文字を持たなかった昭和 続・帰省余話22~温泉でリベンジ!その二

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。

 今度は先だっての帰省の際のあれこれをテーマとすることにして、印象に残ったことのまとめやエピソードに続き、ミヨ子さんとのお出かけを振り返っている。桜島を臨むホテルに泊まり温泉を引いた大浴場で入浴離島住まいのミヨ子さんのいちばん下の妹・すみちゃんも交えてディナーを楽しんだ。翌日、島へ戻るすみちゃんとお別れしたあと、実家近くの古いお墓へお参りに行くもミヨ子さんの脚が動かず、結局二三四(わたし)だけがお参りした。

 実家跡でひとやすみしたあとは、数年前にできたグランピング施設にチェックイン。ミヨ子さんを着替えさせて隣接する「市来ふれあい温泉センター」へ向かう。前回の帰省では入り損ねた、介護湯と呼ばれる家族湯を、今度こそ利用するのだ!

 二人分のタオル類や洗面用具を客室備え付けのメッシュバッグに詰め込み、車椅子を推す二三四。部屋をとったホテル棟は小ぶりで、エレベータ―の乗り降りなど館内での車椅子操作は気を使う。温泉施設への移動も、車椅子を支え乍らのドアの開け閉めに苦労する。

 ともかく、温泉施設に入った。受付で予約ずみの旨を伝え、鍵とエアコンのリモコンを預かり、介護湯の個室の引き戸を開ける。車椅子を使う前提ということだろう、個室内の通路は広い。入ってすぐに畳敷きの小上がり、その先に車椅子に掛けたままで顔が映るよう鏡に傾斜がついた洗面台、奥のサッシ戸を引くと洗い場と浴槽だ。

 介護湯は1時間半の利用を予約してある。初めての浴室で安全にミヨ子さんを入浴させ、二人分の体や髪を洗い風呂上がりのケアまでするのに、1時間ですませられる自信がなかったのだ。料金は1時間1000円、合計1500円だが、ホテル宿泊者は500円オフなので1000円である。

 早速ミヨ子さんの部屋着を脱がせ、バスタオルを敷いた車椅子にもう一度座らせて奥の洗い場へ向かった。

※前回の帰省については「帰省余話」127

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