九舎耳(くしゃに)

①玉ねぎの皮をむきつづけている人。②影を味わっている人。③ゴミをコレクションし、メロディーに変える人。

九舎耳(くしゃに)

①玉ねぎの皮をむきつづけている人。②影を味わっている人。③ゴミをコレクションし、メロディーに変える人。

マガジン

  • 野人の手記(原稿用紙200枚)

    管理社会に適応できずに山の中で一人サバイバル生活をする野人(イエティ)が、近未来の世界に連れられた。が、そこはさらに無機質な管理社会だった。

  • 夜空のざわめき(原稿用紙200枚)

    過去の親友に偶然再会した純之介は、自分の過去がスッポリ抜け落ちていることに気づく。抜け落ちていた過去を探っていくと、恐ろしい事実が発覚していく・・・・。

  • 忘れびと(原稿用紙150枚)

    苦学生で弱気な正太朗君が、奇妙な詩人に会うことで成長していく物語――。

  • 短編小説集(原稿用紙20枚から150枚)

    1.とおりゃんせ(経済発展によって行き場を失う霊性の物語)  2.一円玉の歌(落ちている一円玉にまつわる都市伝説)   3.ムシの多いレストラン(現代社会で忌み嫌われる虫。虫の正体とは・・・・) 4.笑顔のエンマ銀行(1年間無利子、時間返済もできる神銀行)

  • 鳥の啼く人生(原稿用紙250枚)

    尺八を吹く以外何の取り柄もない社会不適応の主人公(ノリホ)だが、未開民族と接したとき意外な力が発揮された。言葉ではない他者とのコミュニケーションと運命性の物語。

最近の記事

近代日本人・偉人生没年譜

【 慶応元年(1865年)】 夏目漱石(文学者)  1867年(慶応3年)生まれ 49歳没 南方熊楠(博物学)  同年生まれ        74歳没 ~戊辰戦争 1868年~ 【 明治元年(1868年)】 鈴木大拙(仏教学)  1870年(明治3年)生まれ 95歳没       出口王仁三郎(宗教家) 1871年(明治4年)生まれ 76歳没 柳田国男(民俗学)  1875年(明治8年)生まれ 87歳没 ~西南戦争 1877年~  植芝盛平(合気道開祖)  1883年(明治16

    • 忘れびと

         一  ぼくはどこまでもつづく泥の湿地帯を歩いているような気持ちでした。夢であって欲しい、幻覚であって欲しい。それは現実に突きつけられたことでしたが、ぼくは信じられませんでした。 『給付型奨学金の停止』  貧乏学生のぼくにとってそれは衝撃的な勧告でした。一瞬目の前の視界が暗くなり、心臓を直にギュッと握られたような気持ちになりました。しかし考えてみれば仕方のないこと、この数か月ぼくは授業を欠席することが多くなり、単位をいくつも取り損ねていたのです。“自業自得”とはまさにこう

      • 夜空のざわめき【中編ホラー小説】

                                    一   朝の空気がうっすらと残る琵琶湖を眺めた。湖面に朝日が眩しく反射し、俗界の音を吸収したかのようにひっそりと静まっている。秋の冷気がやさしく吹き抜けて純之介の前髪を小さく揺らした。 ――今、自分は存在している・・・・。  何だか不思議な気持ちである。日常の環境から離れたとき、普段と違った脳の回路が開くのだろうか。深く呼吸しながら大地のエネルギーを足裏から感じ取り、ここに立ち寄ってよかったとしみじみ思った。  伊島純之

        • チベットのサーカス団(短編小説)

          「ジョン!」  大きな声が聞こえたような気がしました。ぼくはトロトロとした夢の中にいて、その声をはっきりと認識できませんでした。 「さっさと起きるんだ!」  ゆっくりと目を開けると、鼻の先に四郎さんの頑丈そうな足が見えました。 ――パシッ  その瞬間、竹のムチが背中にとんできました。 「キャイーン!」  ぼくは悲鳴をあげて跳ね起きました。 「散歩だ」  怖い顔をした四郎さんがぼくの首輪にリードをつけてきます。 ――ああ、散歩か・・・・。  空を見上げると雲一つない青空、なんと

