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「#戦争反対」 ―93歳の長崎の被爆者は訴える

16歳の時に長崎で被爆した93歳の森田富美子さん(東京都世田谷区在住)が戦争反対の意思をツイッターで表現し、フォロワー約3万6000人を集めるようになっている。1945年8月9日、学徒動員によって造船所で働いていたが、翌日自宅に戻ると、父母、2人の弟が黒い塊となって亡くなっていた。

〈ボロボロのトタンを見つけ、父を寝かせ

、その横に黒い塊の母と二人の弟を置いた。 瓦礫がれき に火をつけた〉〈このようなことはもう誰にも起きてはいけない〉

〈どんな理由があろうと戦争はいけない。あの8月9日11時2分、私は原爆で父母と三人の幼い弟達を一瞬の内に亡くした。16歳だった。戦時中であったが、その日の我が家はいつもと変わらぬ夏の朝だった。島の軍事工場に行く私をいつものように母は見送った。今、あの時と同じ事が起きている。#戦争反対

 これは、読売新聞(12月23日)の記事の紹介によるものだが、ロシアによるウクライナ侵攻(記事では「侵略」という言葉が使われている)に向けて書かれたものだ。しかし、森田さんの「戦争反対」は普遍的な意味をもち、岸田内閣が閣議決定した「反撃能力」もその対象となっている。その防衛費増額に対する反対などの主張は説得力があり、痛快で面白い。森田さんのツイッター名は「わたくし93歳」、またアドレスは

https://mobile.twitter.com/Iam90yearsold。反撃能力によって、日本が真珠湾攻撃のように戦端を開くことを政治家たちはわかっているだろうか。

 これまでも書いてきたが、戦争は始めれば、終わらせるのが難しいことは、米国によるアフガン戦争、イラク戦争、ロシアによるウクライナ侵攻でも明らかだ。森田さんの家族の命を奪った長崎に原爆が投下される原因をつくった日本軍による真珠湾攻撃も早期講和という甘い見通しから行われたものだった。「反撃能力」も同様に甘い発想のように思われ、反撃後の事態に対する想像力に岸田内閣・与党は著しく欠けている。

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まる前にロシア軍がウクライナ国境に軍隊を集結させていた時にTBSテレビの「サンデーモーニング」で元外務事務次官の薮中三十二氏が米国など西側諸国はどうして外交をしないのでしょうかと不思議がっていたことを思い出す。外交は、「反撃能力」や、23年度予算に取得費2113億円も計上したトマホーク・ミサイルよりも重要であることを政治家たちはよく認識すべきだろう。戦争になれば、人的・経済的ロスは甚だ大きい。野党の一部までも「反撃能力」の一部容認の姿勢であることにこの国が危険な傾向に陥っていることを危惧せざるを得ない。再び広島、長崎に原爆を投下され、300万人が犠牲になったような破局に至るまで気づかないのだろうか。米国がウクライナ侵攻前にロシアと外交を行わなかったのは表に出せない軍産複合体の利益などの事情があったのではないかとも思う。

 米国は圧倒的な軍事力をもってすれば、アフガニスタンのタリバンやイラクのサダム・フセイン政権は容易に屈服できると考えたに違いない。ベトナム戦争も同様な楽観的な判断から開始されたが、いずれの戦争も敗北して撤退していった。ロシアのウクライナ侵攻にも同様な楽観的な思い込みがあったろう。軍事力で国家間の問題を解決することが非常に困難であることは歴史が証明するところだ。

 森田さんのツイッターを紹介する記事には「若者を中心にたくさんの共感の声が寄せられている。」とある。また、森田さんは「戦争を体験した私には、後世に伝える責任がある。生きている限り、ひたすら戦争反対の声を上げ続けることが私の使命だと思っています。」と語っている。若い世代は戦争に対する想像力をウクライナでの戦争などを見て膨らませて「#戦争反対」の声を上げてほしい。被爆者の森田さんの声は若い世代が耳を傾けるべき極めて貴重なものだ。
画像はhttps://www.yomiuri.co.jp/.../news/20221223-OYTNT50069/  より

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