ガザ停戦に反対する千代田区議会と第二次世界大戦開始から85年
千代田区議会は、5月8日付で区民から出されていた「ガザ地区の人命保護および即時停戦を求める決議を求める陳情」に対して自民党区議が「即時の停戦が問題の解決につながっていかないという考えもある」などと述べ、「議会で議論するにはなじまない」などと主張し、結局公明、都民ファ、維新も同調、「審査になじまない」という結論を出した。
ガザ停戦については、「超党派 人道外交議員連盟」が中心になって日本の国会では6月中旬に「人道状況の改善と即時停戦を求める決議」が衆参両院で決議されている。とにかく一日も早い停戦をというのが自民党や立憲民主党など党派の垣根を超えた「人道外交議員連盟」での議論であった。日本政府がG7に倣ってUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)への資金の拠出を止めると、やはり「人道外交議連」の議員たちがUNRWA支援の再開のために動き、再開を実現した。
日本の国会にはパレスチナ国家の承認を行ってほしいと思っている。パレスチナが国家になって主権をもてば、イスラエルもパレスチナ国家の領土となるヨルダン川西岸のパレスチナ人の土地を奪うことにも躊躇が生まれる可能性があり、またイスラエルの入植地拡大について国際社会の批判もいっそう高まるだろう。パレスチナがいつまでもイスラエル支配の下に置かれたままでは、好き勝手なことをされる。最近ではネタニヤフ政権の極右閣僚ベングビール国家治安相が銃器所持の規制をイスラエル人に緩めたことによって、イスラエルの極右入植者たちは銃でパレスチナ人を威嚇し、土地を強奪するケースが増加している。
千代田区議会で「即時の停戦が問題の解決につながっていかない」と考える議員の「問題」とは何だろう。無用な殺りくを続けることが何の問題の解決になるというのか。イスラエルの暴力を放置したままだと問題の解決が遠くなるばかりだ。千代田区にはイスラエル大使館があり、地理的には日本の中で最もイスラエルに圧力をかけることができる自治体だが、そのような自覚も千代田区議会で反対した議員にはないのだろうか。
今日9月1日は第二次世界大戦が始まって85年となる。作家の早乙女勝元さんには『イタリア・パルチザン』という著作があり、第二次世界大戦中の日本とイタリアの相違について早乙女さんは次のように語っている。
「ファシズムの一員だったイタリアが、ムッソリーニを倒して、第二次大戦が終わるときには、連合国の側に加わっている。戦争への国民の大規模な抵抗があり、ムッソリーニの政権内にも、もう戦争を止めようという動きがあった。日本にはなかったことです。」
(東京民報2020年7月12日号より)
自民党の千代田区議や、UNRWA支援を止めた日本政府のように、日本の政治は主体的に停戦に動くことがなく、対イスラエル政策も米国の顔色をうかがい、主体的、能動的にガザでの戦争を止めようという姿勢が特に政府に希薄だ。千代田区議の発言も米国に配慮したものなのかもしれない。
イタリアのパルチザンが戦う相手としたファシズムは国粋主義、社会政策を強調して、中間層、農民に支持基盤を求め、暴力的に人権を否定するのが特徴だったが、現在極右が支配するイスラエルもまた国粋主義に訴え、パレスチナ人の人権を暴力的に否定し、貧しい入植者たちに補助金を与えてその支持を得ようとしている。イスラエルのネタニヤフ政権は極右勢力に合わせるように、イスラエルがユダヤ人のみによって構成されるというユダヤ国家法を2018年に成立させ、またネタニヤフ首相はハマスに完全に勝利するまで戦争を継続すると訴え、パレスチナ人には土地の譲歩を一切しないと明言している。
イタリアでは現在でも「全国パルチザン協会(ANPI)」が活動していて、若い層のメンバーも集めているが、今年のファシズムから解放を祝う日である4月25日、ANPIの行進にはパレスチナの旗があふれ、即時停戦が訴えられた。例によってイタリアのユダヤ団体はこのパルチザン協会の動きを「反セム主義」と批判している。イタリアでは現在でもパルチザンの愛唱歌「ベッラ・チャオ(さらば恋人)」が歌われているが、ファシズムの打倒がイタリアに自由と平和をもたらしたと考えられている。イスラエルの極右政権に圧力をかけてその政策を変えることがパレスチナ人の自由と平和を実現することになる。