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EU加盟国のパレスチナ国家承認と、どうする日本?

 欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表(外相)は9日、スペインやアイルランド、スロベニアなど複数の加盟国が21日にパレスチナを国家承認する予定であることを明らかにした。これにベルギーなどが続くという。

 パレスチナ国家を承認している国は、国連加盟193カ国のうち世界139カ国、EU加盟国ではスウェーデン、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、ポーランドと多いとは決して言えないが、フランス国民議会(下院)やスペイン下院、またイギリス下院も2014年に2000人以上のガザ住民たちの犠牲を受けて、パレスチナ国家承認を政府に求める動議を可決している。

パレスチナ国家を承認している国は濃い緑 新たに承認ししたのは緑 それ以外は承認していない国。日本は少数派だ。 https://www.polgeonow.com/2016/02/map-which-countries-recognize-palestine-2016.html


 日本は、イスラエル・パレスチナ2国家共存によるパレスチナ問題の解決を支持してきたものの、パレスチナ国家を承認していない。2国家解決を訴えながら、パレスチナ国家承認をしていないのは明らかに矛盾するものだ。アメリカや、アメリカとイスラエルの特殊な同盟関係を配慮してのものだが、パレスチナ国家承認がイスラエルによる不当なヨルダン川西岸併合や入植地拡大への抑止力や、その不当性をアピールする力になることは間違いない。政府がパレスチナ国家承認をしないのならば、せめて日本の国会は2014年のイギリスやフランスの議会のように、パレスチナ国家承認を政府に求める決議やガザ停戦を求める決議を迅速に成立させてほしいと願う。

被爆地・広島から「ガザに自由を」 戦闘半年、原爆ドーム前で市民ら 魚住あかりさん 2024年4月8日 10時30分 https://digital.asahi.com/articles/ASS474G1BS47PITB00FM.html


 14日、国会議員会館で「超党派人道外交議員連盟設立総会」があった。立憲民主党の阿部知子議員、近藤昭一、自民党の石破茂、中谷元議員らが中心になって現在はガザの人道状況の改善に取り組むことを目標としている。
「昨日超党派人道外交議連設立総会、パレスチナとイスラエルの戦闘の激化の中で、一日も早い停戦と人道支援の強化が求められています。より多くの超党派の議員の参加を得て、人道外交を今一度日本外交の基軸として押し進めていく決意を新たにしています。国際人道支援のNGOや有識者の協力、協同の元に。」(阿部知子議員の✕より)

https://twitter.com/abe_tomoko/status/1790495447116837141

 2014年にフランスやイギリスの国会が政府にパレスチナ国家承認を求める決議を成立させると、中東関連のネットニュースなどでは大きな見出しで扱われたが、絶望的な状況の下で暮らすガザ住民たちにとって、日本の国会がパレスチナ国家承認を政府に求めれば彼らの希望の一助になることは間違いない。また、即時停戦を求めたり、人道物資を届ける決議を成立させたりすることもガザ住民だけでなく、アラブ・イスラム世界に日本への好印象を与えることになる。いろんなところで書いてきたが、この地域には良好な対日感情が根強くあり続けてきた。

パレスチナ人の境遇に改善はない https://twitter.com/AbujomaaGaza/status/1790773564410384886/photo/2


 この総会に出席していたNGOの日本人女性の話によれば、良好な対日感情にパレスチナでは接してきたものの、10月7日以降の日本政府の対応にパレスチナ人の間では幻滅や失望が広がっているという。

 たとえば、昨年10月16日に日本はガザでの即時停戦を求める国連安保理の決議案に、日本は米英仏とともに反対した。この日本の投票行動にガザでも日本は虐殺に加担しているという非難の声が上がった。また、昨年10月27日にアラブ諸国が中心となって提出した人道回廊の設置や「人道的休戦」を求める決議案が採択されたものの、日本は棄権した。これらの決議案への反対や棄権は、ガザの悲惨な状況を考えると、まったく理解に苦しむものだ。

 今のガザ問題には日本の「正義」や「良心」が試されている。アラブ・イスラム世界の人々は、広島や長崎に原爆を投下され、国土が荒廃しても著しい復興を遂げ、技術や経済で世界をリードするなど、彼らが好感を寄せてきた日本の動静を注意深く見守っている。「公正」の価値観を重んじるイスラムの人々に失望を与えないような活動を、政府がダメならせめて国会議員たちにはしてほしいと願っている。日本は矛盾が多いアメリカの中東外交との相違を際立たせる時ではないか。

イスラムの人々は日本を注視している

表紙の画像はハーヴァード大学で
ジェノサイドをやめよ
https://www.thenation.com/article/world/israel-spying-american-student-activists/


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