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九舎耳(くしゃに)
2020年9月17日 17:29
一円玉は絶望の雄叫びを上げた。「誰かおらぬか! いたら救出してくれ!」 叫んでもどうにもならなかった。それもそのはず、一円玉は暗くて狭い路地に横たわっていた。財布からポロリと落ちてからどれくらい時が流れたことか。雨の日もあった。雪の日もあった。風の強い日もあった。誰も拾ってくれない。それどころか誰からも目も合わせてもらえない。「おかしいじゃないか。俺様を誰だと思っているんだ。一円玉だぞ。俺