戦争犯罪容疑のイスラエル兵の逮捕を警察に命じたブラジル連邦裁判所
ブラジルの裁判所はヒンド・ラジャブ財団(HRF:Hind Rajab Foundation)の告訴を受けて、警察に対して捜査するよう命じた。HRFは1週間前にブラジルに滞在しているイスラエル人の男がガザの民間人の家屋の破壊に関与したと主張した。
HRFのマイラ・ピニェイロ弁護士は、容疑者と、これらの行為を結びつけるビデオや写真の証拠を挙げ、この容疑者が積極的に破壊行為に加担したと述べた。トルコのアナドル通信はこのブラジルの裁判所の命令を「歴史的行動」と形容している。
HRFはベルギーに拠点を置く組織で、世界的規模で活動を行い、パレスチナにおける人道に対する罪、戦争犯罪、人権侵害を監視し、暴いてきた。
ブラジルのニュースサイト「メトロポレス」によれば、HRFは、2024年11月に兵士がガザのインフラや建物を破壊するために爆発物をしかけた様子を示すビデオや画像を含む500ページの証拠を裁判所に提供したという。「メトロポレス」の記事ではこの破壊は戦闘目的以外で行われ、破壊された建物はガザ住民の避難場所として機能していた。
23年10月7日にイスラエルのガザ攻撃が始まって以来、イスラエル兵士たちの戦争犯罪や人権侵害はXなどに投稿されてきたが、HRFはこうした動画や画像を告訴のために収集、編集するようになった。
たとえば下のURLにはガザの赤ん坊の首を斬り、13人のパレスチナ人を殺害したことを自慢げに告白するイスラエル兵が登場する。
イスラエル軍は兵士たちが戦場で撮った動画や画像が兵士たちの不利益になる可能性があるので、それらを公開しないように兵士たちに指示を出してきたが、それでもイスラエル兵たちによる戦場での「自慢話」はネット上で絶えない。 HRFは武力紛争において人道や国際法に反する行為を監視し、告発を続けている。ガザの被害者の家族もこの訴訟の告発者に名を連ねるが、HRFのピニェイロ弁護士は、「ブラジルは国際刑事裁判所のローマ規程の署名国であるため、ブラジル国内でも普遍的管轄権が適用される」と述べた。ローマ規程では、いかなる加盟国も、同規程に記される犯罪(戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド)が捜査され、訴追されるよう行動しなければならないとされる。ブラジル刑法第7条の治外法権の原則に基づき、ブラジルは、海外で行われた刑事犯罪が国際条約に反して発生し、加害者がブラジルの領土に侵入した場合、その犯罪を捜査する管轄権を有すると考えている。
日本もローマ規程の批准国だからブラジルと同様に、日本に入国したイスラエル人が戦闘中に、戦争犯罪や、人道に対する罪、ジェノサイドを犯した容疑があるならば捜査して、逮捕しなければならない。身柄が確保されたら、オランダ・ハーグの国際刑事裁判所で容疑者の裁判が行われることになる。 チリでも同様の訴訟が行われており、チリのパタゴニアで休暇を過ごしていたイスラエルの第749戦闘工兵大隊のメンバーに対して620の弁護士が訴訟を起こした。弁護士で、元外交官のネルソン・ハダド氏はその兵士の即時逮捕を求めている。被告人のインスタグラム・アカウントから証拠となる多くのビデオや画像を得ているとハダド氏は述べた。
ブラジルの連邦裁判所はブラジルの刑事訴訟法を援用し、緊急捜査措置を命じた。これはローマ規程の署名国が国内でその規定を施行した歴史的な事例となった。「これは歴史的な瞬間だ」とHRFのディアブ・アブ・ジャジャ議長は述べ、また「戦争犯罪者に責任を負わせる強力な前例となる」と語った。我々もイスラエルによる戦争犯罪を未然に防ぐためにも、フェイスブック、インスタグラム、Xなどでイスラエル兵や極右集団の犯罪行為を見つけたらそれを保存して、証拠として積み上げていくことが求められていると言えよう。
表紙の画像は下より