昭和の風景 レンゲ畑、おまけのおまけ
とあるレンゲ畑でのできごとをきっかけに、「スイカ栽培」を休んで雑文を書いている。その続きというかおまけ。
件(くだん)の農家が種を買ってレンゲを育てていると知ってびっくりしたことも書いたが、肥料としてのレンゲを育てるために種から蒔くのはいまや普通のことらしい。
インターネット上の情報を総合すると、水を張る前の田んぼに自然に生えていたレンゲは1960年代から急激に減ったらしい。
原因のひとつは、田植えの時期が早まったこと。以前は田んぼで育てた苗を手で植えていたものが、この頃から機械植えが始まったことの影響が大きい。
二つめは、化学肥料の使用が増えたこと。マメ科のレンゲは窒素を根に固定するため、田植えの前にレンゲを土に鋤きこんで肥料とする(緑肥)ことで、植物(この場合稲)の生育に必要な窒素を確保できるという利点があるが、化学肥料の使用でレンゲの生育を待ったり、鋤きこんだりの手間が不要になったというわけだ。
三つめは、1980年代に入りレンゲにとっての害虫アルファルファタコゾウムシが海外から侵入し、主に西日本の田んぼのレンゲが大きく影響を受けたこと。
――などなどにより、春になると田んぼにレンゲが生えて花を咲かすというのは、自然な現象ではなくなっているようなのだ。これまたびっくりである。
上に述べた三つめについては、アルファルファタコゾウムシの天敵であるタコゾウチビアメバチが、生物的防除として1988年よりアメリカから導入され、効果を上げているらしい。ただし、長期的に見た場合の生態系への影響は未知数だろう。
二つめについては、化学肥料よりも緑肥が望ましいという観点からレンゲを使うという方向に再転換する農家が増えたようだが、ひとつめとの関係で自然に生えてくるのを待っていては田植えに間に合わない、そのために人の手をかけて前年の秋にレンゲの種を蒔く、ということのようだ。インターネット上でもレンゲの種の販売元も簡単に見つかる。
なんだかいろいろ大変だ。
昭和は遠くなったなぁ、としみじみ思う。