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米国予算最大の無駄と人道上の罪 -イスラエルへの軍事援助
トランプ大統領とイーロン・マスクのコンビが解体を目指すUSAID(米国際開発局)は、2023年度に438億ドルの対外援助を行った。USAIDなどによる米国の対外援助は災害援助などの人道支援、HIVやパンデミック対策、民主主義などグッド・ガバナンスの構築支援などに使われている。米国の23年度対外援助のうち166億ドルがロシアの侵攻を受けるウクライナの政治・社会システムの維持などのために、また33億ドルが対イスラエル支援に用いられた。これらの2国が1位と2位で、3位のエチオピアが18億ドル、4位のヨルダンが17億ドル、5位のエジプトが14億ドルだったが、平時の米国の対外援助はイスラエルや、イスラエルの安全や安定に影響を及ぼす国々に集中的に割り当てられている。
23年度の米国の国防予算は8200億ドルだったから先日も書いた通り、米国の予算における軍事費の割合がいかに突出して多いかがわかる。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、イスラエルはハマスの奇襲攻撃があった2023年に軍事費に275億ドルを支出したが、これは世界15位で、GDPの5.3%だった。(米国の国防費はGDP比3.4%、ドイツは1.5%)ちなみにハマスの攻撃があってからの3カ月間、イスラエルのGDPは5.6%縮小し、これはOECD38カ国の中では最悪の数字だった。ガザ戦争がいかにイスラエルの経済負担になっているかがうかがえる。23年10月7日からおよそ1年間で米国はイスラエルに179億ドルの軍事援助を与えたが、米国の年間対エチオピア援助額の10倍にも相当する額である。(the Watson Institute for International and Public Affairs at Brown University)米国の軍事援助がなければ、イスラエルの戦争遂行が不可能になることがうかがえるだろう。
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イスラエルがガザで重大な戦争犯罪を繰り返しているという指摘が国際的な人権団体や国際司法裁判所などからあったにもかかわらず、米国バイデン政権はイスラエルに対する武器移転を継続した。今年1月初旬、バイデン政権は議会に対し、イスラエルへの追加80億ドルの武器売却計画を通告している。
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イスラエルは、ガザ住民を強制的に避難させ、彼らへの人道支援を断って飢餓状態に置き、水道、電気、さらには住宅、学校、大学、病院などガザの主要なインフラを破壊したが、これらは戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイドに相当する。多くの報道機関や人権団体は、国際人道法に違反したイスラエルの攻撃に米国の兵器が用いられたことを指摘している。バイデン政権がイスラエルへの武器移転を控えたのは昨年5月にガザ南部のラファへの攻撃を懸念するという理由で2000ポンド爆弾の供給を停止した時のみだった。しかし、トランプ大統領はこの2000ポンド爆弾のイスラエルへの輸出凍結を解除し、2月16日、1800発の2000ポンド爆弾がイスラエル南部のアシュドッド港に到着した。(ガザで使用された2000ポンド爆弾は幅約40m、深さ数mのクレーターをつくった)
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国連の重要な条約の起草などを行う国際法委員会は2001年、その報告書の中で国際法に照らして違法な行為を行う国に対して援助や支援を行う国はその責任を負うと述べた。国際法や、国際人道法に違反するイスラエルに対して軍事支援を行う米国に重大な戦争犯罪や人道上の罪が該当することは言うまでもない。バイデン政権が昨年5月に議会に提出した報告書「国家安全保障20」では、イスラエル軍が米国提供の武器を国際人道上の義務に反する方法で使用したことを明らかにしたが、米国もイスラエルの人道法違反に自国の兵器が使用されたことを自ら認めている。
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バイデン政権がイスラエルに2000ポンド爆弾の供給を停止したのは、人道への配慮からだったが、それにもかかわらず直前で述べた通りトランプ大統領は1月下旬、イスラエルへの2000ポンド爆弾供給を再開することを明らかにして、「ガザを一掃せよ」と述べ、ガザの民族浄化を進める考えを明らかにした。トランプ大統領の姿勢はイスラエルの戦争犯罪をほう助するもので、その刑事責任が厳しく問われるべきものだ。米国はイスラエルへの軍事支援と武器供給を停止すべきことは言うまでもないが、1961年の米国の対外援助法第502条Bも「国際的に認められた人権を一貫した形で重大に侵害する国に対してはいかなる安全保障上の援助も行なわない」と規定しており、米国のイスラエルへの武器支援はこの米国の国内法にも抵触する。
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トランプ政権のピート・ヘグセス国防長官と彼の「プロジェクト2025」の支持者たちは、米国の軍事支出は米国のGDPの5%に等しくなるべきだと根拠のない主張をするようになった。日本の防衛費2%もトランプ1期目政権のマーク・エスパー国防長官が2020年9月にランド研究所でNATOだけでなく、米国の同盟諸国・友好諸国も国防費をGDP比2%以上に目指してほしいと述べたことが背景になっているようだ。エスパー氏は世界第3位の米軍需産業レイセオンで国防総省や議員へのロビー活動の責任者・政府交渉担当の副社長などを務めていた。トランプ政権の対イスラエル政策や無駄な防衛費増額に日本がつき合うようなことがあっては決してならない。
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表紙の画像はイスラエルへの軍事支援をやめよ!
https://note.com/osugi3y_ekushoy/n/n3bfd3cc4bb41