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ニューオリンズ・テロと自省できない米国
1日未明、米国南部のルイジアナ州ニューオリンズで、新年を祝う群衆にピックアップトラックが突っ込み、トラックの男が発砲し、15人が死亡し、30人余りが負傷するという事件が発生した。
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ドナルド・トランプ次期大統領は、容疑者を常習犯で最近移民したばかりだと結論づけた。
しかし、容疑者のシャムスッディン・ジャッバール(42歳)は移民ではなく、テキサス州生まれで、テキサス州育ちのアフリカ系の人物だった。彼のトラックではISの旗が見つかったが、彼のイスラムへの改宗は2004年にイスラム名で海軍に入隊しようとした2004年以前に行われたと見られている。結局彼は陸軍に入り、アフガニスタンに1年間派遣されている。
トランプが即座に容疑者を移民と断定したのは、彼の移民に対するヘイトや偏見によるものだ。容疑者は米軍に入隊したように、愛国的な感情ももち合わせていた。容疑者はトレーラーハウスに住み、クレジットカードの滞納額も1万6000ドルに及んでいたという報道もあるが、金銭的な困窮も社会に対する不満となって表れたのかもしれない。2010年代にヨーロッパで発生したムスリムによるテロ事件も雇用など社会的差別や経済的要因が大きく、それがシリアやイラクでの戦争に触発されたものが多かった。
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米国では1982年から2023年12月までに発生した銃乱射事件149件のうち、80件は白人によるもの、アフリカ系が26件、ヒスパニック系は12件、アジア系10件、ネイティブ・アメリカンが3件で、ムスリムによる銃撃事件はほとんど発生していない。
米国では銃乱射事件を起こした白人について「テロリスト」という言葉が用いられることはほとんどなく、彼らは「ガンマン」と呼ばれてきたが、ムスリムの場合は即座に「テロリスト」ということになる。今回のようなムスリムが起こした事件が発生すると、テロがイスラムという宗教を背景にするものと強調されがちだ。
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イスラエル外務省は水曜日、この攻撃でイスラエル国民2人が負傷し、イスラエル当局が彼らの家族と連絡を取っていると発表した。この攻撃がイスラエルや中東紛争と関連しているかどうかは現時点では不明だが、テロの動機、あるいはテロを正当づける大義として米国のイスラエル支援があった可能性は十分考えられる。 バイデン政権によるイスラエルに対する武器・弾薬の供与がなければ、ガザで4万5000人もの人々が殺害されることはなかった。
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近年では米国内でムスリムによるテロはほとんど発生することがなかったものの、1990年代や2000年代前半に米国内でムスリムによるテロが発生すると、米国政府指導者は米国内でムスリムによるテロが発生するたびに「テロを容赦しない」と発言してきたが、米国がなぜテロに遭うのかその要因を自省する姿勢はほとんどなかった。 アルカイダの指導者オサマ・ビンラディンは米国のイスラエル支援を憎悪する心情を吐露していたが、一昨年来のバイデン政権によるイスラエル支援には危ういものを感じ、欧米へのテロに動機を与えるかもしれないと危惧してきた。
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ビンラディンは1998年に下のように語っているが、米国のイスラエル支援、またシリアのアサド政権の崩壊とその後のイスラエル軍のシリア攻撃を目の当たりにすると、まさに現在の状況を言い当てていたかのようだ。
「かりに(湾岸戦争など)戦争の背景にあるアメリカの目的が宗教的、経済的なものであるならば、それはまたユダヤ人のちっぽけな国家の利益となり、そのエルサレムの占領と、パレスチナのムスリムの殺害から注意をそらすことにある。このことの最もよい証拠は、(イスラエルの近隣で)最強のアラブの国イラクを破壊しようと切望していること、イラク、サウジアラビア、エジプト、スーダンのような地域の国々を小さな紙片のように砕こうと努め、アラブ世界の不統一をもたらし、弱体させることで、イスラエルの生き残りとアラビア半島に対する残酷な十字軍の占領の継続を確実にしようとしていることである。」
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表紙の画像はニューオリンズでの事件
https://www.youtube.com/watch?v=SZPRq3i6C4k