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最近のミヨ子さん 敬老の日2024(前編)
昭和の鹿児島の農村。昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を中心に、庶民の暮らしぶりを綴ったあと、明治生まれのミヨ子さんの舅・吉太郎さん(祖父)の物語に移った。
合間にミヨ子さんの近況をメモ代わりに書いている。本項では今年の敬老の日(9月16日)について記録しておきたい。
敬老の日を前に、ミヨ子さんが今年6月末から入所している施設(グループホーム)に、入所者宛てに食べ物や手紙を送ったらどう扱われるか問い合わせみた。入所前にも一度聞いたが、入所直後ミヨ子さんが入院してしまい、施設で落ち着いて過ごすようになってからそう経っていないこともあり、再確認したかったのだ。
幸い、現場責任者のケアマネジャーさんと、ミヨ子さん担当のスタッフさんとも話ができた。それらを整理すると――
・食べ物は本人だけにあげるわけにいかないので、おやつの時間などにみんなで分けることになる。
・手紙類は直接本人に渡す。内容を本人が理解しているかまでは確認していない。
・封書の場合開封しないで渡す。入所者にハサミ類を貸すことはない(つまり、封書が届いても本人には開ける手立てがない、ということらしい)。
・読んでも理解できないと思っているのか、手紙類を送ってくる家族はあまりおらず、せいぜいハガキ。封書はいままで一回もない。――などである。
「敬老の日に」と送ってもミヨ子さんにちゃんと伝わらなければ残念なので、品物とカードは、施設に入る前に同居していた息子のカズアキさん(兄)宅に送ることにした。品物は和菓子の詰合せ、カードはコスモスと芝犬をあしらったものだ。裏にはメッセージを書き込んだ。
「カードは開いてから母に見せてやってください」などのこまごました頼み事は、結局お嫁さん(義姉)にお願いすることになる。同居していた頃もそうで、いつまでも申し訳ないと思う。
敬老の日の数日前、わたしの小包が届いた、とお嫁さんからメッセージが来た。カズアキさんからも「敬老の日の4時に面会の予約をしたから」と連絡があった。
そして当日。
面会予約の連絡はあったものの、面会中にわたしにも電話なりで話をしてもらうつもりだとかは言ってきていない。施設に面会室はなく、通常は玄関先で立ち話という形だ(ミヨ子さんは車椅子に座った状態で)。前回の面会はミヨ子さんの自室に入れたようだが、いつでもそれが可能なのかもわからない。
しかし、面会時間まで書いてきたということは「通話してもらう可能性もある」ということかもしれない。4時にはスタンバイしておくのがよいだろう。と判断し、スマホの着信音量を最大にしたうえで待機していた。
4時を少し回ったくらいのその時、ビデオ通話の着信音が鳴った。カズアキさんのスマホからだ。すぐに応答ボタンを押すと、画面にカズアキさんの顔が現れた。どうやらミヨ子さんの自室で面会でき、お嫁さんと二人、差し入れを持って入れたようだ。
カズアキさんは「二三四から電話だよ」と話しながら、ミヨ子さんに会話を促す。「ほら、ここを見て、映ってるだろ」とスマホの画面を見るようにしきりに勧めている。わたしは精一杯手を振りながら「お母さん、元気―?」と会話を始めた。(後編へ続く)