どこかにあったかもしれない一コマ【ワンフレーズレコメンド 1月23日分】
この記事は企画「ワンフレーズレコメンド」の1月23日分のものです。
最高に熱量のこもった文章を生み出すハグルマルマさんが主催してくださったこの企画。
企画概要の上記記事を読んで、どう考えても楽しいし面白いじゃん……!と思い参加をさせていただくことになりました。
前回は夕奈さんのこちらの記事。
UNISON SQUARE GARDENの『to the CIDER ROAD』から抜き出されたワンフレーズと、そこに紐づくご自身の体験を綴られた素敵な記事です。
企画も終盤に差し掛かり、この良き流れに私のものが加わるのも恐れ多いのですが、どうぞゆるーくお付き合いください。
それでは早速、今回私がピックアップしたのはこのフレーズ!(ドドンっ
神様となら昨日話してきたけど
君と話してるほうが
200倍くらい楽しかったな
こちら、UNISON SQUARE GARDENの3枚目のアルバムPopulusPopulusに収録されているミディアムナンバー『僕らのその先』のワンフレーズ。
要約すると「け、けなげ~~~!」という感想なのですが、それだけではつまらないのでもう少し推しポイントを書き連ねてみようと思います。
昨日話してきたけど
「神様はいるよ」とか「神様なら会ったことあるよ」ではなく、「昨日話してきた」んですって。「前に話したことがある」でもなく、“昨日”というところに「そうそう、そういえばちょうどさ」みたいな気軽さが感じられてほっこりできるポイント。
200倍くらい
続いて、神様と話すよりも君と話すほうが楽しいって、そんなのもう絶対好きじゃん……。しかも10倍でも100倍でも1000倍でもなく200倍なんですよ。そこが口語的であり、リアルさもあり。
音数とか響きで言うとたぶん500倍が次点でしっくりはくるんだろうけれど、それだと大袈裟だし、かと言って150倍とかいう半端な数字だと主人公の発言として狙いすぎてる感もある。さらっと、思わず心の声がぽろっと溢れ出た感を出すには“200倍”しかない。ないですよね?
楽しかったな
そして最後の「楽しかったな」の「な」に主人公の優しさと、この台詞が本心から出た言葉であることが凝縮されていると思うんです。「楽しかったよ」ではなんだか上滑りするというか、わざわざ報告している感じが出てしまうというか。押しつけがましくない語尾がとても心地よく収まりもよく、とにかく満点です。
ここでもう一度フレーズの全体を確認してみましょう。
神様となら昨日話してきたけど
君と話してるほうが
200倍くらい楽しかったな
うん。良すぎる。
そしてそして、ここからが一番書きたかったことなんですが、このフレーズを聴くたびに、知りもしない高校生たちの帰り道の様子が頭に浮かんで仕方ないのです。もしかして今日もどこかでこんなありふれた、けれどかけがえのない物語の一コマがあったかもしれないと思うと、妄想が捗ること捗ること。
そう、それは例えばこんな物語。
***
新型ウイルスの猛威はなかなか収まらず、僕たちの学校も自宅学習と分散登校を交互に繰り返している。
「意味わかんない。……いや、わかってるんだよ。こんな状況じゃ無観客でも大会やるのは難しいってことくらい」
久しぶりの対面授業の帰り道、隣を歩く君は悔しさを隠そうともせずに話し始めた。
「でも、でもさ。なんでよりによって私の代なのって思っちゃう。ずっとバレーだけしてきてこの大会にかけてきたのに。今のチームでやれるのも最後なのに」
高校に入学してから3年間同じクラスだった君。部活に一生懸命で、いつも仲間に囲まれて、誰にでも分け隔てなく笑顔を見せる、ちょっと強気な君。そんな君の姿しか知らないけれど。
「ちょっと、聞いてる?」
歩みを進める先に見える影をぼんやり眺めて相槌も打たずにいる僕に、怪訝な眼差しが向けられる。
「あ、ごめん、聞いてるよ。そうだよね、僕もそう思う」
視線を戻した君が続ける。
「神様って本当にいるのかな。いるんだったらもうちょっと考えてほしいよね、こんなウイルスなんてどうにかしてさ。もし神様に会えるんなら直談判してやりたい」
はぁ、と大きくため息をつき、しばしの沈黙を挟んだ後に聞こえた鼻をすする音に、僕は少なからず動揺してしまった。だって君は涙の似合うような人じゃない。
慰めなんていらないかもしれない。けれど、この沈黙が物語る君の抱えた悔しさややるせなさを、少しでも軽くしたかった。
だからなにか、なにか言わなければ。
「えっと、その、神様となら昨日、話してきたけど……。君と、話してるほうが200倍、くらい、楽しかったな」
きょとんとしてから泣き笑いを見せて彼女は言った。
「なにそれ」
***
あとがき
最後までお読みいただきありがとうございます。どこまでいっても自己満足だけれど、好きな曲を聴きながら好きに文章書くのは最高です。
妄想劇場は異論認めまくりですし、一曲通して解釈こねたらまた違った物語になりそうだなあ、なんて考えることも楽しみながら書きました。
主催のハグルマルマさんに改めて感謝申し上げます。
次回は1月25日、抹茶ミントさん(@greentea_usg)が担当してくれます。
どんな言葉が紡がれていくのか、1月25日が待ち遠しいです。
それではっ!