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イスラエルが国際法と国際人道法に従っている? -欧米諸国の武器支援の偽善と欺瞞

 1月4日、パレスチナ保健省は過去24時間以内に59人が死亡したと報告し、これで23年10月7日以来のガザのパレスチナ人の犠牲者は45、717人に達した。

 ガザでの犠牲者がいっこうに減らない中で米国務省は、議会に対して戦闘機、攻撃用ヘリコプター、砲弾の弾薬など80億ドル相当の武器支援をイスラエルに行うことを提案した。米国務省は、この措置を「重要な弾薬の備蓄と防空能力を供給することにより、イスラエルの長期的な安全保障を支援するため」と説明した。

誰がイスラエルに武器を供給するのか https://www.bbc.com/news/world-europe-68929873

 「大統領は、イスラエルが国際法と国際人道法に従って自国民を防衛し、イランとその代理組織からの侵略を抑止する権利を持っていることを明確にした。我々はイスラエルの防衛に必要な能力を提供し続ける」と米当局者は述べた。

 圧倒的に多くの人が米国政府の感覚を疑うことだろう。イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相は戦争犯罪と人道に対する罪で国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状を発行されている。イスラエルは国際法を破ってヨルダン川西岸、ガザ、シリアへの占領を継続し、ガザで4万7000人余りを、またヨルダン川西岸でも23年10月7日以来、800人近くを殺害している。バイデン大統領の離任が近づいているが、カーター元大統領とは異なって最後までパレスチナ人の人権を軽視する大統領だった。イスラエルの非人道的戦争の継続は欧米諸国の武器支援によって可能になっていることは言うまでもない。

アメリカはイスラエルへの武器援助をやめよ https://www.middleeastmonitor.com/20250104-biden-administration-proposes-8-billion-arms-deal-with-israel-report/

 昨年4月に国連人権理事会はイスラエルに対する武器禁輸を承認し、28カ国が賛成、6カ国が反対、13カ国が棄権したが、米国やドイツなどイスラエルに武器を供給する欧米諸国の措置はこうした国際社会の意思に背いていることは言うまでもない。

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、イスラエルへの主要な武器供給国である米国は、2019年から2023年の間にイスラエルの通常兵器輸入の69%を供給した。昨年は3月末までに、バイデン政権はイスラエルへの25機のF35と航空機エンジンなどの25億ドルの武器売却パッケージを承認したが、この中には1,800発のMK-84無誘導爆弾と500発のMK―82無誘導爆弾の供給も含まれていた。破壊力の大きな米国の爆弾がガザでの被害をいっそう悲惨なものにしている。

イタリアのメローニ首相はイスラエルへの武器供給停止を発表。昨年10月。当然と言えば当然だが、米国とドイツにはできない。2024年5月16日、イスラエル軍がガザのハンユニスで4ヶ月間地上攻撃を行ったハンユニス市からの撤退後、地上作戦で使用した米国製の武器・弾薬の様子。[写真:Anas Zeyad Fteha/Anadolu via Getty Images] https://www.middleeastmonitor.com/20241017-italy-pm-announces-arms-embargo-on-israel/

 米国に次いでイスラエルへの武器輸出が多いのはドイツで、SIPRIによれば、2019年から23年の時期、ドイツはイスラエルの通常兵器輸入の25%を占める国だった。ドイツは主にイスラエルに潜水艦、軍艦、車両、航空機エンジン、魚雷を供給し、ドイツのディーゼルエンジンを動力源とするエイタン装甲兵員輸送車(APC)はガザで運用され、市街地攻撃作戦でイスラエル軍に用いられている。イスラエルの主力戦車メルカヴァのディーゼルエンジンもドイツ製で、ドイツは10、000発の120mm戦車弾薬を供給することになっている。

ドイツとイスラエルの固い絆 ショルツ首相とネタニヤフ首相 https://jacobin.com/2024/03/germany-die-linke-cease-fire-gaza

 イギリスもまた同盟国米国に配慮してイスラエルへの武器輸出を継続している。イギリス政府は9月、国際人道法(IHL)の重大な違反、あるいは違反を助長するリスクがあるという理由で、イスラエルへの武器ライセンス30件を停止したものの、F35戦闘機の部品に関する一部のライセンスについては例外が設けられ、訓練や防空装備などに関する約330件のライセンスは変更されずに継続された。

なぜイギリス政府はいまだにイスラエルに武器を供給するのか―ジェレミー・コービン(元イギリス労働党党首) https://www.youtube.com/watch?v=C1AIsZPdkAg

 ドイツのイスラエル支持の姿勢は顕著だが、「ホロコーストへの反省」を建前とするイスラエル支援の背景にはドイツの「実利」がある。多くのドイツの銀行、保険会社、投資家、研究機関、大学、武器会社はイスラエルと非常に密接な関係にあり、 監視技術からドローンやAI戦争まで、ドイツはイスラエルの戦争から知見や技術を得ている。ドイツ政府は、イスラエルの戦争、拷問、大量虐殺政策に対する批判を封じ、イスラエルの戦争に反対する運動を犯罪として取り締まることで、イスラエルのあらゆる戦争犯罪を免責しようとしている。ドイツ政府はネタニヤフ首相とガラント前国防相に対する逮捕状の請求についても「ドイツで逮捕されることは想像できない」とし、国際刑事裁判所のローマ規程の署名国としての義務を果たすことを望んでいない。ドイツは「正義と人権」という普遍的価値の擁護者を自任してきたが、そのドイツの仮面は武器供給も含めて大量虐殺を行うイスラエルへの支援によって剥がれ落ちた。

学生のパレスチナ支持デモを排除するドイツ警察 昨年5月。ベルリンで。 https://www.mercurynews.com/2024/05/07/police-in-berlin-break-up-pro-palestinian-student-protest/

表紙の画像はプレストンのBAEシステムズ工場の外で、イスラエルへの英国の武器供給に抗議するパレスチナ活動家。写真:ゲイリー・カルトン/オブザーバー
https://www-theguardian-com.translate.goog/world/2024/nov/18/uk-upheld-some-arms-export-licences-to-israel-to-reassure-us?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc

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