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ガルーダの飛翔 第一部 幻を奏でる鳥(長編小説)
一
弦太郎は空を見上げた。上空は鉛色の雲に覆われ、湿気をともなった強い風がピューと身体を通り抜けていった。風に舞い上がった砂塵と一緒に路上に捨てられていたポリ袋が、小動物が走り去るように目の前を吹き飛んでいった。
「こりゃ、ひと雨きそうだな」
弦太郎は病棟からバイクの停めてある駐車場へ足早に向かった。急げば濡れずに帰宅できそうである。バイクにたど
ガルーダの飛翔 第二部 吹き抜ける呪術師(長編小説)
一
早朝の山寺はうっすらと白い靄に覆われ、小鳥たちのさえずりがこだましていた。
――ガルーダが祝福してくれた。
弦太郎は嬉しくて仕方がなかった。苦しい修行の末、とうとう呪術師に到達したのだ。胸の内に自信と誇り、そして優越感が芽生えていた。
「師匠、これからどうしますか?」
弦太郎は自信にみなぎった表情で師匠のタムに言った。
「お前は
ガルーダの飛翔 第三部 夢の見た夢、扉の向こうの扉(長編小説)
一
激しい雨が降りつけ、落雷が大地を震わせた。
二頭の白い龍はらせん状に絡み合いながら猛スピードで鉛色の空へ上昇してゆき、熱せられた白く輝く太陽の中に吸収されていった。
龍の姿が見えなくなると、大地に深閑とした静寂がおとずれた。暗い空の隙間から青空が顔を覗かし、眩しい陽光が大地にまっすぐに差した。小鳥がさえずり、花が開き、蝶が舞った。生命