今日のミヨ子さん(93歳の誕生日)

 3月10日は東京大空襲の日なのでおめでたい話題は出しにくいのだが、ここのnoteのほとんどで主人公になってもらっている母・ミヨ子さんの誕生日でもある。御年93歳、やはり、めでたい。

 出生届では昭和5(1930)年の3月10日生まれとなっているが、折々触れてきたように実際はその前の年に生まれていて、本人も年齢の話題になる度に「本当はひとつ多い」と付け加える。

 ちょうど1年前にも誕生日について触れた(「ひと休み(誕生日)」)。つい先月帰省し会ってもきたが、この1年の間に、ミヨ子さんはいろんな意味で相応に弱ってきた印象は否めない。とくに、反応が鈍くなってきたと感じる。ミヨ子さんと話すときは、比較的新しい記憶を遡る必要がある話題、たとえば「先月の帰省の際〇〇に行ったね」といったようなことは、意図的に避けるようになった。

 ひらたく言えば、当たり障りのない話題で会話をつなぐ。あるいは、うんと昔の話題などを振ってみる。往々にして同じような話になるが、いちおう会話としては成立している。それがミヨ子さんにとっていいことなのか、よくわからない。が「覚えてないの?」「それは〇〇だったでしょ?」などとはとても言えない。娘(子供)としては切ないことではある。

 今年も、事前にカードとささやかなプレゼントを送っておいた。贈り物について
「どうだった?」
と感想を聞きたいが、ミヨ子さんがとっさに思い出せず、あるいは言いたいことを言葉にできず、焦ったりしてもよくないだろう。同時に、そんな状態であるという事実を突き付けられるのが怖いという気持ちもある。

 だから今日も、電話で「お誕生日おめでとう」と言ったあとは、当たり障りのない話題に移った。「お母さんのことを大切に思っている」気持ちが通じればいい、と思いながら。


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