見出し画像

イスラエルのヨルダン川西岸併合はパレスチナ人の激しい抵抗を招き、イスラエルの国力をさらに消耗させる?


 イスラエルはヨルダン川西岸の完全併合に向けて動き始めている。ネタニヤフ政権のベザレル・スモトリッチ財務相は、トランプ次期政権の成立によってイスラエルによる完全な占領を生み出す絶好の機会が生まれると発言するようになった。トランプ次期大統領は、選挙戦の過程で、米国内の親イスラエル勢力に、イスラエルのヨルダン川西岸併合を公約したと伝えられている。イスラエルがヨルダン川西岸を併合すれば、パレスチナ人がこれに激しく反発することは明白で、新たなインティファーダ(蜂起)の契機にもなることだろう。

トランプの「世紀のディール」 https://mainichi.jp/articles/20200130/k00/00m/030/334000c

 極右をはじめイスラエル政府が強気になるのは、ドナルド・トランプが1期目の政権でエルサレムに大使館を移してエルサレムをイスラエルの首都と認め、シリアのゴラン高原にイスラエルの主権を主張したからだ。また、トランプは8月に米国の親イスラエル団体「ストップ反セム主義」の集会で、「イスラエルは地図で見ると、とても小さい。広げる手立てはあるのか?」と発言したが、これがイスラエルの領土拡張にゴーサインを与えたものとイスラエルの右翼は解釈するようになった。

 また、イスラエルが強気になる背景には隣国シリアでアサド政権が崩壊し、イスラエル軍がゴラン高原の緩衝地帯や首都ダマスカス南西20キロまで進撃したことも背景にある。さらに、イスラエルは国際刑事裁判所(ICC)がネタニヤフ首相やガラント前国防相に逮捕状を発行しても、イスラエルの責任を問う具体的措置が国際社会によってとられず、ガザでの戦争を継続できていることから、西岸併合もイスラエルの行動を遮るような介入なしに行うことが可能で、西岸併合を行っても米国が支持してくれるものとネタニヤフ首相や極右勢力などは考えている。バイデン大統領はイスラエルのガザでの戦争に武器や資金を提供し続け、トランプもイスラエルに寛容であることが判明している。

 しかし、イスラエルがヨルダン川西岸を併合しても、国際法における西岸の地位が変わるわけではない。併合を行えば、ヨルダン川西岸では極右勢力によるパレスチナ人への暴力的襲撃が増加し、パレスチナ人は強固に抵抗することになる。イスラエル軍はインティファーダを力で封じることを考えるだろうが、ガザでのハマスなどの激しい抵抗を見れば、それが円滑に成功する見込みは極めて少ない。パレスチナ人のインティファーダは止むことがなく、イスラエルはその抑圧のために国力をすり減らしていくことになるだろう。イスラエルのヨルダン川西岸併合は中東イスラム地域全体を混乱に陥れ、中東各地で紛争が繰り返し発生していくことにもなりかねない。

ヨルダン川西岸の分離壁で https://communist.red/intifada-until-victory-for-a-socialist-federation-of-the-middle-east/

 イスラエルはアイルランドが人種差別主義者の国家であるという理由で、在アイルランドのイスラエル大使館を閉鎖した。歴史的にイングランドの植民地に置かれたアイルランドは、イスラエルの植民地主義によって虐げられるパレスチナ人に対する強い同情があり、ことあるごとにイスラエルの人権侵害や戦争犯罪を非難してきた。

アイルランドは歴史の正しい側にいる https://x.com/Ogra_SF

 アイルランドは、南アフリカがイスラエルに対して国際司法裁判所(ICJ)に起こしたジェノサイドに関する訴訟を支持し、また今年5月、ノルウェー、スペインとともに、パレスチナ国家を承認した。イスラエルのサール外相(1966年生まれ)は「アイルランドが越えてはならない一線をすべて越えた」と発言した。アイルランドは国際法における「ジェノサイド」のより現実的で、具体的な定義を求めている。現在の国際法では「ジェノサイド」と断定するには抽象的で、民間人の保護について高いハードルがあるとアイルランドは考えている。そうしたアイルランドが求めるジェノサイドの定義がイスラエルにとっては不都合ということだろう。

パレスチナに自由と正義をーアイルランド・ダブリンで https://www.dw.com/en/is-israels-diplomatic-isolation-in-europe-growing/a-71088105

 アイルランドを非難するイスラエルのサール外相は、若い頃、極右のテヒヤ党のメンバーで(現在は「新しい希望」党)、1982年のイスラエルのシナイ半島からの撤退に抗議し、反アラブ的な見解を抱き続けた。また、アフリカ系移民がイスラエルに入国することに猛烈に反対したこともあって、人種主義者と見られている。トランプ1期目政権の「世紀のディール」もパレスチナ国家創設につながると反対し、ヨルダン川から地中海まではユダヤ人国家のイスラエルしかないと考えている。さらに戦後のガザは縮小したものでなければならないと訴えている。

サール外相「ネタニヤフのほうがガンツやラピドよりもはるかにまし」 https://www.jpost.com/israel-news/article-833430

 このような人物がアイルランドを人種主義者の国家として非難しているが、アイルランドのヒギンズ大統領はネタニヤフ首相を批判することを反ユダヤ主義と断定することは、アイルランド人に対するひどい名誉棄損であり、中傷であると訴えた。ヒギンズ大統領はまたイスラエルがシリア、レバノン、パレスチナという3つの国の主権を侵害していることを指摘した。

パレスチナ人のインティファーダ
https://www.gettyimages.co.jp/search/2/image?phrase=israel+palestinian+rock+throwers


いいなと思ったら応援しよう!