに、これはデザイナー視点ではもちろん、ビジネスをする人として知っておかなければいけない考え方ばかりだな・・・と思えることが多く、周りまわって上記の課題感にもつながるヒントを得ることもできました。

特に印象に残った点

全体を通して、大事だなと思った部分や印象に残った部分をを4つ挙げたいと思います。

1. 行動の重要性

課題・解決策・観点を問わず、本全体を通して、「行動すること」の重要性が繰り返し強調されていたのが印象的でした。サブタイトルに「行動法」と記載があるのもその表れでしょう。
何か解決したい課題がある場合、最小限の内容であってもとにかく手を動かして作ること、そしてそこからフィードバックを得ることでその分野に対する理解をさらに深める、という方法は、多少なりともモノづくりを行なってきた身としては非常に納得感があります。
また、特にデザイナーとして肝に銘じるべきことだと思ったのは以下の引用です。

『誰のためのデザイン?』などで有名な認知科学者ドナルド・ノーマンは「デザイン思考(thinking)ではなく、デザイン行動(doing)であれ(3)」と述べています。デザイン思考はデザイナーの行動様式や規律を体系化したものであり、その中には必ず「作る」プロセスが入るはずなのに、「考える」手法ばかりが注目され、重要な「作る」ところが抜けてしまうことが多いようです。

馬田隆明. 解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法 (p.400). 英治出版株式会社. Kindle 版.

特にUXやコンセプトなど形のないものを考える段階は、時として頭でっかちになることも多いので、手を動かしてものを作ろうとしているか?と常に自問することを心がけたいと思いました。

2. 深く広いキャリアで価値を出す

解決策の解像度を高める方法として、専門性を高める(深める)ことと自分の手札を増やす(広げる)こと、という2つの相対する方法が挙げられていたことが印象的でした。この2つがどのように解決策の解像度を高めるかは本書に詳しく記載があるので省きますが、この視点はキャリアを築く上で大きなヒントになるなと感じました。
一つの専門性を持ちながら、幅広い分野に対する知見を持つ人は、「T字型人材」とも言われますが、そうしたスキルや知識の付け方を意識しておくと、どのようなプロジェクトに携わることになったとしても、解像度高く物事を認識することの助けになるのではないかと思いました。

なお、本書によると使える時間のうち2割を「広げる」ことに費やすと良いとのことです。具体的な数値の提示、ありがたいです。

3. 内化とインプットと

課題の解像度を「深さ」の観点から上げる方法として、「内化」と「外化」を繰り返すことが説明されていました。
「インプット」「アウトプット」と似ていますが、著者はそれらとは少し異なる意図で「内化」「外化」という言葉を使っています。その部分を引用します。

この内化と外化を繰り返すことで、学習は進むと言われています。インプットとアウトプットとどう違うのかと思われるかもしれませんが、内化には内に取り込んで血肉化するニュアンス、外化にはいろいろと試行錯誤しながらこねくり回し、情報が加工されて生み出されるニュアンスがあります。単に内に入れる/外に出すという機械のようなプロセスではなく、血肉化し、生み出すという、人間の認知活動の複雑さを感じていただくために、あえて本書ではこの言葉を使います。

馬田隆明. 解像度を上げる
――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法 (p.151).
英治出版株式会社. Kindle 版.

これを読んで、自分の場合は、「インプット」をしているつもりになっていて「取り込んで血肉化する『内化』」が常に不足しているのかもしれない、と思いました。一番最初に感じていた、クリアな思考ができないという悩みも、内化が足りていないことに起因していそうです。物事を知っているようで知らないので、うまく思考もできないし話せないんだろうなと。
なお、ここでの内化は、インタビューや現場への没入などの行動も伴います。直接課題解決に関係していなくても、もし自分の理解や考えが曖昧だなあと感じたら、物を書いたり現場に赴いたりなど具体的な行動をしてみることも一つの策だと思いました。

