最近のミヨ子さん(94歳の誕生日)前編
noteを始めて3年目、主人公になってもらっているミヨ子さん(母)の誕生日を迎えるのも3回目になった〈225〉。
戸籍上の出生日は昭和5(1930)年3月10日で御年94歳。ただ、noteに何回も書いているとおり実際の生年は1年早いのでほんとうは95歳だ〈226〉。ただちょうど1年前の3月10日に生まれたのかまでは、本人も知らないようだ。あるいは、認知機能低下に伴い忘れてしまった可能性も、ないとは言えない。
10年ほど前から息子(兄)家族と同居しているミヨ子さんには、毎年の誕生日になしがしかのお祝を贈っている。以前は着るものや使うものなどを選んだりしていたが、あるときお嫁さん(義姉)にどんなものなら日ごろ使ってくれるか尋ねたところ
「着るのはいつも決まってるし、新しいものは『もったいない』って使いたがらなくて、そのうちもらったことやしまった場所を忘れるから、使うものじゃないほうがいいわよ。食べ物がいいんじゃない? 食欲はあるから」
と言われた。それ以降、ミヨ子さんへの贈り物は基本食べる物になった。
今年の誕生日も、季節限定のクッキー詰め合わせだ。スィートピーのパッケージが春らしい。カードを添えて事前に宅配し、誕生日当日に渡してもらうよう、お嫁さんに頼んでおいた。兄たちへのお礼代わりのお菓子も入れて。
誕生日当日の夜、兄のスマホでビデオ通話させてもらう。顔が映るようお嫁さんがスマホを固定してくれた。誕生日のお祝いを伝え、毎年の癖でつい「ほんとうは95歳だよね」と言ったら、会話を聞いていた兄が横から
「余計なことを言うと訳がわからなくなるぞ。今日が誕生日だってことも、何回も言ってもピンと来てないんだから」
と突っ込んできた。
ミヨ子さんとスマホ越しに顔を見合わせて、「うるさくてやだね」というふうに顔をしかめあう。ミヨ子さんは常々息子のことを「細かくてうるさい」と言っているのだ。もちろん、本人がいないところで。
誕生日には、首都圏に住む孫娘からニットのベストをプレゼントされたらしく、それを着込んだ写真は事前に兄から送られていた。その話をひとしきりしたあとで
「わたしからもお祝い送ったでしょ? お菓子だけど」
と振ってみる。一瞬思い出せない表情。
あー、忘れちゃってるのかと少し悲しくなったが
「もらった、もらった。さっきまでお仏壇にお供えしてあった」
と言われほっとする。わたしは
「使うものもいいけど、食べるものがいいかな、と思って。みんなと食べてね」と付け加える。
(後編へ続く)
〈225〉昨年の誕生日は「今日のミヨ子さん(93歳の誕生日)」、一昨年は「ひと休み(誕生日)」で述べた。
〈226〉生年と戸籍の違いについては「四(誕生)」、「ひと休み(戦前の出生届)」で述べた。
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