アンジェリーナ・ジョリーのガザ攻撃告発と、イスラエル軍のヨルダン川西岸攻撃は暴力の増幅を生む
ユダヤ人の影響力の強いハリウッドの映画界にあって、俳優がイスラエルを批判するのは勇気のいることだが、女優のアンジェリーナ・ジョリーは明白にイスラエルのガザ攻撃を非難するようになっている。彼女はインスタグラムに下のように書き込んだ。
「これは、逃げ場のない閉じ込められた住民に対する意図的な爆撃です。ガザは20年近くにわたって天井のない監獄として放置されており、急速に集団墓地となっています。殺害された人々の40%は罪のない子どもたちです。家族全員が殺害される場合もあります。世界が注目し、多くの政府の積極的な支援を与えながらも、何百万人ものパレスチナ民間人(子供、女性、家族)が集団的な「処罰」を受け、非人道的な扱いをされ、その一方で、国際法に反して食糧、医薬品、人道援助が奪われています。イスラエルは人道的停戦の要求を拒否し、国連安全保障理事会が双方に停戦を課すのを阻止することで、世界の指導者たちはこれらのイスラエルの犯罪に加担していることになります。」
8月31日、イスラエルのスモトリッチ財務相は昨年10月に始まるガザでの戦争に680億ドル(9兆8000億円)かかったと述べた。2024年予算が約5,820億シェケル(約22兆6,980億円、1シェケル=約39円:ジェトロより)だから一年の国家予算の半分近くをガザでの戦費に用いたことになる。
ネタニヤフ首相は、国内での停戦を求める圧倒的な声があるにもかかわらず、ハマスを壊滅すると語り、戦闘を継続する姿勢でいる。莫大な戦費がかかっているが、極右のスモトリッチ財務相には戦争を抑制する姿勢がまるで見られない。
さらにイスラエルの戦費の負担が増すように、ガザでの戦争が継続している間にヨルダン川西岸の情勢が悪化している。ヨルダン川西岸は1967年の第三次中東戦争以降、イスラエルが占領しているところだ。イスラエルは8月28日に西岸北部のジェニン、トゥルカレム、またファーラ難民キャンプを攻撃するようになり、攻撃は激しさを増すようになっている。パレスチナ保健省は8月28日以来、9月4日までの間に33人が死亡、130人が負傷したと発表した。16歳の少女も射殺されている。ジェニンでは水道水の80%が使用不能になった。
イスラエルの軍事作戦は8月18日にテルアビブで発生した自爆攻撃未遂事件に対する報復として行われている。イスラエル軍の攻撃に対してパレスチナ人も暴力をエスカレートするようになり、8月30日にはヨルダン川西岸のイスラエル人入植地グーシュ・エツヨンで、二つの自動車爆弾が炸裂した。イスラエル人2人が負傷して病院に搬送された。
ヨルダン川西岸のパレスチナ人の若者たちは貧困と人権侵害に置かれ、武装集団に入ることを余儀なくされている。ヨルダン川西岸のパレスチナの武装集団は勢力を大幅に拡大しているという指摘もある。ガザでパレスチナ人が殺害される事態を見て、それに憤り、武装抵抗しか手段がないと考えるパレスチナ人の若者たちは少なからずいる。ヨルダン川西岸では若い世代による「ライオンの巣」「ジェニン軍団」新たな武装集団も創られるようになった。
昨年10月にガザでの戦争が始まってからパレスチナ保健省によれば、650人余りのパレスチナ人がヨルダン川西岸でイスラエル軍やイスラエルの極右入植者によって殺害された。ヨルダン川西岸という占領地へのイスラエル軍の侵攻や極右入植者たちによる暴力は国際法によって禁じられているものだ。イスラエル軍は極右入植者の暴力からパレスチナ人を守ることも怠っている。国際司法裁判所はイスラエルのヨルダン川西岸への占領と入植地拡大を不当と判断したが、イスラエルが占領を止めない限りパレスチナ人の暴力は止むことがないだろう。
今年3月20日に公表されたパレスチナの調査機関PCPSR(Palestinian Center for Policy and Survey Research)の世論調査によれば、その時点で3万人超の人々が殺害されても、71%のガザの人々は昨年10月7日のハマスによる奇襲攻撃を正しかったと回答し、52%の人々は戦争が終わってもハマスの統治を望むと考えていることがわかった。ガザの人々がハマスを支持するのは、イスラエルとは平和的な交渉では正義や公正が実現しない考えるからだ。