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ガザの人々はトランプに屈しない -ガザの小児患者を受け入れるアイルランド、そして日本は?

 トランプ大統領は、25日、ガザを「破壊現場」と呼び、「あそこは全部一掃したほうが良い」と語った。ガザ住民150万人をすべて一掃して「もう終わりだ」と言いたいとも述べた。不動産業者のトランプ氏から見れば美しい海岸線があるガザは魅力がある一方で、瓦礫など目障りなのだろう。ガザの人々は15カ月間にわたるイスラエル軍の攻撃に耐え抜き、住んでいた場所に戻る興奮が伝わってくる。パレスチナの人々がガザを容易に放棄することあり得ないだろう。

トランプ「ガザを一掃しろ。ガザ住民をエジプト、ヨルダンに追放せよ。」

 このトランプ大統領の構想についてクイーンズ大学の国際法教授で元国連職員のアルディ・イムセイス氏は、「トランプ大統領の、占領下のガザ地区からパレスチナ人を大量に『移住』させたいという願望は、希望的観測であると同時に違法だ。国際人道法と国際刑法の下では、保護対象者の占領地から占領国領土、あるいは占領されているか否かを問わず他の国への個別または集団の強制移送、追放は、動機の如何を問わず禁止されている」と述べた。

トランプは国際刑事法の本を読む必要がある

 トランプが国際法の基本的な知識にも欠如し、思い付きのような発言を繰り返すのは読書をせず、深い思考に欠けるせいもあるのだろう。ワシントンポストの2016年7月17日付にトランプ大統領が本を読まないことを紹介する記事がある。トランプ大統領はいかなる米国の大統領の伝記も読んでいなかったそうだ。忙しすぎるというのがその理由だというが、オフィスには書棚もなく、彼のデスクの上には雑誌だけが山積みにされているという。

Institute for Middle East Understanding 12,000人のガザ住民がメディカル・エバキュエーシを必要としているが、イスラエルは400人しか認めていない

 473日間にわたるパレスチナ人の死者は47,161人、負傷者111,166人、行方不明者はおよそ11,000人だが、24年12月31日に発表された国連人権高等弁務官事務所(OHCHR: Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights)の報告では23年10月から24年6月末までに、ガザでは500人以上の医療従事者が殺害された。多くの女性が、産前産後のケアがない、または最小限に抑えられた出産をしており、予防可能な妊産婦や子供の死亡リスクを高めている。

日本によるメディカル・エバキュエーションももう少しで実現されると思う

 ガザでは24年12月27日、北部のカマル・アドワン病院にイスラエル軍が侵入して放火し、医療設備が使用不能になるとともに、医療関係者たちが強制退去させられた。WHO(世界保健機関)は医療を必要とするガザ住民にとっては死刑宣告に等しい行為だと強く非難した。また、ガザでは建物が破壊され、電力や燃料が断たれているために、生後間もない赤ん坊などが凍死するケースが後を絶たない。カマル・アドワン病院のサフィーヤ院長はイスラエル軍に拘束され、その後消息不明になった。

 2025年1月3日、WHOは、ガザの36の病院のうち16の病院が部分的に稼働し、20の病院が閉鎖に追い込まれたと報告している。中東イスラム諸国ではガザの傷病者の受け入れにエジプト、カタール、アラブ首長国連邦、トルコ、アルジェリアなどがなどが多数受け入れている。中東イスラム域外ではヨーロッパのアイルランドが受け入れに熱心で、24年12月20日にスティーブン・ドネリー保健相は8人の子どもたちが8人の保護者と11人の兄弟を伴ってダブリンに到着したことを報告した。アイルランドは、ガザから合計で最大30人の小児患者を受け入れる計画だ。がん、透析患者、その他の重篤な病状を持つ子どもが対象となる。

 アイルランドのパレスチナへの共感は、アイルランドが1649年のクロムウェルの植民地化から1931年の完全独立までイングランドの植民地として置かれ、植民地時代に餓死で人口の半数が消失したと見積もられるジャガイモ飢饉(1845~49年)など苦難の歴史があったことと関連する。

アイルランド・ダブリンで https://www.nytimes.com/2023/12/02/world/europe/ireland-palestinians-support.html

 アイルランドの著名な作家シーン・Ó・ファオラン(1900~1991年)は、1948年にアイルランドがイギリスによってユダヤ人の民族郷土にされてしまったら、アイルランド人の怒りは察するに余りあると述べた。

アイルランドはガザ戦争に黙ってはいない アイルランド・サイモン・ハリス首相(38歳) https://www.youtube.com/watch?v=sFQHBuAR0m0

 アイルランドは、1948年10月に教皇ピウス12世がエルサレムとその近郊を国際管理下に置くことを呼びかけると、この構想に従って、1963年までイスラエルの国家承認をすることがなかった。1967年の第三次中東戦争で多数のパレスチナ難民が発生すると、1969年にアイルランド議会でフランク・エイケン外相は、パレスチナ難民の問題を解決することがアイルランドにとって最も緊急の課題であると述べた。アイルランドはパレスチナ難民の帰還なしに中東の平和はあり得ないという立場をとり続けている。1980年2月にアイルランドは、EU加盟国で最初にパレスチナ国家創設を呼びかけた。

カナダは売り物ではない、パナマ運河も売り物ではない、グリーンランドも売り物ではない。米国はイスラエルに売却済み

 WHO(世界保健機関)のペドロス事務局長は1月2日、ガザからの傷病者の受け入れを行った国に謝意を表明したが、その中に日本の名前はなかった。停戦期間中はガザとエジプトのラファ検問所も開放されており、傷病者の移動も容易だ。戦闘の再開などまったく望まないが、日本には迅速にガザの患者を受け入れてもらいたいものだと思っている。


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