各都道府県の大企業従業者比率の推移を簡単に確認してみた件。アベノミクスは労働生産性の高い大企業を地方から引き上げただけだったのではないか、という話。
この Note では折に触れて、「宮崎県は大企業従業者比率が低い」、ということを言及してきたのですが、それは2016年の国勢調査の結果をもとにしたものでした。
181130kigyou2.pdf (meti.go.jp)
このデータの各都道府県の「大企業従業者数」を「規模合計」を割った数字を基にしてそういうことを言ってきたわけです。
このデータが昨年の末には更新されていたのですが、ちゃんとチェックしていなかったので軽く確認してみました。
231213kigyou1.pdf (meti.go.jp)
大企業従業者比率を計算したものを一番右に追加して2016年と2021年の表を比較できるように画像にしておきました。
2016年から2021年にかけて、全国としても大企業従業者比率は31%から30%に下がっています。全体的に減少しているのですが、特に地方の落ち込みが大きくなっています。
2016年も2021年も、圧倒的に全国で大企業従業者比率が一番低いのは鳥取県です。
大企業従業者比率が2016年でも圧倒的に少ない 5%台であったものが、2021年にはなんと3%台になっています。
鳥取は、典型的な保守王国で鳥取1区は石破茂氏、県知事は東大卒の自治省出身の全国県知事会の会長も努めた平井知事が5期も県知事をやっています。
与党の大物がいて地方創生大臣を経験しても、自治省出身の知事が全国の知事会ででかい顔してても、地元が全然発展してねぇ、むしろ全国で一番衰退してるじゃねーか、と言いたくなりますね。
2016年も2021年も大企業従業者比率が2番目に低いのは、奈良県なのですが、これは県として大阪と京都という大企業が多い地域への通勤が可能な県ですから、他の下位の県とは切り離して考えてよいだろうと思います。
それでも、奈良県内の大企業就業率は大阪などへの統廃合が進んだのか、4%台にまで落ち込んでいます。
2021年のワースト3には長崎県が入ってくることになりました。これはおそらくは、長崎の銀行が福岡の銀行と合併し合理化が進んだことが大きな要因であろうと思います。長崎県には2021年現在で上場企業の本社がなくなっています。
我が宮崎県は2016年はワースト3位で 6.91%あったものが、2021年はワースト4位と順位は変わったものの、数値は悪化し 6.01%になっています。
2016年には総従業員数が 263831人 で 2021年には 258088人で 5743人の減少であるのに対して、大企業従業者は 18226人から15502人と2724人も減少しています。労働者の減少分のほぼ半分は、数%しかいないはずの大企業従業者の減少であることが分かります。
アベノミクスの間には、宮崎からは本当に多くの銀行の支店や大手企業などが数多く撤退していきました。2021年の調査後も撤退した企業もありますし、BPRやPERが全国でもワーストレベルの銀行の統廃合などもまだ行っていないので、実質は長崎よりも経営基盤が安定した企業は少ない状況のはずです。
結局、鳥取県と同様に「他県出身の自治省役人」の河野俊嗣宮崎県県政や保守王国と呼ばれる宮崎自民は、既得権者のJAや地元の零細中小に利益誘導をしているだけで、次の世代のための産業振興政策は全くやってこなかった、と言い切ってよいのではないか思います。
その他、全体的には東日本の東京一極集中が進んでいるため、一番西にある九州の福岡以外の県の大企業従業者比率の低下が目立ちます。熊本は TSMCの工場が2つもできますから、これから反転はするでしょうが。
昨日 2024年の3月の日銀の金融政策決定会合で、17年ぶりにゼロ金利政策が見直され、明確にアベノミクスも終わったという感じになっています。
個人的な感想としては、アベノミクスとは金融緩和で大都市の大企業がウェイウェイ言っていただけで、地方の支店、営業所などは「合理化」という名目で引き上げることで株価を上げ、余ったお金は「地方の生産性の低い既得権者」が美味しく頂いていただけだったと思います。それが最近噴出している裏金問題などにもつながっていると思います。
アベノミクスの間、若年非正規労働者が非常に増えたということもデータとしては明らかなことです。
本当の好景気であったのであれば、日本全国様々な地方で新たな産業の萌芽があり、大企業も増えていなければおかしいはずですが、むしろ地方は人口が減少し、経営基盤の安定した民間大企業の従業者から先に消失がすすんでいます。
例えて言うならば、タコやイカが、自分の足を「うまいうまい」と食べ尽くしていたら、気づいたときにはいつの間にか足が機能しなくなり体が小さくなっていた、というような感じでしょうか。
最近になってようやく中堅企業のサポートが取りまとめられましたが、こういった施策が効果を表すためには10年単位以上の長い期間がかかるだろうと思います。
宮崎県は、いわゆるソンビ企業が全国で最悪レベルで多い県でもあります。今年の1月、2月は宮崎県内の負債が1000万円以上の企業倒産は、件数としてはそれぞれ4件だったのに、負債総額は4.5億、12億とびっくりするぐらい膨らみ始めています。
個人的には以前から 潰すべき企業は、早めに潰さないと地方経済はもっと悪くなるんじゃないのかな と思っているので、早期の宮崎の再生のためには来年、再来年というレベルでの地域経済のハードランディングも止むを得ないのではないか、と思います。