NPT(核不拡散条約)に加盟せず、核の恫喝を行うイスラエルには広島平和記念式典に出席する資格はない
核兵器保有の国際的ルールでもあるNPT(核不拡散条約)にも加盟していないイスラエルは広島の平和記念式典に招待されるべきではないだろう。NPTは核兵器保有国の増加を防ぐものだが、岸田首相は、日本が核兵器禁止条約に批准する代わりに、NPTを強化することで日本が核軍縮をリードしていくと述べている。NPT強化が核軍縮とどう結びつくか不明だが、イスラエルはそのNPTにさえ批准していない。
イスラエルは核兵器を保有しているにもかかわらず、イスラエルの政府関係者たちが核兵器使用を口にするなど、実質的に核による恫喝を行っている。ガザに対して非人道的な攻撃を行うと同時に、イスラエルは広島の核廃絶への想いを蹂躙するような国だ。
イスラエルの核兵器は近隣のアラブ諸国が1973年の第4次中東戦争以降、イスラエルに対して通常戦争を行わなくなった要因の一つとしてある。イスラエルは1966年に実戦に配備できる核兵器を保有するようになったと見られ、イスラエルは国の安全を核兵器に依存するような国だが、広島市の松井一実市長はそれも知らないに違いない。松井市長の姿勢は、対米外交重視の岸田首相の意向を受け、米国の同盟国イスラエルに特別の配慮を見せている。岸田首相は、広島や長崎への原爆投下の主体が米国であったという記憶を風化させたいようだが、とても広島市選出の議員の考えることとは思えない。
昨年11月5日、イスラエル・ネタニヤフ政権のアミハイ・エリヤフ・エルサレム問題・遺産相はガザに核兵器を落とすのも選択肢の一つだと述べた。彼はガザの人々を「ナチス」と形容し、ナチスに人道支援を行う必要などない、ガザにはハマスに関わっていない人物などいないと語った。240人の人質がガザ内部にいても核兵器を使用するのか尋ねられると、戦争には代償が伴うと発言した。
イスラエルでは、モシェ・ヤアロン元国防相が2015年5月5日、イスラエルがイランに対して核攻撃を行う可能性について言及したこともあった。これは東京新聞などで報じられたが、多くの日本人には知られていないだろう。彼は、イランとの長期の戦争を避けるために、米国トルーマン政権が広島・長崎に原爆投下を行ったようにイスラエルもまた「断固たる」措置を講ずるべきだと述べた。イスラエルが核兵器をもっていることは確実だが、イスラエル政府は公式には「もっている」とも「もっていない」とも語っていない。しかし、ヤアロン国防相の発言は、イスラエルが核兵器を保有していることを政府関係者として明らかに認めるものだった。
https://electronicintifada.net/blogs/asa-winstanley/israeli-defense-minister-promises-kill-more-civilians-and-threatens-nuke-iran
ヤアロン国防相は、2013年7月に国連の潘基文・事務総長と面談した時にイスラエルがガザのシュジャーイーヤを攻撃する意思表示を行ったが、イスラエルは2014年夏のガザ攻撃でそのシュジャーイーヤをまさに廃墟にしてヤアロン国防相は「公約」を履行した。
イスラエルのタカ派には、広島・長崎の原爆投下は正当なもので、イランの核問題を平和的に解決することは誤りであるという主張が根強くある。
(たとえば、http://israelmatzav.blogspot.jp/2015/08/hiroshima-was-right-and-moral-iranian.html などを参照)。
イスラエルの政府高官ダニエル・シーマンは、「広島と長崎に投下された原爆は、日本による侵略行為の報い」「平和式典は独善的でうんざりだ」は2013年8月にフェイスブックに書き込んだ。イスラエルはナチスドイツによるホロコーストを強く批判し、イスラエルにはホロコースト博物館やホロコースト記念日もある。「イスラエルのホロコースト式典が独善的」と言ったらイスラエルが激しく反発することは目に見えているが、シーマン氏の発言はとてもホロコースト記念日がある国の政府高官の発言とは思えない。
唯一の被爆国である日本が、核兵器に関する国際的なルールを守らないで、核の恫喝を行うイスラエルを「原爆の日」の平和記念式典に招待するのはまったく適切ではないように思われる。イスラエルのガザでの殺戮があったにもかかわらず、日本政府には2013年に成立したイスラエルとの防衛協力を見直す動きもまるで見られない。秘密裏に核兵器を保有し、核による恫喝を行うイスラエルを広島平和記念式典にわざわざ招待し、また防衛協力を継続することは、原爆の尊い犠牲に対しても配慮に欠くものだ。
岸田首相や松井市長には平和記念式典でイスラエルの核兵器保有を非難したり、NPTに加盟することを促したりする胆力もないことだろう。岸田首相はNPT強化を訴えるのならば、イスラエルにNPTへの参加を求めるのが筋ではないか。