        マガジン

        • 野人の手記(原稿用紙200枚)
          1本
        • 夜空のざわめき(原稿用紙200枚)
          1本
        • 忘れびと(原稿用紙150枚)
          1本
        • 短編小説集(原稿用紙20枚から150枚)
          5本
        • 鳥の啼く人生(原稿用紙250枚)
          1本
        • ガルーダの飛翔3部作(原稿用紙400枚)
          3本

        記事

          笑顔のエンマ銀行(短編小説)

             一  この日も閻魔大王の前には長い列ができておりました。殺人、強姦、盗み、嘘、隠蔽、改竄――、自己利益の増大を図らんとするためにエゴを強めた罪人たちは、死後、閻魔大王の裁きを受けなければなりません。 「判決、地獄の刑、百万年。――次」  閻魔大王から実刑判決を受けた罪人は、鬼の獄卒にガチリと腕を掴まれ、三叉路の『地獄』と記された方の通路へ引きずられるようにして連れて行かれます。そんな地獄の通路の奥からは、罪人たちの悲痛の叫び声が四六時中響いてくるのでした。 「――最近ど

          笑顔のエンマ銀行(短編小説)

          猫ごころ日記(童話)

            ◯月◯日   明日はゴミの日なので、夜にママとゴミ出しに出かけた。ゴミ捨て場に着くと、ゴミの山からミャーミャーと声が聞こえた。「何だろう?」と思って声の聞こえるダンボールを開けてみたら、一匹の子猫がいた。白と黒と茶が混ざり合った三毛猫だ。ダンボールから出して手の平にのせると、小さい体がプルプル小刻みにふるえ、「ハクション」とクシャミをした。寒いのだろうか。 「ママ、どうする? このままここにいると死んじゃうよ」 「でも、家に猫ちゃんが三匹いるからね。かわいそうだけど・・

          猫ごころ日記(童話)

          星くずのトウメイ虫(童話)

           にぎやかな夏祭り、神社前の通りには色とりどりの露店が、ーー金魚すくい、リンゴあめ、綿あめ、たこ焼き、カステラ、串カツ、焼きそば、輪投などがズラリと並んだ。 「何を買おうかなあ」  ケンとハナの兄妹は両親から千円のお小遣いをもらった。二人は手をつないで露店を見て回っている。 『世界で一つだけのペット』  露店の名前が目に入った。ペットといってもヒヨコやウサギがいるわけでない。地べたに小さな植木鉢が並び、テーブルに空っぽのプラスチックケースが置かれているだけだ。 「何の雑草?」

          星くずのトウメイ虫(童話)

          12歳のブー学者(童話)

          「ブヒー」  授業中の教室で大きな音が響いた。クラスメートのみんなは鼻をつまんでブースケの方をいっせいに振り向いた。ひょうきん者のブースケは「グフフ」と含み笑いをして、「まいったか」と言った。教室にはクククという小さな笑いが起きた。 「ブースケ、音だけじゃなくて、ミまで出したんじゃないだろうな」  ブースケの後ろの席の男子生徒が言った。 「どうだろう・・・・」ブースケはトボけたように言って立ち上がり、「ちょっとズボンのお尻見てみてくれよ。汚れてない?」  男子生徒がお尻に顔を

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          猫語スクール(童話)

           ぼくは猫が大好き。この日も陽の当たるリビングで飼い猫のメルと遊んでいた。メルはサバ白の猫で、やわらかな毛がふさふさしている。外に出たいときは引き戸の前で「ニャー」と鳴き、ご飯が欲しいときは体をすりよせてきて「ミャー」と鳴く、とってもお利口さんの猫だ。 「ケンちゃんーー」ママが声をかけてきた。「英会話の時間よ。用意してあるの?」 「うん・・・・」  ぼくはメルの背中をなでながらやる気のない返事をした。 「お前はいいなあ。学校も試験も何にもなくてさ。おれも猫になりたいよ」  メ

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          おしえて、ピーちゃん(童話)

           どうぶつたちは山道をあるいていた。タヌキのポンスケ君、ネコのミャオちゃん、ウサギのピョンちゃん、ウシのムームー君。みんなフクロウのホーホー先生の弟子。ある日、ホーホー先生はとつぜん、いなくなった。『白い山へ、さようなら』と、てがみをのこして。どうぶつたちは、そんなホーホー先生をさがしに、白い山へむかっていた。 「つかれたなあ。もうそろそろ休もうよ」  ウシのムームー君が言った。ムームー君は体が大きいのですぐにつかれてしまう。 「ムームー君、さっき休んだばかりでしょ。もう少し

