最近のミヨ子さん 施設入所半年で。
前項の「最近のミヨ子さん」(まだ入院中)で、ミヨ子さん(母)は昨(2024)年暮れに入所していた施設から緊急搬送されたまま、まだ入院が続いていることを述べた。入所していた施設は、お嫁さん(義姉)が年内に退所手続きをし、荷物も引き上げたことも。
ミヨ子さんが入所していたのは鹿児島市の北郊外にある高齢者用のグループホームだった。入所は昨年6月末、入所していた期間はわずか半年だ。しかも入所直後、施設内での新型コロナ感染をきっかけにほかの感染症にかかり体調が悪化、今回同様に鹿児島市立病院へ緊急搬送された。
その後の転院を経て施設へ戻るまで1カ月くらいかかったから、この施設にいた期間は実質5カ月もなかったことになる。
94歳の高齢者がグループホームでの半年の間に2回緊急搬送される。それが珍しいのか、よくあることかわからない。ただ、入所するまで足腰以外はいちおう健康で食欲も旺盛だった。施設内での衛生管理、健康管理は十分だったのだろうか、と疑念を持つのは不自然ではないと思う。
そもそも――これも折りに触れて書いたことだが――グループホームとは本来、ある程度自立生活ができる人が、スタッフの助けを受けながら共同生活する施設だ。車椅子でもハンドルを自分で操作できるならともかく、施設内の移動も人任せのようなミヨ子さんが暮らすのにふさわしい場所だったとは思えない。
当時の状況、すなわち急に脚力が落ちてしまい、トイレひとつも時間がかかるようになったミヨ子さんのお世話を同居するお嫁さん(義姉)がギブアップしたこと、近くで引き受けてくれそうな施設にとりあえず登録した直後思いがけず空きが出て、すぐに入所したこと、などを考えるとやむを得なかったとは思う。
でも、やはりちゃんとした「高齢者介護施設」に入れてあげるべきだったのだ。
さらに言えば、もっと早い段階、例えばミヨ子さんがまだ元気で一人暮らししていた頃に、「将来どうありたいか」を一度でも尋ねておくべきだった。その時点では予想できないこともたくさんあっただろうが、少なくとも本人の意思、希望を知っておけばよかった、といまとても後悔している。
ちゃんと一人暮らしできていたミヨ子さんは、住んでいた家屋の劣化という状況に流されるように息子(兄)家族と同居を始めた。やがて認知機能低下が顕れ、そのうち判断力も衰えて、本人の意思の確認ができなくなった。施設入所もそうだったはずだが(とわたしは思っている)、高齢になってからの急激な環境の変化は、こころにマイナスの影響をもたらしただろう。
その時どきで「しかたないね」とミヨ子さんが受け入れてくれたことは、ほんとうによかったのか。ほんとはそうしたくなかったのではないか。
ミヨ子さんが施設に入ったあと日々の様子がわからないことに対して、わたしは「もう神様に預けた」と考えることにし、それはさらに続いている。でも、まだ存命の実の母親のこと、それもつい最近まで直接会えて、一方的でもまめに便りを送った相手のことを、そう簡単に割り切ることはできない。どうしているのだろう、と日々考えている。
「退院の先には?」で述べたように、転院してもその先自宅はもちろん、施設で「生活」する可能性はない。それをミヨ子さんが肯定的に受け止められるのか、「しかたないこと」と思うのか、考えることすらできないのか。答えが返ってくるはずのない問いを、胸のなかで繰り返す。