最近のミヨ子さん 介護施設入所後、その十三

その十二より続く)
8月11日(日、山の日)。入院中のミヨ子さん(母)へのお見舞いのハガキをレターパックライトに入れて、少し前までミヨ子さんが同居していたお嫁さん(義姉)宛てに投函。

翌12日(月、振替休日)インターネット上でその追跡をし、配達局で配達のために「持ち出し中」であるところまで確認した。

 そのあと用事に紛れて数時間チェックしていなかったスマホを晩ご飯の途中で開いたところ。お嫁さんからメッセージと動画がいくつも着信していた。
「3時からお母さんの面会に行ってきました。看護師さんによれば、日によって違うけど今日は朝昼とも完食した、意外と早く元の介護施設へ戻れるかもしれない、と言ってます」。

 動画からは、お嫁さん以外に、ミヨ子さんの息子のカズアキさん(兄)、そして下の孫娘(姪)の声が聞こえてきた。この子はミヨ子さんが緊急搬送された病院から、いまいる地域の病院へ転院するとき同席してくれた孫娘ではなくその妹で、ミヨ子さんが施設に入るまではいっしょに住んでいた。動画を撮影しているのもこの子のようだった。

 「ばあちゃん、お見舞いに来たよ。わかる?」と孫娘。アクリルのパーテーションの向こうでマスクをつけて横たわるミヨ子さんは、ちょっと首を傾げているので、お嫁さんやカズアキさんがフォローする。

 「ご飯もちゃんと食べてるらしいね」とカズアキさん。看護師さんから先に近況を聞いたのだろう。

 「体を起こせる?」とお嫁さんが聞くと、ミヨ子さんは両腕をついて上半身を起こそうとするしぐさを見せた。「すごい、自分で起きられそうだね」と動画の中が賑やかになる。

 動画はずっとミヨ子さんを写している。「手は動かせる? グー、パー、グー、パー…」と自分でやって見せているらしいカズアキさんの声。彼は体を動かすのが大好きなのだ。それを見ているミヨ子さんも、左手でグー、パーを繰り返す。握ったり開いたりもスムーズだ。「今度は右手でやってみて」。カズアキさんの「指導」は続く。ミヨ子さんの右手はベッドの柵を握っているので、すんなりいかない。お嫁さんが「そんなにすぐにはできないわよ、リハビリのスケジュールもあるんだし」と窘める。

 ミヨ子さんは握った柵をゆすり始めた。柵を外したいのだろうか。外して外に出たいのだろうか。わたしは胸が詰まる。「ベッドから落ちないように(柵を)してあるんだから、揺すっちゃだめだよ」とカズアキさんの声がする。

 もうすっかり点滴などのチューブは外されていて、体もある程度は自由に動かせるようだ。だから逆に、病院側としてはベッドからの転落などには注意しているはずだ。もしかして転落防止のためにまだ身体拘束は続いており、面会の予約時間の前に解除したのかなぁ、と考えたりする。(その十四へ続く)


いいなと思ったら応援しよう!