また、「構造」の観点から解像度を高める章では、物事を「分け」たり「捨て」たりするやり方が紹介されています。「分ける」ことがうまくいかないと思ったらまずは切り口としての知識を身につけると良いようです。
ここでは、『センスは知識からはじまる』(水野学 著)が引用されており、自身も以前読んだことがあったのですが、切り口や尺度としての知識の重要さをここで再度実感しました

そして知識を身につけるといっても、ただがむしゃらにインプットするのではなく、行動を通して「内化」できるとより知識としての精度が高まるのだろうと思いました。

さらに最近読んだ本に関連づけると『瞬考 メカニズムを捉え、仮説を一瞬ではじき出す』(山川隆義 著)でも、ビジネスを動かす仮説を生み出すために、圧倒的な量のデータをインプットする重要性は述べられています。さらに、自身でデータを入力して(≒行動を伴って)データを「噛み締めること」も強調されています。

コンサルタントになった頃も、色々と集めたデータは、アルバイトの方に入力してもらわず自分で入力するようにしていた。表計算ソフトに入力する際に、データを嚙み締めながら打ち込んでいると、ぼんやりと全体像がわかるからだ。
すべて他人に入力してもらったデータを眺めてみても、大した仮説は浮かばないが、自分で入力していると、全体像が見えてきて、ぼんやりと仮説が浮かんでくる。  同じデータでも、単にディスク上に存在するのと、頭に叩き込んでいるのとでは、仮説を出すうえでは大きな違いがある。

山川隆義. 瞬考 メカニズムを捉え、仮説を一瞬ではじき出す (p.58).
株式会社かんき出版. Kindle 版.

つまり、理想的な「インプット」とは手を動かして「内化」をするまでのことであり、新しい概念を学ぶ際はそこをより意識していきたいなと思いました。

4. ミクロとマクロの行き来

課題の解像度を高めるにあたって、顧客個人レベルの小さな視点と、業界を取り巻くシステムレベルの大きな視点について、同様に重要性が語られていたことが印象的でした。

「深さ」の視点で課題の解像度を高める章では、「症状(市場全体が持つマクロな課題)」ではなく「病因(顧客のもつミクロな課題)」に課題が隠れている場合が多いという点が強調されていました。

ビジネスの世界では定量データの方が客観性が高く分かりやすい、説明しやすいといったような理由で数字を追うタイプの分析が求められるケースが一般的に多いのではないかと思います。もちろんデータから得られるものは大きく、だからこそデータを適切に扱える人の需要も高まっているとは思うのですが、一方で一人ひとりの人間の行動や感情に着目することも求められるスキルになってくるのだなと参考になりました。

一方で、「構造」の観点から課題の解像度を深める章では、システムに着目した考え方の重要性が述べられていました。対象の外にあるものとの繋がりを前提に考えて課題を認識すべき、ということだと思いますが、これには、顧客視点とはうって変わって比較的マクロな視点が必要になるかと思います。

つまり、解像度高く物事が考えられる人はミクロとマクロの行き来ができる人であり、同じ物事を具体的にも抽象的にも捉えられる人なのではないかと思っています。デザインも、抽象的なコンセプト・要件を具体的な意匠・データに落としこむという性質を持っていると考えているため、殊更その重要性を感じました。

次はこれを読まないとなあと何となく思っていたのですが、ちょうどセールやってたので今ポチりました🥳

最後に

ビジネスとはつまるところ全てが課題解決であり、その対価としてお金が回っているものだと考えています。そんな中で、課題と解決策を精度高く認識することは社会という波を最大限楽しく乗りこなす助けになるのではと思います。
本書では、課題や解決策の「解像度を上げる」ための行動法がかなり網羅的に挙げられているので、やることが多い。。。と圧倒される内容でもあります。だからこそ多くの人が現状抱えている課題に対するヒントを何かしら得られると思いますので、興味のある方はぜひ一読してみてください。

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