最近のミヨ子さん 面会規定
(前項「雪の鹿児島へ」はこちら)
鹿児島の農村で昭和5(1930)年に生まれたミヨ子さん(母)の近況の続きである。
入院中のミヨ子さんの容態急変(転院後(4))の報せを受け、強い寒波が日本列島を覆っていた2月6日、わたしは鹿児島へと向かった。
路面凍結により有料道路は通行止め、空港から鹿児島市内まで通常より1時間長くかかり、1時半近くにやっと辿りついた。軽く昼食を取ってから――朝食は食べない派なのでこの日初めての食事だ――JRに乗り継いで、鹿児島中央駅から2駅めの住宅地にあるカズアキさん(兄)宅へ向かう。駅から家まで歩いても5分少々なのだが、途中急な上り坂があることもありお嫁さん(義姉)が車で迎えにきてくれた。
面会は4時。それまで最近の様子などを聞く。わたしはてっきりお嫁さんと二人で病院に行くものと思っていたが、「カズアキさんもそろそろ帰って来るから」。この日はミヨ子さんの夫・二夫さん(つぎお。父)の命日でもあり、カズアキさんは職場の法要休暇(とでも言えばいいのか)をとってお墓参りに行ったらしい。
ほどなくして帰ってきたカズアキさんと、ミヨ子さんが入院している近くの病院へ向かう。病棟に入りナースステーションで受付をする。看護師さんは「一時期より容態が安定したので、大部屋に戻られたんですよ」と言いながら、4人部屋の窓側のベッドに案内してくれた。
看護師さんの説明では――
・低体温ぎみで33~34℃、血圧(上)は140~90くらい。
・点滴は1000ml、容態が悪化したとき100 ml程度だった尿量は650ml程度で改善傾向。
・血中酸素濃度も良好。
・腎機能も比較的安定している。
・呼びかけに反応し、声を出そうとすることもある(声にはならないが)。
看護師さんは「面会は15分ですがこちらから声掛けはしませんので、ご自身で判断して面会を終了してください」と言い残していったん出て行ったあとすぐに戻り、「娘さん(わたし)は遠方から来られたということなので、通常は面会(訪問)者一人につき1週間に1回の面会ですが、1週間後でなくても戻られる前にもう1回面会してもいいそうです。医師の判断でそう言われてます」と付け加えて、再び退出した。
この「面会(訪問)者一人につき1週間に1回」という規定が、わたしにはとても不思議に思われた(いまも腑に落ちない)。外界との接触機会の制限と、患者の負担を減らすという目的のために「患者一人につき1週間に1回」ということなら、なるほどと思う。
あるいは、家族で一人に絞った面会者のみ1週間に1回、というのならそれもわかる。病院によっては「キーパーソン」を一人決めさせ、その一人なら毎日面会に来てもよい、という運営をしているところもあると聞いた。
しかし、ある人物は1週間後、別の人物は翌日来てその1週間後……という運用が可能なら、決まった曜日ごとのローテーションを組んで、家族が別々に毎日面会に来続ける、ということも可能なのだ(ちなみにこの病院は土日祝日でも面会できる)。
面会者の誰かに感染症などが発覚した場合、1週間の間隔があれば、直前の面会実績から対処を考えるということなのだろうか。とても不思議なルールではある。
わたしはこの奇妙な(?)ルールから「融通が利かない病院」を想像していたのだが、ほっとしたのは、看護師さんが親切で病院の雰囲気もよかったことだ。ふだんの看護でも、どの患者さんにも親しく優しく対応しているのだろう、ということが(ある程度)見てとれたのは幸いだった。
さて、いよいよ面会だ。(次は「面会①」)