          おしえて、ピーちゃん(童話)

          365日の天使ノート(童話)

           学校の帰り道、ケンがランドセルをしょって商店街を歩いていると、『閉店セール 大安売り 全品半額』という看板が目に入った。 「何の店だろう?」  店をのぞくと、古びた文房具屋だった。 「こんなところに文房具屋があったんだ・・」  ケンは店に入って商品を眺めた。大きな店だが、並んでいる商品は昔のものばかりである。興味深げに歩き回っていると、店の奥の暗がりで分厚い一冊の本を発見した。透明のビニール袋に入れられた黒い本。 「何だろう? 百科事典かな?」  ずいぶん長い間売れ残ってい

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          カラスのパン屋さん(童話)

          「美味しいパンだよー、焼き立てのパンだよー」  パン屋のおばあちゃんの声が聞こえた。よく通る声なので、うちの中にいてもその声が聞こえてくる。暑い日も寒い日もいつも黒いマントを羽織っているちょっと変わったおばあちゃん。そんなおばあちゃんはリヤカーいっぱいにパンを積んで、今日も近くを売り歩いてきた。  おばあちゃんの声を聞きつけたケンはママに駆け寄った。 「パン屋のばあちゃんが近くに来てるよ。買ってくるからお金ちょうだい、早く!」  おばあちゃんのパンはフカフカしていて香ばしくお

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          ぼくのペット/トッぺはくぼ(童話)

           先週、太郎は家族とともに新しい町に引っ越してきた。この町は、大型ショッピングセンターがあれば静かな湖や森があり、町の賑わいと自然の両方が楽しめる。太郎はこの町のことがすぐに好きになった。  青空が広がる日曜日の朝、太郎は愛犬・柴犬のマルと一緒に町の散策に出かけた。 「マル、出かけるぞ」  太郎は庭の犬小屋にいるマルに声をかけた。マルは大はしゃぎで飛びつき、シッポをせわしなく振った。  「マル、落ち着け、落ち着けったら」  太郎はマルを家の中で飼いたかったが、ママがノミが湧く

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          愛と根性のシューアイス(童話)

          「おばあちゃん、全然食欲がないんだって」  仁はママから聞かされた。 「え、本当。大丈夫かなあ」  仁はばあちゃんのことが心配になった。仁にとってばあちゃんは、いつもやさしくしてくれる大切な存在だった。 「暑い日がつづいているからなあ」  今年の夏は、年寄りでなくてもグッタリしてしまう暑さだった。 「よしっ、オレはばあちゃんのところへお見舞に行く――」仁は声高らかに言った。「冷たいシューアイス持ってさ。ばあちゃん好きでしょ。そうすれば絶対ばあちゃんはよろこんでくれて元気になる

          愛と根性のシューアイス(童話)

          女王さまと山男(童話)

                  ※文章は五、七調で書かれています。  お見合いおわった女王さま、侍従のじいやにかみついた。 「やいやいじいや、バカじいや、どうして馬ズラつれてきた」 「何なんですか、女王さま。そんな汚いお言葉を、つかいになっちゃ困ります。先代王さま、王妃さま、天からお泣きになられます」 「やいやいじいや、バカじいや、そんなことを問うてない。見合いの男のことを言う」 「何なんですか、女王さま。きてくださった男性は、ゆいしょ正しきお生まれで、教養あってご親切。なのにどうしてそん

          女王さまと山男(童話)

          野人の手記(小説)

           おれは死に憧れている。いますぐ死にたいとも思わないが、ダラダラ長生きしようなんて雨露の欠片ほども思ったことがない。長生きは下品だ。いや、長生きを目的に生きるのは下品だ。できるなら潔く死にたい。いや、自分の死を悠々眺めながら死んでいけるほどの潔さを身に着け、大地に溶け込むように死にたい。昨今の家畜化した世の中、生ばかりが賛美され死が遠ざけられるが、生とはそんなにきれいなものなのか。死こそが生きる希望じゃないのか。  が、そう言うと思慮の浅い輩はすぐに「自殺を推奨するのか」、

          野人の手記(小説)