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パレスチナとの連帯を訴えたスペイン・バスク地方の人々と、ゲルニカ、また現代の人種主義への理解

 スペイン・バスク地方のパレスチナ連帯デモの様子を伝える動画がSNSに投稿されている。その迫力に驚くばかりなのだが、バスクの人々は自らの歴史的運命とパレスチナの人々のそれと重ね合わせているのかもしれない。
バスク地方はピレリー山脈によって、フランスのバスク地方とわけ隔てられている。1979年に自治を与えられ、地方政府は大統領と議会をもつようになった。急速な産業化によって、ドノスチャやサン・セバスチャン、ビルバオなどの沿岸都市は発展を遂げた。

バスク地方地図 https://www.myushop.net/specials/detail/228


 バスクは長い間にわたって自治を求めてきた。1930年代の分離独立運動は1936年10月5日の自治獲得によって頂点に達したかに見えた。バスク民族主義者党は自治政府を創設し、フランシスコ・フランコ将軍と敵対した共和国政府軍と同盟を組み、スペイン内戦(1936年~39年)を戦った。1937年4月26日に、フランコ軍と同盟したナチス・ドイツの空軍・コンドル軍団はバスク地方の古都ゲルニカを空爆した。

 画家のパブロ・ピカソ(1881~1973)はナチス・ドイツによる空爆への抗議の意思を表した「ゲルニカ」を共和国政府の依頼によりパリ万博スペイン館の壁画として短期間で制作し、1937年6月4日に完成させた。「ゲルニカ」のモチーフになっているのは、犠牲となる母と子、倒れる兵士、叫び声を上げる母を描き、牛はファシストの「侵略者」を圧倒するための希望を表す。

ゲルニカに模したパレスチナと連帯するポスター



 イスラエル軍の激しい攻撃に耐えるガザ市民たちの姿は、スペイン内戦で共和国側に寄り添ったフランスの詩人ポール・エリュアールの「ゲルニカ」の詩や文章の一節を思い起こさせる。

 「火にも耐えた顔 寒さにも耐えた顔
  手荒い仕打ちにも夜にも耐えた顔
侮辱にも殴打にも すべてに耐えた顔たち
  いまあなた方を定着させているのは空虚(うつろ)さだ
  いけにえとなった 哀れな顔たち
  あなた方の死は 模範となるだろう

ゲルニカ。それはビスカヤの小さな町だが、バスク地方の由緒ある古都である。そこにバスクの伝統と自由を象徴する樫の木がそびえていた。だがいまやゲルニカは、ただ歴史的な、涙をそそる思い出の地でしかない。ゲルニカのひとたちはつつましやかな庶民だ。かれらはずっとむかしから自分の町で暮らしている。ほんのひと握りの金持ちとたくさんの貧乏人とで、暮らしは成りたっている。かれらはじぶんの子供を愛している。暮らしは、ささやかな幸福と、明日を思いわずらう、大きな心配苦労から成りたっている。明日も食わなければならないし、明日も生きなければならない。だからきょうは希望を抱き、きょうは働くのだ。」

ポール・エリュアールと妻 https://www.humanite.fr/culture-et-savoir/lanceurs-dalerte-1939/paul-eluard-faire-face-aux-batisseurs-de-ruines

 アメリカの活動家、哲学者で、フェミニストのアンジェラ・デイヴィス・カリフォルニア大学サンタクルーズ校名誉教授は「黒人のパレスチナ人との連帯は現代の人種主義の本質をより深く理解することになる」と語ったが、この言葉は「黒人の命は大事だ(the Black Lives Matter)」運動が高揚する中で、2020年7月に米国の歌手マドンナがインスタグラムに投稿した。

マドンナのインスタグラムへの投稿。Googleの地図にパレスチナがないことへの抗議とデイヴィス教授の言葉を載せた


 デイヴィス教授は、イスラエルに対するBDS(ボイコット、投資撤収、制裁Boycott, Divestment, and Sanctions)運動を支持している。BDSは、イスラエルがヨルダン川西岸の占領、法の下にパレスチナ人たちを平等に扱い、またパレスチナ難民の帰還権を認めるまでイスラエルに経済的圧力をかけ続けるというものだが、デイヴィス教授は現代のアパルトヘイトを終焉させるには必要な措置と考えている。

 デイヴィス教授は、自身がパレスチナの政治犯を支援するのはバスク地方やインド、またその他の国や地域の政治犯への支持と同様であり、イスラエルの占領を支持する米国や、その他の米国の差別政策に反対すると述べている。このようにデイヴィス教授はパレスチナとバスク地方を結びつけたが、デイヴィス教授によれば、パレスチナの大義は「黒人の命は大事だ(the Black Lives Matter)」運動の中心にあり、パレスチナの人々が米国の人種問題について絶えず発言してきたことを強調した。

人種差別や自由のために闘争している人々にとって、諦めることなく、永続的な服従と不正を受け入れることを拒絶し、長い間耐え忍び、不屈であり続けたパレスチナ人は目標であり続けている ―アンジェラ・デイヴィス

人種差別や自由のために闘争している人々にとって、諦めることなく、永続的な服従と不正を受け入れることを拒絶し、長い間耐え忍び、不屈であり続けたパレスチナ人は目標であり続けている ―アンジェラ・デイヴィス


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