レバノンの国連軍を攻撃するイスラエル軍と、イスラエルへの武器売却を停止したイタリア
レバノン南部に侵攻するイスラエル軍は、「国連レバノン暫定軍(UNIFIL)を攻撃した。国連安保理は10月14日、南レバノンで活動しているUNIFILの安全を尊重するようにすべての当事者に促した。国連安保理はレバノンの平和維持軍の安全に対する強い懸念を表明している。
13日、イスラエル軍の戦車が国連施設に侵入して発煙弾を発射した。同日、イスラエル軍はUNIFILに対して、イスラエルとレバノンの事実上の国境であるブルーラインから5キロ以上撤退するように促した。
イスラエル軍はUNIFILを攻撃するたびに自衛のためであるとか、行動が偶然であったとか説明を行っているが、国連はイスラエルの主張を信じていない。グテーレス国連事務総長は、これらの攻撃は戦争犯罪である可能性があり、国際法と国際人道法の両方に違反するものだと主張している。
1978年以来、UNIFILは337人の要員を失い、レバノンは国連の平和維持活動の中で最も犠牲者の多い国となっている。ヨーロッパ諸国の平和活動で、最も多くの人員が派遣されているのはUNIFILで、主な派遣国はイタリア、スペイン、アイルランド、フランスだ。UNIFILは、地域的にはレバノン南部の東西二つの地域に分かれており、西部セクターはイタリアが、東部セクターはスペインが主導している。EU以外で多くの要員を派遣しているのはインド、ガーナ、インドネシア、マレーシアで、これらの国の一国でも危険を理由に撤退すれば、UNIFILの活動は再編を余儀なくされる。
9月23日に始まるイスラエル軍のレバノン攻撃によってすでに2500人近くの人々が亡くなった。ニュースではあまり取り上げられていないが、レバノンはすでに「ガザ化」しているという見方もある。2014年夏のイスラエル軍のガザ攻撃による死者が2200人余りだったからレバノンも悲惨な状態が進んでいる。イスラエル軍はレバノン国民のおよそ25%に退避を促して、ヒズボラに対する軍事作戦の準備を行っている。レバノンの国連人道調整官、イムラン・リザ は水曜日、「医療施設、モスク、歴史的な市場、住宅団地、そして今や政府の建物がすでに瓦礫と化している。避難民の家族は、安全な地域に逃げた後も、危険を感じ続けている。」と述べた。
イスラエル軍は16日、レバノン南部の主要都市ナバティエの市庁舎を空爆し、市長をはじめ16人が死亡した。殺害された人の多くは、市長とともに、イスラエルの攻撃から逃れてきた人々の人道支援を行っていた。
イスラエル軍がUNIFILを攻撃するのは、UNIFILを撤退させて、国連軍の監視をなくし、いわばフリーハンドでレバノンへの攻撃を継続するためと考えられている。UNIFILが撤退すれば、UNIFILの活動地点をイスラエル軍が軍事行動の拠点にする可能性もある。ヒズボラの攻撃から逃れてイスラエルでは現在6万5000人余りが帰還できていないが、彼らの帰還を可能にするためにも、イスラエル軍のレバノン占領は必要なこととネタニヤフ政権には考えられている。
イタリアのジョルジャ・メローニ首相は15日、レバノン国内のUNIFILに対する脅威が高まる中、同国を訪問すると発表した。メローニ首相は、イスラエル軍の姿勢は完全に不当だと述べ、イスラエル軍の自衛は国際人道法に従ったものでなければならないと語った。イタリア政府は、レバノンの難民支援のために、1700万ユーロ(28億円近く)を拠出する用意があることを明らかにした。同日、メローニ首相は、昨年10月7日のハマスの奇襲攻撃以来、イタリアはイスラエルに対する武器・弾薬の供給を停止し、また関連する武器契約をすべて凍結したと議会で述べた。
日本は衆議院選挙期間に入ったが、国会が再開されたら、ガザと同様にレバノン情勢にも注意を向け、メローニ首相と同様に人道的な配慮からイスラエルとの防衛協力やイスラエルへの武器技術の移転の凍結をすべきだと思う。
表紙の画像はレバノンのUNIFILの部隊