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米国の大学の思想弾圧を行うトランプ大統領 -米国は「自由の国」ではなくなった
トランプ米大統領は首都ワシントンDCで起きた航空機事故について、「連邦航空局(FAA)が知的障害者や身体障害者らを積極的に雇用していた。考えられないことだ。頭が良い天才にしかできない仕事なのに。」などと主張した。1期目政権時代よりいっそう精神的に破綻している様子だ。
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そのトランプ大統領は29日、米国の大学でパレスチナ支持の運動に参加した外国籍の学生を国外追放する大統領令に署名した。これは、イスラエル批判やイスラエルへのBDS(ボイコット、投資撤収、制裁:Boycott, Divest, and Sanctions)を反ユダヤ主義として大学から排除することを目指すものだ。「合衆国 においては連邦補助金を受ける事業を行う上で何人に対しても人種、皮膚の色、出身国(nationality)などの理由で排斥や恩給否定などの差別行為を行うことを禁じる」という1964年公民権法第6編の「出身国」の中にユダヤ教を含めることになったのが、トランプ氏の大統領令だ。
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今回のトランプ大統領の措置は、特にアナキストの外国人たち約500人を国外に追放した1920年前後の「パーマー・レイド」を彷彿させる。アレキサンダー・ミッチェル・パーマー司法長官(在任1919年3月~21年3月)の指揮のもとレイド(襲撃、強制捜査)が行われたが、その捜査の対象となったのは特に左派とのつながりが疑われたイタリア系移民と東欧系ユダヤ人移民で、また特にイタリアのアナキストと移民左派労働活動家に焦点が当てられていた。家宅捜索と逮捕は、パーマー司法長官のリーダーシップの下で行われ、36都市で6,000人が逮捕され、多くの著名な左翼指導者を含む556人の外国人が国外追放されたが、パーマーの措置は、外国人の国外追放の権限を持ち、パーマー司法長官の手法に反対した米国労働省の官僚たちによって停止されることになった。
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パーマー・レイドは、現在では国際連盟の創設に貢献し平和主義者とも見なされるウッドロー・ウィルソン大統領(任期1913年3月~21年3月)の構想が背景になっていた。ウィルソン大統領は1915年、「不誠実の毒を国民生活の動脈に注ぎ込んだハイフン付きの米国人(Japanese-Americanのように移民系の米国人)」に対して警告を発し、「不誠実、無政府状態のような生き物は潰されなければならない」と述べた。さらに1917年のロシア革命は、労働者のアジテーターや、アナキズムや共産主義などのイデオロギーの政治勢力に対する恐怖を米国政府にもたらした。ウィルソンは実はトランプのような人種主義者で、プリンストン大学の学長時代(1902~10年)には、黒人学生の入学を拒み続け、KKKのような白人史上主義者を称えていた。
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トランプ大統領は29日、ホワイトハウスでのユダヤ教徒の光の祭り「ハヌカ」のレセプションで「毎年受け取る膨大な連邦政府資金を(大学が)受け入れたいのであれば、反ユダヤ主義を排除しなければならない。とても単純なことだ。」と述べた。
リベラルなユダヤ系米国人団体「ベンド・ザ・アーク(Bend the Arc)」は大統領の主張に異議を唱え、「トランプ氏はユダヤ人を擁護しているのではなく、学生活動家やイスラム教徒、有色人種を攻撃するための武器として我々を利用している」と述べた。同団体は「反ユダヤ主義を容認しているのはクシュナー氏だ。彼はシャンダだ」とX(ツイッター)に書き込んだ。
「シャンダ」とはかつて使われていたユダヤ人の言語イディッシュ語で「不名誉」を意味する言葉だ。イスラエルのピース・キャンプに共感するロビー団体の「Jストリート」は声明で、トランプ大統領の命令は「反ユダヤ主義と戦うというよりは、言論の自由を萎縮させ、大学内でイスラエルを批判する人々を弾圧することを目的としているようだ」と述べた。
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米国の大学では1月初めに新学期が始まったが、親パレスチナ学生運動に対する数ヶ月に及ぶ抑圧にもかかわらずコロンビア大学などでは依然としてイスラエルへの抗議活動が行われた。バーニー・サンダース上院議員が言うように、イスラエルのガザへの非人道的な攻撃を非難することは反ユダヤ主義でも親ハマスでもない。
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米国の反シオニスト・ユダヤ系団体のJVP(Jewish Voice for Peace)は声明で「これは、恐怖を植えつけ、米国が支援するイスラエルによるガザ地区のパレスチナ人虐殺に対する政治的反対意見を抑圧し、極右のより広範な反移民政策を推進するための卑劣な試みだ」と述べた。言論の自由を擁護する団体「個人の権利と表現のための財団(Foundation for Individual Rights and Expression)」は、「我が国の高等教育制度の強さは、不人気なものや反対意見も含め、幅広い意見の交換から生まれる」と述べているが、トランプの措置は米国の強さの源泉を奪うようなものだ。
表紙の画像は「我々の世代でパレスチナ解放」
イェール大学
https://www.bbc.com/japanese/articles/cd1dg2z9v11o