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ヒロシマ ―「傷口こそが、光があなたの中に入る入り口である」とウクライナ和平会議」
「傷口こそが、光があなたの中に入る入り口である」 -ルーミー
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人の不屈、希望、勇気を表現するような詩の一節だが、このウォールでしばしば紹介するペルシア文学最高の神秘主義詩人とされる作者のルーミー(1207~73年)は、数多くの抒情詩を残した。彼はトルコ・コンヤの「踊るデルヴィーシュ」として有名なメヴレヴィー教団の創始者としても有名であり、現代人にも多く共感される詩情を残している。メヴレヴィー教団はキリスト教やプラトンの思想も包摂する寛容さをもち、社会の支配層から広く大衆にまで受けいれられていった。
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)へのノーベル平和賞授賞式で、被爆者のサーロー節子さん(85)は「諦めないで」と核兵器廃絶への想いを全世界の若い人々に訴えている。
13歳の時の被爆体験を語り、「あきらめるな。(がれきを)押し続けろ。光が入ってくるのが見えるだろう?そこに向かって、はって行きなさい」という声を聞き、倒壊した建物の中からはい上がって命をとりとめた。この光とは核廃絶への希望だと言いたかったのだろう。(朝日新聞など)
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ヒロシマの鳥の声
どこに、どこにいるの?
だれが? だれが?
どこにいるの?
だれが? だれが?
人間たちが・・・・・・
知らないよ。ごらん、灰がひらひら・・・・・灰がひらひら・・・・・
みんな飛んで言ってしまった
どこへ? どこへ?
知らないよ
巣をつくろうよ
うん、巣を、巣を・・・・・
だけど、どこに? どこに? どこに? どこに? ・・・・
-エウジェン・セベレアヌ(永田文男訳)
これは、ルーマニアの詩人エウジェン・セベレアヌ(1911~1991年)の詩集『ヒロシマの微笑み』に収められた作品で、アルゼンチンの女性歌手ヒナマリーア・イダルゴ(1927~2004年)が歌って世界的に知られるところとなった。歌の動画は下にある。
サウジアラビアでウクライナの和平会議が開催された。この和平会議を仕切ったのはサウジアラビアのムハンマド皇太子だった。ウクライナのイエルマーク大統領府長官は「各国の立場は異なるが、参加国は国連憲章や国際法を守り、国家主権や領土の不可侵性を尊重すると表明した」と述べたというから(毎日新聞)、ロシアは欠席だったが、ロシアにとっては不満な内容の会議だったろう。
サウジアラビアのムハンマド皇太子は2019年6月末に広島の原爆資料館を訪ねたことがある。2018年にサウジアラビア人ジャーナリストカショギ氏殺害に関与したことが指摘された半年後ぐらいである。原爆資料館訪問は彼のイメージ回復を狙ったのかもしれない。残念ながらどの新聞を見ても訪問の事実だけを短く紹介しているだけで、資料館訪問の感想などはどのメディアに当たっても紹介されていない。
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今回のウクライナ和平会議も、米国の影響力が中東で低下し、トルコやイラン、またサウジアラビアといった地域大国の指導力が増す中で、サウジアラビアの新しい外交的役割を模索したものだ。平和や人権擁護の価値観に皇太子が目覚め、その実現の中で主導的役割の発揮を考えているとすれば、中東地域の平和や安定にとってプラスの要因となるだろう。
「人々を善に誘い、正しいことを勧め、醜悪なことを禁ずるよう、お前たち一団になって努めよ。これらの者こそ栄えるのである」(コーラン3章104節)
2003年に朝日新聞記者(当時)の伊藤千尋氏が俳優のダスティン・ホフマンにインタビューしたところ、ダスティン・ホフマンは、アメリカ人はアメリカが広島や長崎に原爆を落としたことは知っているが、その結果は知らないと語ったという。また、原爆投下以前に日本のほぼ全域とも言ってよいほど広範な地域に焼夷弾を落とし、日本の半分の人々、子供や民間人に原爆の数倍とも言える被害を与えていたことを知らないと述べた。
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広島と長崎は78年前に人類初めての被爆という大きな傷口を開けられた。そこに光を入れるには原爆被害を世界に訴え、核兵器廃絶、核兵器禁止に真摯に、積極的に動くことではないか。岸田首相のように、核抑止論を世界に訴えることではない。岸田首相の姿勢は世界から敬意をもたれず、また共感を得られるものでもない。核兵器によって負った大きな傷口から核兵器廃絶や禁止という希望や光をもち、その実現を図っていくのが、被爆国日本の責務や役割ではなかろうか。
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